カルチャー

古くは2世紀のものまで。キリスト美術の『gallery uchiumi』。

東京五十音散策 麻布十番①

2023年5月21日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Ryoma Uchida
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく企画「東京五十音散策」がスタート。1文字目「あ」は麻布十番。

 下町の香りと国際色豊かな商店、セレブリティ思考なエリアが共存し合っている特異な街、麻布十番。場所に囚われないコスモポリタンな雰囲気が漂うこの街で、場所どころか時代にも囚われていないところを見つけた。

 麻布十番駅から東側、東麻布・麻布台方面に、緩やかな坂を登るように歩くとコンクリート作りの建物の半地下に隠れるように佇むギャラリーがある。ここ『gallery uchiumi』ではキリスト教美術を中心に和洋問わず幅広く古美術・骨董品が扱われていて、店主の内海徹さんがフランスやオランダなど欧州で買い付けてきたものが揃う。

 キリスト教美術とは、キリスト教のモチーフやイメージに関わる美術・工芸・装飾作品全般のことを指す。教会や神殿で長く設置されていた像や棚、16世紀の木彫りの天使レリーフや、ニュルンベルク年代記の活版本なども美しい。他にも、古代ローマ時代の地中海地域(現在のシリアにあたる)で作られたローマングラス瓶なども普段見られるものではないから、どれも見ているだけでワクワクさせられる。「時代の雰囲気を反映したものを、値段の高いものよりなるべく安いものでセレクトしています。もちろん、本物で」と内海さんが語るように、まるでアメリカンやハワイアンアンティークを手にするような気分で買える価格帯のものも意外と多くあるから面白い。

中には数千円のものもある。
象嵌(ぞうがん)タイル。¥13,000、鳥モチーフのデルフトタイル。¥28,000
楽譜
16世紀のネウマ譜(羊皮紙に手書きの写本で書かれた楽譜)。¥40,000
17世紀の銀化した薬瓶(オランダ)。¥45,000
発掘品の薬瓶だそう。銀化しているのは土中に200年以上も眠っていた証拠だ。

 明治時代の蕎麦猪口(そばちょこ)でコーヒーを飲むご友人の姿を見たことが、骨董に本格的に目覚めたきっかけだったという内海さん。美術品というと、ついつい、どれだけ有名で価値があるのかを気にしがちだけれど、こうした遥か昔の名もなき作者たちの美しい作品は、自分なりの尺度で手にいれるインテリアのようで、すんなりと受け入れられる。

インフォメーション

gallery uchiumi

「地方から来られる方でもアクセスしやすいように」という理由で麻布に出店してから今年で18年。キリスト教美術を中心に、欧州アンティーク、日本·東洋の古い陶磁器、民具が揃う。古くは2世紀(!)のものまで扱っているからか、19世紀の作品を「最近の」と紹介してくれた内海さん。お店にはサラリーマンや20代の若い人も訪れるそうで、「古いモノを手に取って所有する楽しさをぜひ味わってほしい」と語って下さったのも印象的だった。

◯東京都港区東麻布2-6-8カドルA101 ☎︎03・3505・0344 12:00〜17:00 月・火休

Official Website
http://www.gallery-uchiumi.com