ファッション

機能に裏打ちされた頑丈で武骨なハンティングジャケットはアメカジの自由さを象徴している。

〈NEEDLES〉デザイナー・清水慶三/Perspectives on “AMEKAJI”

2026年6月7日

Made in U.S.A. catalog 2026


photo: Yoshio Kato
text: POPEYE
2026年6月 950号初出

出合った年代、入り口になったアイテムによりそれぞれの“アメカジ観”があるに違いない。愛着のある“アメリカもの”を見せてもらい、話を聞き、アメカジをとことん考えてみよう。

「それまではアメリカの学生のスタイル、アイビーが格好いいなと思っていたのですが、1975年に『Made in U.S.A. catalog』が出て、もうぜんぜん違うなと。俄然、アメリカ製について興味が湧いて、情報を得る術があまりないなかで、自分なりにいろいろと探してみました」

 次に訪ねたのは清水慶三さん。レッドウッド、ネペンテス、エンジニアド ガーメンツ、ニードルズなど、その経歴はアメカジの重要キーワードで彩られている。当時、清水さんは17歳。アメリカ製を網羅した一冊に大いに掻き立てられたという。

「表紙に描かれた〈リーバイス〉501がとにかく欲しかった。(出身地で自宅のある)山梨県甲府市から、よく新宿の伊勢丹に行っていたのですが、運よく入荷日に当たって。“シュリンク・トゥ・フィット”ということで、かなり大きめを選んだのに、洗ったらギリギリはけるサイズまで縮んで。何度かサイズ違いで買い直すことになって、そこも含めてアメリカっぽさをすごく感じましたね」

 同時期、アメリカ好きの店主が営む甲府のショップ経由で、〈L.‌L.ビーン〉のタッターソールのシャツをメールオーダーするなど、アメカジ的なプロダクトへの愛着を高めていく。

「靴が好きで、ブーツがドーンと出ている『Made in U.S.A. catalog-2』は目指すショップのイメージソースにもなりました。1980年、アメリカ製シューズをメインに輸入している『ユニオンスクエア』に就職。数年後、渋谷のファイヤー通りにあった『レッドウッド』を切り盛りすることになったとき、日本ではまだ珍しかった〈ラッセルモカシン〉や〈チペワ〉などのワークブーツを中心に、奥のスペースは靴だけを置きました」

〈ナイキ〉のエア ジョーダン1をファッション文脈で最初にフックアップしたのも、当時の『レッドウッド』だと耳にしたことがある。

「『スラッシャーマガジン』で見たスケーターがハワイアンシャツにBDUパンツを合わせて、足元はジョーダン1の赤×黒と青×黒のネガティブ履き。その姿が格好よくて。その頃置き始めた〈チャンピオン〉のリバースウィーブにも合うなとも思いました」

“新しいアメリカ”と出合い、発信する。そのために、常に未知のルートを探していたという。

「ダラスでやっているシューティングやハンティングに特化した『ショットショー』が好きで回っていました。他のバイヤーが行くところは徐々に避けるようになりましたね。やっぱり、人と違うことがやりたかった。あえて定番ものをやらないことが、他店との差別化になるかなと。これは『ネペンテス』を立ち上げてからですが、(鈴木)大器とバーモントのサープラスショップに行ったんですよ。〈ジョンソン ウーレン ミルズ〉の織りネームの付いたバッファロープレイドジャケットを手に取ったら、〈L.‌L.ビーン〉のタグもあって。『これはなんだ?』って、目の前の電話ボックスに駆け込んだと。イエローページで電話番号を調べて、すぐに連絡をして。現地のシッパーに依頼すると他社に漏れるので、大器に直接行ってもらいました。〈アローモカシン〉を見つけたときは、2人の間では“イングリッシュクロームモカシン”と呼んで、存在がバレないようにしていました。イタリアの〈ルイジ ボレッリ〉に別注した真っ赤なウールシャツなどと一緒に、〈ラルフ ローレン〉や〈ニューバランス〉を置きたいと思ってアウトレットを開拓したら、皆がアウトレットをやり始めたりして。ならばと、一気にやめたんです。その頃、〈ラルフ ローレン〉のパンツを製造していた〈ラフヒューン〉というブランドしかり、アメリカ製がどんどん減ってきて。じゃあ、自分たちがアメリカで作れないかということで、大器が工場を探してきて、〈エンジニアド ガーメンツ〉を“Made in NY”でスタートしたんです」

 そして、今でも工場や職人を大切にしながら、アメリカ製を続けている。幾多の難題に向き合いながらの道行きとはわかっていながらも、やはり浪漫を感じてしまう。だからこそ、清水さんにとってのアメカジを聞いてみたい。

「頑丈で武骨なイメージでしょうか。アイテムとしてはハンティングジャケットですね。ダック生地はとにかくタフで、“本物”は袖がすごく短い。ハンティングするときに邪魔にならないように。ファッションとしては長いほうがいいのかもしれないですが、そこは機能に基づいているところで、アメリカ的だと思います。スタイルとしては、とにかく自由。ヒッピーライクなネルシャツにジーンズに、今だったら〈ビルケンシュトック〉のサンダルやランニングシューズとか。それが答えではなく、時代とともに変わっていくのも、アメカジらしさなのでしょう」

清水さんが所有するハンティングジャケット。まさに質実剛健の象徴。こちらの一着はタグが欠損。ポケットの形や細部の差異に心奪われる。

〈ボブ アレン〉のジャケット。

〈ヒンソン〉のジャケット。

〈カンバーランド〉のジャケット。

〈ボブ アレン〉のハンティングジャケット。

〈L.L.ビーン〉のハンティングジャケット。“52”のビッグサイズだが、洗い込まれて絶妙なサイズ感に。

プロフィール

清水慶三

〈NEEDLES〉デザイナー

しみず・けいぞう|1958年生まれ。’88年に「ネペンテス」創業。’95年に〈ニードルズ〉をスタート。グローバルな展開で、世界中に世代を超えたファンを増やし続けている。

Instagram
https://www.instagram.com/needles_tokyo_official/