ファッション

【#3】布との関わりかた

2022年10月27日

photo & text: Saeko Takahashi
edit: Yukako kazuno

結局3回目の世間もバッチのことを。バッチ以外の世間が見当たらない。

前回の続きのようになるが、バッチのカタチは、できるだけ役に立たないように、違和感を感じられるようにしたい。そしてそのためには、作り手である私や使ってくれる誰かのことより、素材となる布が気持ちよがる状態を意識している。

私には素材としての布選びやバッチを作る際に自分に課しているルールがある。完全な状態で残っているものには鋏をいれないことだ。本来の目的としては役割を終え、片隅でずっと動いていないようなものを探す。壊れていたり破れていたりするもの。かっこつけて言えば、そこから生まれるカタチをおもしろがりたいし、正直に言うと自由に作るとなると自意識が入ってしまい、その意識が信用できないから、できるだけ素材に依存したい。無意識なほつれや汚れや壊れた状態に沿っていくとバリエーションが広がっていく気がしている。

そんな風に布の状態に依存しているので、バッチにされて気持ちいいと思ってくれる布に出会えないと話にならない。素材にお伺いを立てている。なにを言ってるんだか、と思われていると思うが、探していると、あるもんなんです、バッチになる以外は考えられないというシロモノが。打ち捨てられたような人気ない布が。そしてそれらがどんな状態であってもなんとかバッチにできるくらいの数は作ってきたという自負がある。ぜんぶ、バッチにできる! バッチにする!

ということでメインではない場所を長時間漁るので、当然お店の人には迷惑な顔をされる。が、続けていたら年に2回ほど行っていた店のアフガニスタン人のおやじが、「お! 棚卸し要員きたな、これに金を出すのはコイツしかいない!」って感じで歓迎してくれるようになった。棚の奥の奥まで手を伸ばしても問題なし、何時間いようがどれだけ広げて散らかそうが放っておいてくれる。助かる。

おいで、私のもとへ! バッチになろう!

しかし。そのオヤジは私が作っているものを何度説明しても理解しない。散々漁らせたあとは毎回、絨毯やらゴージャスなドレスやら、お店のガールズたちのブレスレットやらもきっちりお勧めしてくる。「ベリービューティフル、バットノットフォーミー!」と丁重にお断りするのだが、「こんな綺麗なものを! 貴重なものを! オマエごときに! 長年の付き合いで破格で売ってやろうとしているのに、なぜ買わん! オマエには思い切りが足りないのだ!」と罵られ、“JAPANESE-CHIKEN”などと揶揄される。その通りでございます…。が、しかし、それもすべてバッチのためなのです…。

プロフィール

高橋彩子

たかはし・さえこ | 1977年生まれ。2003年、メキシコへ。メキシコ人女性に師事し、人形劇の制作に携わる。2010年〈アッチコッチバッチ〉を作りはじめる。2020年作品集『Bacchi Works』発表。2022年、金沢市民芸術村にて、「アーティスト・イン・レジデンス」に参加。個展、ワークショップ多数開催。

Instagram
https://www.instagram.com/bacchiworks_saeko/

Official Website
http://www.saekotakahashi.com/bacchi/bacchi.html