ファッション

外見よりも頭の中。拾ったほうがカッコいいことさえある。

文・加賀美 健/僕の好きなアメカジ

2026年5月27日

Made in U.S.A. catalog 2026


photo: Reiko Toyama
illustration: Yoshifumi Takeda
edit: Tamio Ogasawara, Ku Ishikawa
2026年6月 950号初出

 昔から新品で綺麗なスニーカーを履くことに抵抗がある。スニーカーは、汚れているほうがなぜか落ちつくし、お洒落だと感じているから。そこで何十年も前に汚れていてかっこいいスニーカーとして行き着いたのが〈VANS〉のオーセンティック。カラーは、決まってほぼ白か生成りか水色。この3色が汚れたときに一気にカッコよくなるのです。スケボーをやるわけでもなく、特に〈VANS〉に思い入れがあるわけでもないけれど、愛用している〈無印良品〉のデニム「RELAXED SLIM」 32インチの丈にピッタリ合うのが一番の理由です。たまに他のスニーカーを合わせてみたりするけど、結局家を出るときはオーセンティックになってしまう。シンプルなデザインだし、どんな服装にも合うし、すぐ汚れるし、100点満点です。

 定期的にメルカリで中古を探して購入している。大抵、少し汚れているのが届くので安心だけど、汚れが足りないときは、外を歩きながら足で踏んで汚してみたり。その姿をたまに人に見られて不思議そうな顔をされます(笑)。

 私にとってこのスニーカーは、履くだけではない。ソールもすり減り、ボロボロに履き潰しても絶対に捨てることはありません。今まで履き潰したオーセンティックは、すべてコレクションしていて、スタジオに飾ってみたり、作品の材料にしてみたりと鑑賞の対象に変化しています。

 サンフランシスコに行ったときの出来事で、向こうは、いろいろな物が道に落ちているのですが、帰国する日に歩いていたらボロボロのオーセンティックが道端に落ちていて、サイズも色褪せ具合もすべてが理想的で、迷わず履いていたオーセンティックをバッグに入れ、拾ったオーセンティックを履いて帰国したという思い出があります。さすがに、え! それ履いて帰るの? と、同行していた家族と友達がドン引きしてました(笑)。その一足は、今でも大切にコレクションしてます。

 でも一つ注意しないといけないことは、この年でボロボロのスニーカーを履いてると、考えて履いてるのか、ただ本当に無頓着で履いているのかわからないところです。高級ブランドや流行りの服を着ているのではなく、なんてことのない特徴のない格好をしてる人がとんでもなくお洒落に見えるときがある。それはきっと着る人の、そしてそれを見る人の頭の中にあるセンスなのだと思う。その人の頭の中がお洒落なんだと思う。私も頭の中が常にお洒落であることを意識しながら、これからもずっとボロボロのスニーカーを履いていきたいと思っている。

 とはいえ、現実といえば、娘の参観日にいつもの汚れているオーセンティックを玄関で履こうとしたら、妻からもう少し綺麗なスニーカーないの? と言われて自分が持っている中で一番綺麗なオーセンティックを履いて学校に向かいました。

 汚れているスニーカーはちゃんとTPOに合わせて履くようにしたいですね。

プロフィール

外見よりも頭の中。拾ったほうがカッコいいことさえある。

加賀美 健

現代美術作家

かがみ・けん|1974年生まれ。ドローイングや彫刻など多様な手法で作品を発表。代官山の『STRANGE STORE』のオーナーも務める。

Instagram
https://www.instagram.com/kenkagami/