フード

都立家政『つるや』の夜メニュー、祖父が作ってくれた思い出のハンバーグサンド。

10月はこんなお店に行ってきた。

2023年10月29日

photo: Naoto Date
text: Eri Machida

ニューオープンやリニューアルしたお店、新メニューが出た老舗や最近やたらと友達が行っている店など、なにかと気になる飲食店を毎月紹介する連載。

ハンバーグサンド
ハンバーグサンド¥1,100、自家製の浅漬けピクルス付き。クラフトビール〈FAR EAST 東京ホワイト〉¥750 夜限定のクラフトビールはその他に3種類ある。

 創業54年、家族経営で代々引き継がれている都立家政の喫茶店『つるや』。今までは昼までだったが、9月から夜の営業も始まったと聞いて行ってきた。

 夜営業が始まったのは、3代目の渡部みゆきさんの娘夫婦が引き受けてくれることになったから。現在は2代目のゆきこさんも合わせて3代でお店を守っている。夜限定のメニューは昔の人気メニューのポークソテーと、みゆきさんが幼い頃、初代の祖父によく作ってもらっていた思い出のハンバーグサンドの2つ。ハンバーグはライスセットもあるが、実は違うレシピで、サンドイッチ用はパンに合うよう、牛肉が多めの合挽き肉を使用。試作を重ねたデミグラスソースも家族で話し合ってこの味に決めたそうで、ひとつひとつの工程に想いが詰まっている。ハンバーグとオニオンスライスを挟んだシンプルな料理でありながらも、肉本来の旨味やソースの量、シャキシャキとした玉ねぎのバランスがちょうどよくて最後の一口まで美味しい。ビールによく合う夜に食べたいサンドイッチだった。

 つい立ち寄りたくなるのは大人も子どもも同じようで、「近所の小学生がよくお店を覗きにくるんです」と嬉しそうに話すみゆきさん。この街をこよなく愛する家族が作った空間は唯一無二で、近所でなくとも、わざわざ足を運びたくなる。創業時から内装や家具、食器やカップなどは変わらないけれど、新メニューに挑戦するような柔軟さが長続きの秘密なのかもしれない。都立家政を知るためには欠かせない、街の空気感が伝わってくる喫茶店だ。

『つるや』内観
コーヒーを淹れる3代目の渡部みゆきさん。座っているお客さんと同じ目線になるよう、大きなカウンターは低く作られている。
〈天童木工〉の椅子
創業したときに特注した〈天童木工〉の椅子。
創業者の写真
創業者の米元平八郎さん、いねさん夫妻。

インフォメーション

つるや

つるや

お店の設計はみゆきさんの祖父の弟で西武球場や早稲田大学所沢キャンパス、所沢聖地霊園などを手がけた建築家の池原義郎氏によるもの。数々の大きな建物をつくっているが私的な空間は自宅と『つるや』のみで、建築を学ぶ学生も多く集まる。

◯東京都中野区鷺宮1-27-2 ☎︎03•3330•2170 11:00〜15:00、18:00〜21:00(L.O20:30) 水・木休 日曜は昼営業のみ