ファッション
Less is Rich 少ないことは豊かなこと。
PUBLIC BENCH & LITTLE WALK編
photo: Ryohei Obama
styling: Shogo Iwayu
grooming: HORI
text & edit: Ayumi Taguchi (kontakt)
2025年7月13日
贅沢とは何か。それは価格や見た目の華やかさではなく、自分なりの価値を知っていることではないだろうか。この企画「Less is Rich」では、日々の習慣や選択の中にある”個人的な贅沢”をファッション的な視点で考えてみる。
今回は、公共の場所を自分なりに有効活用する贅沢について。
LOCAL BENCH
パブリックとプライベート。公共と個人空間。家の外と家の中。
相反する関係だけど、個人空間というのはこの世界の広さに比べるとほんのわずかなもの。自分の家はそんなに広くないし、それなら外に出て、落ち着ける空間を見つけたっていい。
例えば、公共のベンチ。海外を旅すると、公園やベンチなど、誰もがお金を払わずにぼーっとできる場所がたくさんあることに気づく。実は東京の街にも、そんなスポットは意外と存在していて、東京と神奈川を流れる多摩川近辺の公園には、川を見下すことができるベストスポットにぽつんとベンチがあったりする。積読していた本と飲み物を持って、お気に入りのベンチに腰掛ける。ただ座って、休んで、景色を見る。
仕事場と家の往復ばかりの都市生活はつい呼吸を忘れてしまいがちだから、誰にでも開けた公共の空間で、”自分の場所”を見つけてひと息つくことは、立派な贅沢だと思う。
そんなベンチに向かうときは、とことんリラックスできて、でも外に出ても恥ずかしくない洋服を選びたい。〈インディビジュアライズド シャツ〉のジャケットは、シャツメーカーらしく風になびくほど軽やかで、自然の空気を心地よく感じられる。Tシャツの上に羽織れば、カジュアルすぎずに外に行くときにちょうどいい。
スイッチを切って外を歩くとき、ばったり知り合いに会うことだってあるから、自分をオフにできるけど、きちんと見える服があるといい。それは自分を整えるために身につける洋服のようで、自分の好きな時間のために、その服を選ぶという行為自体もまた、ささやかな贅沢なのだと思う。
「LOUNGER JACKET」という名前が付けられたジャケットは、まさにラウンジでリラックスして着られることをイメージして作られている。60年代以前のシャツに多くみられた猫目ボタンがクラシックな雰囲気。マドラスチェックのラウンジャージャケット¥59,400(インディビジュアライズド シャツ/ユーソニアン グッズ ストア☎03・5410・1776)ユーズドの〈パタゴニア〉スタンドアップショーツ¥10,280/ナーディー ドッグス@nerdy__dogs
いつものTシャツを新鮮に見せてくれるのが、アイリッシュリネンのベスト。こちらは残念ながら完売してしまったけれど、原宿『キャシディ』で出会ったイギリスのファクトリーブランド〈Au Vrai Chic Britain(オーブライシック)〉のもの。手に持ったマドラスチェックのラウンジャージャケット¥59,400(インディビジュアライズド シャツ/ユーソニアン グッズ ストア☎03・5410・1776)ユーズドの〈パタゴニア〉スタンドアップショーツ¥10,280/ナーディー ドッグス@nerdy__dogs ベスト、Tシャツは私物
1965年創業のフランスのシューズブランド〈メフィスト〉は、コンフォートシューズのパイオニア。グルカサンダル型の「SAM」は、使うほどに足馴染みがよくなる独自のシュリンクレザーを採用。中敷きには「ソフトエアー技術」を搭載し、高い通気性とクッション性を実現。コンフォートシューズならではの程よくボリューミーなラストが一般的なグルカサンダルとはまた違った良さを出している。グルカサンダル「SAM」¥44,000(メフィスト/バックドア☎03・6804・7037)
LITTLE WALK
重ね着したコットンヘンプのバスクシャツ各¥24,200(バトナー☎03・6434・7007)コットンヘンプの5ポケットパンツ¥49,500(キャプテン サンシャイン☎︎03・6712・6830)その他は私物
川を見下ろすのもいいけど、思い切って川沿いを散歩するのも別の良さがある。日本の川は、数百万年、数千万年前から形を変えて存在する。昔の日本人も、生き物も、植物も、この風景の側で生活をしていたと思うと、変わりゆく街中を散歩する時とは違って、時間や生活の蓄積を感じることができる。
暑い日の川沿いの散歩なら、丈夫でタフな洋服を。汗をかくだろうし、伸び切った雑草に足を踏み入れて、時には川の水に素足を浸したくなることだってあるかもしれない。そんなときにいいのが、ヘンプ素材。ヘンプはリネンと似ているが、繊維が太くて硬く、丈夫でありながらサラリとした清涼感があるので、自然の中で過ごす時間にぴったり。ちなみにヘンプという素材は日本では古くから神事や祭りごとなど、特別な場面で使われてきた高級素材でもある。
ヘンプの繊維には無数の小さな穴が空いていて、湿気の多い時には吸湿し、乾燥している時には程よく湿度を保ってくれる。さらに、水分を含むとより強度が増すという特徴があり、その強さはエジプトのミイラの包帯にも使われ、何千年も形を保っているほど。
リネンほどの柔らかさはないけれど、使い込むほどに風合いが増し、経年変化も楽しめる。そして、速乾性や肌離れの良さだけではなく、紫外線カットまでも備えているから夏には最適。天然素材とは思えないほど、多くの機能が充実している。
〈バトナー〉のバスクシャツはヘンプ素材をコットンと混紡し、ハイゲージで編みたてた。ドライタッチのヘンプに、シャリ感のある強撚コットンを組み合わせた新素材は、通気性に優れているので春夏に。ボートネック仕様なので、2枚重ねたレイヤードスタイルにも。インナーが汗を吸ってくれるので、機能面でも理にかなっている。重ね着したコットンヘンプのバスクシャツ各¥24,200(バトナー☎03・6434・7007)
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