カルチャー

4月はこんな本を読もうかな。

花粉症に負けずに読みたい4冊。

2023年4月1日

text: Keisuke Kagiwada

『その輝きを僕は知らない』
ブランドン テイラー(著)、関麻衣子(訳)

1989年生まれの作家によるデビュー作。主人公は名門大学で生物化学の博士課程を目指す院生のウォレスだ。南部出身の黒人でゲイでもある彼の人生が、ある夏、白人の同級生と出会ったことをきっかけに動き出す。映画『君の名前で僕を呼んで』を彷彿とさせるこのエモい青春小説は、ラッパーのキッド・カディが映画化を進めているという噂。ぜひ実現しますように。¥3,630/早川書房

『アメリカへようこそ』
マシュー・ベイカー(著)、田内 志文(訳)

なんて爽やかなカバー! とページをめくって驚いた。なんせ「幽霊語」の辞書編纂者だったり、「女王陛下」と揶揄される少女だったり、奇想天外な者たちが大挙するかなり攻めた作品集なんだから。しかし、どうやらこれらの物語を通して、現代のアメリカの暗部に肉迫しようとしていることはひしひし伝わってくる。カバーに騙されてよかった! ¥2,750/KADOKAWA

『いま、映画をつくるということ 日本映画の担い手たちとの21の対話』
是枝裕和、土田環他(編)

早稲田大学の人気講義「マスターズ・オブ・シネマ」がまさかの書籍化。毎回映画界の第一線で活躍するゲストを招き、様々なテーマについて語るという内容なのだが、そのゲストがすごい。黒沢清、青山真治、周防正行、三宅唱、芦澤明子、丸山昇一などなど。彼ら彼女らが語るリアルな声には、目からウロコが落ちまくること請け合いだ。なんだったら人生に役立つアドバイスもあったりするので、映画界を目指す人もそうじゃない人もぜひご一読を。/フィルムアート社

『ラヴクラフト・カントリー』
マット・ラフ (著)、茂木健(訳)

クトゥルフ神話のオリジネーター、H・P・ラヴクラフトの世界観をベースに、朝鮮戦争帰還兵の黒人青年が、行方不明になった父を捜索する中で、200年に渡る血塗られたアメリカ史を目の当たりにする魔術的怪作。数年前、ジョーダン・ピールがJ・J・エイブラムスと組んで製作した同名ドラマの原作だ。なかなか見る方法がなかったドラマ版もU-NEXTでの独占配信が始まったから、比較してみるのも楽しいかも。¥1,760/東京創元社