ファッション

【#1】自己紹介とバッチのこと①

2022年10月13日

photo & text: Saeko Takahashi
edit: Yukako Kazuno

今月、この場で「世間話」のコラムを書かせてもらうことになりました。まず、自己紹介までにどんな仕事をしているのかのお話を。

私はアッチコッチバッチというブローチを12年ほど作り続けている。生業にして6年が過ぎた。毎日ただただバッチのことを考えている。バッチを作り始めた理由は長くなるので割愛するが、今までにおそらく9000個ほどのバッチを作った。 日々、ひとり、記録のようにバッチを作り続けている。

どんなバッチなのかは、できたらHPなりInstagramなり、2020年に発行した作品集 『Bacchi Works』(2021年に調子に乗って増刷。絶賛発売中です)を見ていただきたいのだが、ざっくり言うと「世界の民族衣装や装飾品を組み合わせた小さなカケラ。お土産さんに売っていそうなもの」。そういうものを作っている。

仕事の流れはこうだ。まずは素材を集める。コロナの前は、年に2〜3回ほど海外に素材を探しに行っていた。素材選びで重要なのは強度と色合い。骨董屋さんではないので古さは重視しない。 古いものに見えてただ色あせたもので一向に構わない。強度は、バッチになるかどうか、その一点。美しくても珍しいものでも、やわらかいもの、繊細なものは諦める。色合いは、好みで選ぶ。迷ったら買う。なんとかなる。大抵のものはバッチにできるくらいにはなった。

そうして持ち帰ったら、まずは洗う。これがとにかく楽しい。長い間使われていて、そのまた何年もの間、倉庫や店の棚の中で固まっていたような素材に水を通す。色が変わることもある。土や埃で固まっているものもあり、壊れてしまうこともあるが、それもまたバッチの素材になる。

洗濯が終わったら眺めまわし、破れた部分は修復、解く、ひっくり返すなどをひと通り繰り返す。たとえば詰まった糸の塊が見つかればその糸を引き抜いてみる。洗ったはずの箇所から小さな土埃が舞う。汗と土の混ざったようなにおい。

鼻の角栓を取るような、耳垢ごっそり除去の動画を見ているような身もだえする気持ちのよさがある。素材を整えるのは、バッチ作りのひとつのクライマックス! ここまででバッチ作りの6割くらいが完成。そして、ここまででやっとカタチのことを考えはじめる。

よく聞かれます。「ひとつの作品を作るのにどのくらいかかりますか?」と。角栓や耳垢処理も終えてぜんぶ綺麗な状態で並べて縫いはじめたら、2時間くらいです。

組み合わせのお話は、また次回。

プロフィール

高橋彩子

たかはし・さえこ | 1977年生まれ。2003年、メキシコへ。メキシコ人女性に師事し、人形劇の制作に携わる。2010年〈アッチコッチバッチ〉を作りはじめる。2020年作品集『Bacchi Works』発表。2022年、金沢市民芸術村にて、「アーティスト・イン・レジデンス」に参加。個展、 ワークショップ多数開催。

Instagram
https://www.instagram.com/bacchiworks_saeko/

Official Website
http://www.saekotakahashi.com/bacchi/bacchi.html