カルチャー
印刷技術は永遠に。隠れた名“博物館”『印刷博物館』。
東京五十音散策 飯田橋②
2023年12月4日
photo: Hiroshi Nakamura
text: Ryoma Uchida
edit: Toromatsu
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく企画「東京五十音散策」。2文字目「い」は池尻大橋に続き飯田橋。
![印刷博物館](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_034.jpg)
凸凹凸凹凸凹凸凹凸凹……。幼心に衝撃を受けたこの漢字。絵文字みたいでかわいいし、せっかくの機会なのでたくさん並べてみた。しかしこの凸凹が、人類の歴史に変化を及ぼした存在なのだから、なめちゃいけない。
飯田橋を歩いていると目にする「出版」や「印刷」の文字。近隣には日本随一の古本街・神保町が、隣駅の市ヶ谷駅付近には本誌『POPEYE』を印刷している『大日本印刷』も居を構える。数々の出版社や書房、製版の会社が集うこのエリアにおいて、印刷業は主要な産業のひとつ。
駅を出て目白通りを北へ歩き、神田川を渡った先にあるのが、今年10月に社名を変更したばかりの『TOPPAN』(旧・凸版印刷)本社ビル。そのミュージアム棟の地下にある『印刷博物館』は、国内外の印刷物や活字、機械など約7万点もの資料を収蔵する、印刷にまつわる専門博物館だ。
入館してすぐ目に入るのが、’’印刷以前’’からはじまる人類のビジュアル・コミュニケーションの歴史を展示で総覧するプロローグ部分。洞窟壁画にはじまり、ハンムラビ法典やロゼッタストーン、ICチップ(!)に至るまで100点ほどの資料が、まるで巨大な絵巻物のように壁一面にずらっと並ぶ。人間の創作への欲求や、文字を残し伝達することへの情熱的なマインドをひと目みただけで感じられる。
![印刷博物館](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_031.jpg)
常設の展示室では、「会社の歴史ではなく、産業の歴史を紹介する」というコンセプトのもと、日本と世界の印刷の歴史を年表を追うようにして紹介。凸版、平版、凹版、孔版を技術にフォーカスしてわかりやすく展示する。グーテンベルクの活版印刷術をはじめ、聖書の普及が宗教改革をもたらした流れといった、世界史必須ワードもビジュアルで理解できる。
![印刷博物館](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_012.jpg)
![印刷博物館 活字](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_022.jpg)
![印刷博物館 印刷機](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_026.jpg)
「印刷」とは「普及」でもある。印刷技術がいかにして多くの人々に知を解放して、人類の歴史に変化を及ぼしてきたか。かつてないほど文字やイメージであふれる現代社会だが、この凸と凹のなかに、そんな世の中を生きるヒントが隠されているかもしれない。
インフォメーション
![印刷博物館](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/12/Printing-Museum_011-320x213.jpg)
印刷博物館
印刷文化の伝承・発展への寄与を目的とし、2000年、凸版印刷が100周年記念事業の一環で設立。その後2020年10月にリニューアル。常設展とは別に、年に3〜4回ほどの企画展も開催している。現在は明治期に活躍した写真師、小川一眞にフォーカスした展示『明治のメディア王 小川一眞と写真製版』(11月18日(土) 〜2024年2月12日(月))を開催中。TOPPAN本社ビルには博物館の他に、1階にはコンサートホール、ギャラリー、ショップ、2階にはカフェ、レストランも。実は一日中満喫できるのである。
◯東京都文京区水道1-3-3 TOPPAN小石川本社ビル 03・5840・2300 月休
Official Website
https://www.printing-museum.org/
関連記事
![「現代邦楽の父」ゆかりの地に建てられた、日本で最初の音楽家記念館『宮城道雄記念館』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/11/Miyagi-Michio_018.jpg)
ライフスタイル
「現代邦楽の父」ゆかりの地に建てられた、日本で最初の音楽家記念館『宮城道雄記念館』。
東京五十音散策 飯田橋①
2023年11月18日
![アメリカ古着やアフリカオブジェ、アノニマスなものを揃える『Tam』へ。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/07/Tam_011.jpg)
ファッション
アメリカ古着やアフリカオブジェ、アノニマスなものを揃える『Tam』へ。
東京五十音散策 池尻大橋③
2023年7月18日
![コーヒーと音楽と頼れる人たちがいる、地下のサードプレイス『QUINTET』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/08/Quintet_018.jpg)
フード
コーヒーと音楽と頼れる人たちがいる、地下のサードプレイス『QUINTET』。
東京五十音散策 梅ヶ丘①
2023年8月19日
![一度はここでドゥミタスコーヒーを。『Cafe Deux Oiseaux』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/10/Cafe-Deux-Oiseaux_041-1.jpg)
カルチャー
一度はここでドゥミタスコーヒーを。『Cafe Deux Oiseaux』。
東京五十音散策 阿佐ヶ谷②
2023年10月18日
![中国インディーズ・ミュージックの寺子屋『mogumogu records』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/09/mogumogu-records_006.jpg)
カルチャー
中国インディーズ・ミュージックの寺子屋『mogumogu records』。
東京五十音散策 阿佐ヶ谷①
2023年9月18日
![“魂”引き継ぎ守り続ける、日本最古のソウル・バー『George’s』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/08/georges_017.jpg)
フード
“魂”引き継ぎ守り続ける、日本最古のソウル・バー『George’s』。
東京五十音散策 麻布十番③
2023年8月4日
![梅ヶ丘の食卓の新定番、AUS仕込みのサワードウを提供する『BAKE STORE』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/09/BAKESTORE_014.jpg)
フード
梅ヶ丘の食卓の新定番、AUS仕込みのサワードウを提供する『BAKE STORE』。
東京五十音散策 梅ヶ丘②
2023年10月4日
![自然と吸い込まれる、珍奇の扉も開く街の花屋『HANACHO』。](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/10/HANACHO_046.jpg)
ライフスタイル
自然と吸い込まれる、珍奇の扉も開く街の花屋『HANACHO』。
東京五十音散策 梅ヶ丘③
2023年11月4日
ピックアップ
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/07/BAOBAO_fin_v2.gif)
PROMOTION
〈BAO BAO ISSEY MIYAKE〉のバッグとピザと僕。最高の“三角”関係。
2024年7月8日
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/07/hh_01_1080x1080-750x750.jpg)
PROMOTION
もしものときの「118」。ドコモと〈ヘリーハンセン〉が広める、安全なマリンライフ。
2024年7月15日
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/07/1x1.jpg)
PROMOTION
〈adidas Originals〉とシティボーイの肖像。#5
Tohma Picaulima(21)_『Cosmos Juice Tomigaya』Staff
2024年7月16日
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/05/01-1-750x1131.jpg)
PROMOTION
夜にかける〈IZIPIZI〉のサングラス……?
IZIPIZI
2024年7月5日
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2024/07/a98b1120712ae2558c294773114e59b3-750x750.jpg)
PROMOTION
〈DAMD〉の車に乗って、僕らしいひとり旅をカスタム。
DAMD
2024年7月8日