ファッション

庭という楽園。

〈YAECA〉のオイルドカバーオール

photo: Mitsugu Uehara
styling: Shogo Iwayu
grooming: HORI
edit: Ayumi Taguchi (kontakt)

2024年11月30日

コットンリネンのオイルドカバーオール¥58,300(ヤエカ カンバス デザイン/ヤエカ☎03・6426・7107)コットンシェーカーセーター¥22,000(ビンガムトンニッティングカンパニー/ハイ!スタンダード☎️03・3464・2109) 80’s〈L.L Bean〉のデニム¥8,910(サンタモニカ原宿店☎️03・5474・1870) 手拭い¥1,100(梨園染戸田屋商店☎️03・3661・9566)手袋¥451(ショーワ/ハンズ渋谷店☎️03・5489・5111)折りたたみの長靴¥14,520(ウェットランド/エイアンドエフ☎️03・3209・7575)

 腰を屈めて、地面をじっと眺めて、土をさわる。

 まるで虫を追いかけた幼少期の遠い記憶のようだが、これは庭仕事をする人の視点。都市で生きる私たちにとっては、土に触れること自体がセラピーであり、同じ地球に生きる小さな生物の存在を考えるきっかけになる。

 映像作家のデレク・ジャーマンが「楽園は庭にあらわれる」と言い、自宅の小さな庭の手入れに励んでいる先輩が「庭は小宇宙だ」と言ったように、自分が育てた庭を持つことにはロマンもある。初心者なりに庭仕事の世界に足を踏み入れてみると、新たな物の考え方や気づきに出合った。

しゃがんで作業するのなら、洋服はタフなものがいい。〈ヤエカ〉のオイルドジャケットは、コットンリネンのガシッとしたキャンバス生地に、人や環境に害のない樹脂とオイルを混ぜた液体でコーティングを施したもの。オイルドジャケット特有のベタつきはなく、さらっとした肌触りなので湿気の多い日本の気候に適している。汚れを気にせずに身につけて、すれやアタリの風合いが生まれる過程も楽しみながら、自分だけのジャケットに育てたい。庭を育てるのと同じように、てきとうに、長く付き合っていくことが大切。コットンリネンのオイルドカバーオール¥58,300(ヤエカ カンバス デザイン/ヤエカ☎03・6426・7107)

襟元、袖裏、ポケット裏のコーデュロイは、汚れ防止のためであるが、なんと職人が畝をひとつひとつ丁寧にカットしている。ふわっとした風合いは職人の手仕事が成す技そのもの。コットンリネンのオイルドカバーオール¥58,300(ヤエカ カンバス デザイン/ヤエカ☎03・6426・7107)

 自分で植えた苗が思わぬ速度で成長し、庭と家の境界線のギリギリまで攻め込んできたり、風や鳥がどこからか種子を運んできて、知らぬ間に新たな芽が生えて大きくなっていく。雑草がぼうぼうに生えていても、それだけ自分の庭は土がいいんだなと興奮するし、大切に育てていた草花を同居人が雑草と間違えて抜いてしまって落胆することだってある。

 ジル・クレマンが『動いている庭』で綴ったように、完成予想図という概念は庭に一切通用しない。庭自体が勝手に成長していく様子を見守り、自分が少し手を添えるくらいがちょうどいいのだ。自然の持つ力を目の当たりにし、日々の庭の変化を楽しむ新しい日課が生まれた。

 冬は植物も冬眠するから辛抱しなければいけない。適当な苗や種を園芸店で買ってきて、自宅の裏庭やベランダのプランターに植えて水をやり、ただひたすら待つ。土の下に眠る小さな命は、雪が溶けて春になったら顔を出してくれるから。この季節は自分も冬眠モードに切り替えて、部屋のストーブをつけて、本でも読みながら気長に過ごせばいい。

コットンシェーカーセーター¥22,000(ビンガムトンニッティングカンパニー/ハイ!スタンダード☎️03・3464・2109) 80’s〈L.L Bean〉のデニム¥8,910(サンタモニカ原宿店☎️03・5474・1870) 手袋¥451(ショーワ/ハンズ渋谷店☎️03・5489・5111)折りたたみの長靴¥14,520(ウェットランド/エイアンドエフ☎️03・3209・7575)