ライフスタイル

街の人々が集い、食べ、語らう。駅前の憩いの場『coffee & foods harmony』。

東京五十音散策 奥沢②

2024年3月10日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Ryoma Uchida
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「お」は奥沢へ。

「あの目の前の噴水は、役所の人たちと手前の水上にガラスの板を敷こうかって話してるのよ。子どもが落ちて怪我をしなくなるし、上を歩いて楽しめるでしょ」

 へぇ、と奥沢歴50年以上のマダムの話を聞きながら、コーヒーを注文する。奥沢駅南口から徒歩0分の噴水広場に面したオープンカフェ『ハーモニー』の何気ない日常だ。名物の「奥沢カレー」を店前に並べられたベンチで食べていると、「取材?」と、奥沢のヌシたちに四方八方から話しかけられ、聖徳太子さながら会話をさばくことに。

 2年前、奥沢駅が大規模な改修工事を終えたのとは裏腹に、店主の関塚さんが友人を介してたまたま始めたというここ『ハーモニー』は地元民に愛され続けて19年。店舗が入る複合商業施設『サンケイプラザ』は築50年以上(前述のマダム換算)になる。常連たちをはじめ、会社帰りのサラリーマンや、近所の子どもたちがやってきては、テイクアウトしてどこかへ行ったり、ベンチで飲食と談話を嗜んだり。同施設内にあった『奥沢図書館』が休館するまでは、その職員らもお昼時によく通っていたそうだ。そんな奥沢の長い街の変化を聞けるのもここならではかもしれない。

「一人でやっているから自分のペースで営業しているんですけど、雨の日以外はほぼ毎日お店を開けるようにしています。こんな風に毎日いろんな人が来るでしょ。今はこうして誰でも集まれる場所は少ないし、そんな雰囲気のところで高い値段の料理は不釣り合い。簡易な食べ物や飲み物が中心で、できる限り安く提供するようにしています」。

 コーヒー、紅茶、ジュースにスープ。食べ物はカレーライスに、おにぎり、サンドイッチ……。それらは今やコンビニエンスストアで簡単に手に入るものかもしれない。けれど誰もが気軽に立ち寄って、のんびり過ごしたり、会話を楽しんだりできる空間は簡単には手に入らない。高感度なカフェとも、老舗の喫茶店とも似つかぬ、パブリックカフェゆえの街と街の人々との”ハーモニー”が一杯190円のコーヒーに凝縮されているのだ。

ピリ辛で美味しい、お店の定番・奥沢カレー ¥500。アイスコーヒー¥220(ホットは¥190)

おにぎり¥160、コーンポタージュ¥170。

常連さんたちのテーブル。サンドイッチと、常連さんの「なにかだしてほしい」とのお願いに応えて特別に提供した餃子(非売だけれど、超常連になれば出してもらえるかも?)。

インフォメーション

街の人々が集い、食べ、語らう。駅前の憩いの場『coffee & foods harmony』。

coffee & foods「harmony」

奥沢駅改札口を出てすぐの、小さな噴水を有した「ふんすい広場」。「せたがや百景」にも選ばれた同広場に面するのが『coffee & foods「harmony」』。屋台風のつくりで、店前のベンチで飲食できる。夏はところてん、冬は甘酒を期間限定で提供。お店では関塚さんの好きなクラシックが流れている。

◯東京都世田谷区奥沢3-47-8 8:30〜20:00 不定休 03-3748-3682