CULTURE

東京のことをよーく知るための自由研究 / VIDEOTAPEMUSIC – 音風景編 –

2021.04.09(Fri)

photo: Kazufumi Shimoyashiki
illustration: João Fazenda
text: Ku Ishikawa
2021年5月889号初出
cooperation: POPEYE Web Team

君が好きな東京の風景には、どんなBGMが流れてる?

「フィールドレコーディングをすると、数値や波形を通して、周囲の環境に客観的になれる」とは、ミュージシャンでありながら、MVの撮影や編集を手掛けるVIDEOTAPEMUSICさん。半ば仕事、半ば遊びの感覚で、普段からいろんな風景と音の採集をし続ける彼と一緒に各所を回ってみると、東京の風景がいつもと違って見えてきた。

 1日かけて巡ったのは、VIDEOさんが東京らしいと感じる音に溢れた場所。複数の発車音と館内アナウンスに、人々のざわめきが混じり合う品川駅や、東京の夜景を一望しながら飛行機の轟音と静かな波の音のコントラストを楽しめる夜の城南島海浜公園。録音したものを聴いて、どのスポットにも共通していたのは音の多さだ。「東京は1か所で録音していてもいろんな音が入るんです。昼夜問わず、工事をしていたり、車や電車が通っていたりと低音が常に流れているのが当たり前で、そこに人の話し声や自然音が入ってくる、〝雑多さ〟が東京らしさだと思います」。たしかに、その場にいたときはすごく静かに感じていた多摩川でさえ、音声を聴いてみると川の流れる音や鳥のさえずりの向こう側で、車の音がずっと鳴っていた。

 そんなふうに「見ているだけでは気づかなかった、その風景を構成する要素を知るのが面白い」とVIDEOさん。聴けば聴くほど、自分がその風景のどこに惹かれているのか発見がある。用意するものはレコーダーだけ。たまにはイヤホンを外して、お気に入りの場所を巡ってみない? 自分だけの〝東京らしい音〟を見つけにさ。

今回の録音に使用したのは古いiPhone(アプリはボイスメモ)で、外付けマイクは〈ZOOM〉の「iQ7」。10年選手の〈エディロール〉のレコーダーもたまに使うそう。

1. J R品川駅構内
地方ツアーからの帰り道、構内のざわめきが東京の証。

数多の路線の発車音を通奏低音に、キャリーバッグを引く音、コツコツと響く革靴の音など忙しない人の往来がアクセント。地方ツアーからの帰りに、それらを広い構内ならではの反響音で聴くと「東京に帰ってきたと感じます」

2. 夜の城南島海浜公園
東京らしい夜景を見ながら、静寂と爆音を行ったり来たり。

東京湾に面し、東京タワー、スカイツリー、レインボーブリッジや高層ビル群を一望。そんな景色を遠くに見ていると、10分ほどの間隔で飛行機が頭上を通過するのだけど、「相対的に波の静寂が強調されるのがいいんです」

3. 近所の焼肉屋
肉を焼きながら、テレビの音と周りの話し声でチル。

肉を焼き、小さなテレビ音声と常連さんの話し声を聴きながら、アジアの食文化に思いを馳せるのがVIDEOさんの日常。「高級店ではなく昔ながらの街の焼き肉店だからこそ生まれるローカルな混ざり合いに東京らしさを感じる」

 4. 夕暮れ時の多摩川
のんびりと過ごす川辺には、エモーショナルがたくさんある。

近くのスタジオでレコーディングをした後に散歩するという夕暮れ時の多摩川には、学校帰りの高校生や、犬の散歩をする人の生活音が流れる。「鉄橋を渡る小田急線と17時のチャイムも相まって、じんわりと哀愁を感じます」

5. 新大久保駅前の交差点
若いエネルギーとK-POPで、“イマ”が身体に染み込む。

海外の飲食店で、名もなき歌謡曲をShazamするのが趣味だったVIDEOさんにとって、渡航できない今は新大久保が多国籍感を味わえる大事なスポット。「若い人と勢いのあるK-POPが合わさり、東京のパワーを感じます」


一緒に研究した人

VIDEOTAPEMUSIC

びでおてーぷみゅーじっく|ミュージシャン。1983年、東京生まれ。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、V
J、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。リサイクルショップ巡りが好き。
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