カルチャー

日本にふたつとないサーファーディスコ専科のバー『ロジャー』。

東京五十音散策 学芸大学③

2024年7月15日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Fuya Uto
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は蒲田に続き学芸大学へ。

 世は空前のディスコブーム、というのはもう半世紀くらい前の話だけど、休日に『サタデー・ナイト・フィーバー』を観なおしてからというもの、本気であの頃のカルチャーに興味が湧き勉強中。場所や時代ごとにいろいろな流行があって、中でも’70年代後半から’80年代前半にかけて流行した「サーファーディスコ」はかなり大きなムーブメントだったみたいだ。

 そんな気になる世界を教えてくれたのが学芸大学駅から徒歩5分の場所にあるディスコティックバー『ロジャー』。ここは、一般的なブラックミュージックが聴けるソウルバーと違い、ダンスクラシックスを中心にウエストコーストやAOR、ニューウェイブサウンドなど、いわゆるディスコのイメージに直結しなさそうな音楽も積極的にオンエアしている。

 「サーファーディスコは日本独自の文化なんだけどね。東京だと特に六本木がメッカだった。サタデー・ナイト・フィーバーと同じ頃に、サーフィンブームもあったから、サーファーウケする音楽がかかる踊り場ってのが結構流行ったんだよ」とマスター。話しを聞くと、ディスコティックなのにドゥ―ビー・ブラザーズがかかっていたことが腑に落ちた。

 学大生まれ学大育ち。生粋の先輩シティボーイであるマスターは、高校1年生のときに六本木の『キッスレディオ』という箱で大学生サーファーたちに揉まれてディスコデビュー。以降、この世界に心を奪われ、TV番組の音響の仕事を20年間続けながらもサーファーディスコを探求。遂に好きが高じて15年前にこの店をオープンした。店内には長年温めていたレコードを2000枚所蔵。アルバム盤は当然、アーティストがDJのためのプロモーション用に作っていた12インチ盤などに加え、当時の東京各地のディスコで生録音されたMIX音源なども蒐集しBGMに用いている。

 ブラックカルチャーに、ファラフォーセット・メジャースのポスターや、パンナムのエアラインバッグといったサーフィンブーム期のグッズがクロスオーバーしているのも面白く、カウンターに飾られているかつて人気だったディスコのメンバーズカードやマッチも一見の価値あり。

 “当時の東京のディスコはこんな感じだったのか”と、リアルな熱気に満ちた世界がここには広がっていた。「若い人が来てくれると嬉しいし、繋いでいくのが僕らの役目」とマスターが言ってくれたが、かつての東京を知る大人にカルチャーを教えてもらうのが逆に僕らの役目。ディスコに少しでも興味があるなら、ソウルバーはもとより、ぜひこのディスコティックバーへ。

一息ついたら視線を上に! ドリンクチケットやマッチの当時モノに憧れを感じるのは男の性なのかも。

しっかりとセレクトされた貴重な盤がズラリ。トゥデイトゥモローフォーエバーに、ウッズエンパイア……メモメモ。

ブラックライトで発光するのはトニックウォーターに入っている成分のおかげらしい。ジントニック¥900。

入り口そばに飾られている、ザ・ジャクソンズが’80年代に発表したスタジオアルバム「TRIUMPH」。ちなみに奇跡的にマイケルの顔だけ照らされているのは、ミラーボールの仕業。

マスターの足元は、’70〜’80年代のサーファーがこぞって履いていたアディダスのタバコ。抜かりなし。

インフォメーション

日本にふたつとないサーファーディスコ専科のバー『ロジャー』。

BAR ROGER

2010年にオープンした知る人ぞ知るディスコティックバー。第二次ディスコブーム&サーフィンブームの音楽に絞り選曲している。実はLATE’70s~EARLY’80sのニューヨークディスコ文化に詳しかったりするから、ブラックミュージック好きも大歓迎。挿入歌のAORが良かったという、ソフト化されていない映画『なんとなく、クリスタル』の存在も初めて知れたし、近くに行った際はまた訪れたいな。

○東京都目黒区鷹番2丁目20−1 ☎︎03•6303•1785 20:30〜MID 日・月休

Official Website
http://www.discoroger.com/