カルチャー
〈SSZ〉ディレクター加藤忠幸さんの著書、カルチャーブック『KATO』発売!
加藤さんを深く知るための副読本。
2026年4月14日
photo: Shin Hamada
text: Neo Iida
ビームス刊行のパーソナルブック・シリーズ「I AM BEAMS」最新刊、『KATO』が発売された。メンズカジュアルのバイヤー、〈SSZ〉のディレクター、そして鎌倉「加藤農園」4代目と、様々な顔を持つ加藤忠幸さんの著書だ。ビームスに入社するまでの足跡や、野菜作りをする風景、自宅に眠る潤沢なアーカイヴなど、加藤さんをかたちづくる要素がぎゅっと詰まった一冊となっている。発売前日の4月9日には『ビームス 原宿』で先行リリースされ、店頭に出現した直売所には鎌倉野菜がずらり並んだ。開店準備中の加藤さんに話を聞いた。
スタジオに持ち込んだ、30箱におよぶ私物
―ー制作期間はどれくらいですか?
話が動き始めたのは去年の7月くらいだったかなあ。そのあとチームが集まって、3か月くらいで作りました。もともと会社から「パーソナルブックを出しませんか?」っていう話はもらってたんですけど、ずっと断ってたんですよ。面倒くさいから(笑)。絶対面倒くさいじゃん。
――(笑)。大変ですもんね。
…って言うとあれですけど、何を載せるか取捨選択しないといけないし、好きなものに順位付けができないんですよ。これもいいし、これもすごい。どっちがいちばんかってそう簡単なもんじゃないから、結構厳しいなと。でも、(長谷川)昭雄くんに「会社が出してくれるなら良い機会だしやったほうがいいよ」と言ってもらって、確かにそうだなあと。それで受けることにしたんです。
――確かに圧倒的な物量でした。加藤さんの私物を紹介した「COLLECTION」が本の半分くらいを占めていて。
スタジオ撮影の日までに全然精査できなくて、とにかくパッキングして30箱持っていって、そこからさらにグッと絞りました。モノ自体も好きなんですけど、作っている人のことが好きなんですよ。例えばスケシン(SK8THING)さんだったら、デザインしたものも好きだけど、スケシンさんの考え方も好き。今回の本ではスケシンさんにアートワークを作ってもらって、カバーの裏側にプリントしています。ステンシルで作ってくれたんですよ。自分の本のイメージもまさにこんな感じだったので、めっちゃ嬉しくて。
――加藤さんのアーカイブ力の凄まじさを感じました。実際に『ビームス 原宿』の2階にも私物がどかっと並んだ〈SSZ〉コーナーがあって、横浜モアーズの『ビームス ライフ 横浜』にも、加藤さんのお店『LANE BY』にも同様の場所がありますよね。今回の『KATO』刊行記念で『ビームス 原宿』1階にも新たにウォールが期間限定で展示されているし、モノの多さに驚かされました。
まだまだあるんですよ。自宅の僕の部屋にもあるし、裏に味噌小屋があってそこにもモノがたくさんあって。今回の刊行記念で作った棚は、特に自分が影響を受けたものを中心に並べました。
『LOVELY MAGAZINE』っていう(スケートチームT19の)大瀧浩史さんチームが作ってた情報誌。確か『HECTIC』(1994年にプロスケーターの江川芳文とバイヤーの真柄尚武が立ち上げたセレクトショップおよびブランド)で買って。あと俺双子だからツーヘッズのフィギュア。こういうエグいけど可愛いやつも色々集めてて。
池袋でスケボーのショーをやってたときに、今回写真を撮ってくれた(平野)太呂さんが『WHEEL magazine』か『Sb』のブースで出展するっていうので、行ったらDVD売ってて。やばいよねこれ。
あとこれは本にも載ってるけどKen Nagaharaってフォトグラファーがいて、マックス・シャーフとかクリス・リーディングとか、ジュリアンロストレンジャーとかが住んでるアパートがあるんだけどそこに暗室作ってて。でこれは『サンフランシスコ』っていう本なんだけど超やばいんですよ。自分で撮った写真をベタベタ貼っていて。
――本に掲載したアイテムも色々と展示されていて楽しいですね。
モノとモノが繋がっていることが多いから、スケートデッキがあったら関連してそのTシャツを置く、みたいなこともしたかったし、もっとガーッと並べたかったけどその時間がなかった。そういう展示ができてる部分もあるんですけどね。
――「THE HISTORY」では加藤さんの歴史が語られていますが、東海大学ラグビー部時代の写真も掲載されていますよね。私はいちばん最初にPOPEYEで加藤さんの取材をしたのが2017年の『僕の好きな古着』だったんですけど、「大学時代にラグビーをやって胸囲があって“ハナチク”になった」という話を伺ったのが印象的で(笑)。その頃の写真を見ることができて感動したんです。
ありましたね。面接のときに「自分の体のイケてない部分って何ですか?」って聞かれた時に、「みんなからハナチクって言われるんですよね」って答えたんですよ。離れ乳首。それが筋肉が付くにつれてどんどん離れてくから、友達に「乳首また離れてるよ!」って言われてて。それを面接のときに言った覚えがあるんですよ(笑)。
――あっ、面接でも話してたんですね(笑)。取材では乳首が目立つからフットボールTシャツを集めているというお話を聞きました。『KATO』には集めている服もたくさん載っていましたけど、多分一部なんだろうなと。
フィギュアとかアートとかデッキとかが多くて服のパートはちょっと少ないかもしれないです。でも〈Lee〉のデニムとか、サーフウェアの〈BIRDWELL〉とか、ヴィンテージアイテムとか、〈VANS〉のスニーカーとかは載せてあります。
10周年を迎えた〈SSZ〉
――情報量が多くて隅々まで楽しめました。あと、ブック・イン・ブックの形で〈SSZ〉のZINE(コレクションごとに加藤さんが会社のプリンタで作ったもの。リーガルパッドに写真の切り抜きやイラストをコラージュし、コンセプトやアイテムのこだわりを紹介している)が掲載されているのも嬉しかったです。
僕といえばぎっちりコラージュだから手描き感が欲しかったし、何かしらZINEを入れたいなと。それで〈SSZ〉のファーストコレクションのときに作ったZINEを綴じ込みにしました。
―一般には配布されていなくて、ビームス各店舗のスタッフさん向けの案内用なんですよね。表紙の一覧も掲載されていますが、これで全部ですか?
いや、全部ではなくて一部です。あと2023年のCUTTING EDGE collectionを出してからはZINEを作ってないんですよ。最近はSNSがあるから、商品説明がそこで事足りちゃう。本当はやらないとダメなんですけどね。そういう自分の中でボロボロした思いがいっぱいあったし、それに〈SSZ〉も10周年だし、ちゃんと本を作ってみようと思ったところもあります。
――10周年おめでとうございます! ビームス各店では最新コレクション「TEN YEARS of HONING THE SSZ」を展開中ですよね。〈C.E〉とのスペシャルなコラボレーションや、過去のコレクションからのリブートやかけ合わせも色々あって、見応えがあるなと思いました。
〈C.E〉と一緒に服作りができてめちゃくちゃ嬉しかったです。あと、これはゴンズ(マーク・ゴンザレス)とコラボした「SIGNATURE collection」と、実験的な服を作った「SAMPLE collection」のふたつのテーマをかけ合わせた「BIRD WEP」というジャケット。Tシャツは10年前にジム・フィリップスに描いてもらったグラフィックを。確か〈OJ WHEELS〉のウィールに羽が生えてるか、オレンジのへたについた葉っぱか、彼が描いたグラフィックがあったんですよ。それをもとにウィールにウイングをつけてくださいって頼んで描いてもらったものです。
「TEN YEARS of HONING THE SSZ」のタグにはこれまでのコレクションの一覧が描かれている。BIRD WEB¥41,800
ジム・フィリップスの迫力あるグラフィックが描かれたJIM W/WHEEL T ¥8,800
これはアウトドアのカテゴリーで何か持ってきたいなと思って、みんな〈Patagonia〉っていうんだけど、実は〈Sockwell〉っていうブランドがモチーフ。フリースにネイティブ柄の生地をかけ合わせることが多いんですけど、ロゴがカッコ良くてサンプリングしました。
これは「いざ鎌倉collection」の座禅パンツに、「revenge collection」のテック要素をミックスした「2P trousers」。当時化繊のパンツでスラックスを作ってるところって少なかったんですよ。今は普通になっちゃったけど。ナイロンパンツにベルトループなんて付けなかったし、ポケットにジップもなかった。自分で言うのもなんだけど結構理想形に近いんじゃないかな。切りっぱなしに見えてドローコードで絞るっていうのも〈SSZ〉が昔からやってることですね。
ー―〈SSZ〉といえばパンツみたいなところもありますもんね。
やっぱりパンツが好きなんですよね。今回も展示してますけど〈Maison Margiela〉のサルエルパンツとか、〈MACKINTOSH PHILOSOPHY〉の迷彩のパンツとか、スケーターブランドに限らずいろんな形のものが好きなんですよね。パンツだけの本もいつか作りたいなと思ってるんです。
――楽しみです! やっぱり〈SSZ〉はギミックもコンセプトも楽しくて、着ていると気分が上がるんですよね。ポケットがたくさん付いていたり、ものすごく大きかったり、裏っ返しになっていたり、奇想天外で。その作り手である加藤さんがどんな人なのかがわかる一冊なので、多くの人に読んでもらいたいですね。
僕が作るとごちゃごちゃしたコラージュになるけど、素晴らしいチームに作ってもらえて綺麗な本になりました。編集を担当してくれたのは元々マガジンハウスの編集者で、今はみよし屋としてタコス屋さんをやっている阿部太一さん。竹村卓さんに書いてもらったり、太呂さんに撮ってもらったり、本当にいい一冊になりました。ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
インフォメーション
『KATO』加藤忠幸
今年創業50周年を迎えるBEAMSのメンズカジュアルバイヤーであり、ブランド〈SSZ〉のディレクターを務め、鎌倉で「加藤農園」4代目として野菜づくりも行う加藤忠幸にフォーカスした一冊。歴史を語る「THE HISTORY」、〈SSZ〉のアーカイブを厳選して紹介する「SSZ ARCHIVE」、加藤を型取る場所を映した「PLACES」、自身を作り上げたカルチャーを無数のアイテムで可視化した「COLLECTION」という充実のコンテンツにより、マルチな活動を浮き彫りにする。BEAMSのスタッフによるパーソナルブック・シリーズ『I AM BEAMS』の第11弾。全国書店をはじめ、ビームス一部店舗で好評発売中。¥2,200
Official Website
https://www.beams.co.jp/item/tokyocultuart/music/30810056089/?color=90
プロフィール
加藤忠幸
かとう・ただゆき|1973年、神奈川県生まれ。大学卒業後にビームス入社。販売スタッフを経て、2012年からビームスメンズカジュアルのバイヤーに。2016年、自身がディレクターを務めるブランド〈SSZ〉をローンチ。鎌倉「加藤農園」の4代目として野菜を栽培し、個人ショップ『LANE BY』も営む。
Instagram
https://www.instagram.com/katoyasai/
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