フード

コーヒーと音楽と頼れる人たちがいる、地下のサードプレイス『QUINTET』。

東京五十音散策 梅ヶ丘①

2023年8月19日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Eri Machida
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく企画「東京五十音散歩」がスタート。3文字目「う」は梅ヶ丘

コーヒー豆

 隣駅の豪徳寺や世田谷代田に比べるとお店の数は少なく、遊びに行く感覚ではなかなか降りない梅ヶ丘だけど、立ち寄ってみなければわからない。昔ながらの商店や、新しくオープンした古着屋、定食屋も混在。近くにある大学の生徒たちにも優しい、コンパクトだが魅力的な街だった。

 このあたりには喫茶店が多く、どこへ入ろうか迷っていると“珈琲とレコード”という立て看板を発見。地下にあり、ライブハウスのような入り口で少し緊張するが、通り過ぎてしまうのは勿体ない。ここ『QUINTET』は、レコードから流れる音楽とコーヒーが楽しめるお店。カウンター席には地元の常連客がビールを、ラフに置かれたソファ席では学生たちがカレーやチキンオーバーライスなどを注文していた。ジャズ喫茶とは異なり、あくまでも友達の家に来たような雰囲気だから気負わずに過ごせる。

消しゴムハンコ
ナポリタン
焙煎機

 アルバイトのメンバーたちと思いつきで新メニューを試作してみたり、お客さんの要望に合わせた曲を流したり、営業スタイルは自由で寛容。一方でコーヒーには並々ならない思いがあり、店主の浜中聡さんは豆を仕入れるために実際にインドの農園まで足を運び、手回し直火焙煎機を使って店内で自家焙煎し、コーヒーリキュールのブランドまで立ち上げた。もともとは渋谷の人気クラブハウスに勤めていた人らしく、ヒップホップやレゲエなどにも精通。それを聞くと、このお店のスタイルに納得できた。

 人柄が映し出されたカジュアルな空間と隠された情熱のちょうどいいバランスが老若男女に愛され、居心地良くいられる秘訣。階段を登り外へ出ると、思っていたより時間が過ぎていた。

インフォメーション

QUINTET浜中さんとお客さん

QUINTET

2013年にオープンし、今年で10周年を迎える。いつでも開いている場所を目指し、それが実現できるこの地を選んだ。コーヒーやお酒はもちろん、ライブやアーティストの展示、サッカー観戦などさまざまな楽しみ方ができる。お店に入ってすぐのソファ席に飾られているのは永井博さんの作品で、レゲエバンドのどんずりばー(DUNNS RIVER)の『Love Reggae Music』のPV内で使われていたもの。

◯東京都世田谷区梅丘1-15-9 地下1階 ☎︎03・6804・4167 11:00〜23:00 不定休

Instagram
https://www.instagram.com/quintet.2013/