フード

『粥や 佐藤』の台湾粥を通して一度に楽しむ浅草の専門店の味。

3月はこんなお店に行ってきた。

2024年3月29日

photo: Naoto Date
text: Eri Machida

ニューオープンやリニューアルしたお店、新メニューが出た老舗や最近やたらと友達が行っている店など、なにかと気になる飲食店を毎月紹介する連載。

お粥と蒸し野菜とシウマイのせいろと小鉢2品と杏仁豆腐のセット¥1,650 お粥は、しいたけ肉粥や和だし粥など常時5種が用意されている。島根県産の干し椎茸と干し海老の戻し汁で炊いているから、お粥自体にやさしい旨みがある。『菓子工房ルスルス』が監修した杏仁豆腐は、カルダモンとクローブが香る上品な味わい。

 浅草に点在する食材の専門店を知るには、台湾粥店『粥や 佐藤』へ行くのが一番の近道だ。

 この街で20年ロックバンド「浅草ジンタ」のメンバーとして活動していた佐藤恭史さんが、台北で食べた『三娘香菇肉粥』の出汁から炊いた肉粥の味が忘れられず、自ら試作を繰り返して編み出したレシピで、2018年に武蔵小杉で粥屋をスタート。そして、今月10日、浅草に移転してきた。

 ホームタウンに舞い戻りパワーアップしたのはセットメニュー。11時から15時半というランチの枠を超えた時間帯に注文できるセットには小鉢とせいろ、デザートがついていて、どのメニューにも浅草を拠点とするお店の食材が使われている。

 メインの魯肉粥の具材の豚肉は1949年から続く国産にこだわる精肉店『ふくや』、シウマイに使っているジューシーな鶏むね肉は『竹松鶏肉店』、トッピングの海苔は栄養が蓄えられた希少な「初摘み」のみを販売する『ぬま田海苔』というように、浅草に住む店主だからこそ知る選ばれしローカル食材が集結。さらに、デザートは奥さまが姉妹で営む浅草の名菓子店『菓子工房ルスルス』が手掛けているから、数多ある浅草の専門店を巡るような満足感が味わえる。

 食材店の魅力が詰まった一杯の粥を堪能したら、レストランのその先にある専門店に訪れてみるのもいいかもしれない。

千葉の『キレドベジタブルアトリエ』から仕入れた野菜はそのままでももちろん、ねぎダレや岩塩をつけても甘みが引き立って美味しい。黄身が大きな卵は那須の〈御養卵〉。

インフォメーション

『粥や 佐藤』の台湾粥を通して一度に楽しむ浅草の専門店の味。

粥や 佐藤

2024年3月10日に台湾に移転したビストロ『ペタンク』の跡地にオープン。明治12年に創業した九谷焼窯元の「上出長右衛門窯」6代目で、自身も制作を続ける上出惠悟さんのロゴが看板やれんげに描かれている。

◯東京都台東区浅草3-23-3  9:00〜15:30、16:30〜19:00(L.O18:30) 月・火休

Instagram
https://www.instagram.com/kayuyasato/