ライフスタイル
マイナーリーガーズの部屋。/キッチン編
photo: Mai Kise (room), Kanta Torihata (product)
text: Fuya Uto
edit: Kosuke Ide
2026年3月 947号初出
2026年2月13日
ティーコージー、エッグスタンド、ペーパーナイフ……。名前を聞いても姿カタチを想像しにくいのは百も承知。なんせこれらはスマホを筆頭にテクノロジーが発達した現代では、なくても(ぜんぜん)困らないアイテムだから。でも逆に言うと、だからこそ既視感がなくココロが弾み、日常にない使い心地や、その“無駄感” にそそられるじゃないか。今回、そんなお部屋の名脇役たちを「キッチン」と「デスク」周りにわけて、それぞれ8つのカテゴリーで集めてみた。これまでの連載を読んでくれている方には理解してもらえると思うけど、登場するアイテムのほとんどは機能的にはいたってシンプル。だからそのぶん、デザインには無限の余白が宿る。合理的ではないけど、あったら毎日の生活が(かなり)楽しくなる。騒がず目立たず、マイナーだけどイカすヤツら。マイナーリーガーズの歌を聴け。
タイパにガン無視を決め込む、
台所に集うマイナーな名手たち。
1. TEA COZY
ティーコージー
紅茶の本場イギリスで400年以上愛されてきたこの厚手のニット帽は、保温性能でいえば魔法瓶に到底かなわない。でも、茶葉が開くのをじっくり待つ温かみのある時間こそ、忘れられつつある本来の「ティータイム」なのではないか。友人とのおしゃべりはそのほうがきっといいし、なんせ見た目もカワイイ。ポルトガルの小さな村Rio de Melに住むおばあさんが手編みした逸品は控えめなネップにそそられて。¥4,950 (TEA & TREATS☎03·6379·1988)
2. POP-UP TOASTER
ポップアップトースター
図体はでかくて場所を取り、食パン2枚しか焼けず、厚過ぎるとダメで、消費電力はドライヤー並み。とことんワガママでありながら、焼き上がりにピョン! とスロットから跳ね上がるあの瞬間のワクワク感だけで、すべてを帳消しにする憎いヤツ。トーストの本場イギリスの高級調理家電メーカー〈Dualit〉で1950年代から続く名作のヴィンテージは、今にない淡いピンク色も魅力的で。¥23,375 (L.A.DEPO☎047·404·5140)
3. ANALOG KITCHEN TIMER
アナログキッチンタイマー
目盛りは分単位しか設定できず、都度ダイヤルをMAXまで回してから合わせないと正確な時間が計れない。スマホや家電製品に組み込まれている「標準装備」より手間がかかるけれど、完了のベルが鳴るまでに刻まれるチッチッチという鳥のさえずりのような何ともいじらしい時の音は、忙しない現代の治療薬だ。ドイツで半世紀以上続く「TFA DOSTMANN」社のこれは小ぶりながら適度に重く、カップ麺の3分間が劇的に色鮮やかに。¥2,530(B.L.W)
4. PORTABLE RADIO
ポータブルラジオ
アンテナを伸ばし、指先でほんの数ミリ慎重にダイヤルを調整して辿り着く、知らないけどそそられる曲や顔も知らない誰かの他愛ないトーク。「検索」も「スキップ」もできず、ときおり混信も許すフリーダムな電波の海には、この小さな魔法の箱が必要だ。新品も無数にあるけど、かつて〈SONY〉が販売していた「ICF-P26」は削ぎ落とされたミニマルな佇まいで場所も取らない。フリマアプリで売っているからぜひ探してみて。
5. TOAST RACK
トーストラック
いつ使うのだろう? と想像力が膨らむイギリス生まれの不思議なヤツで、使い道はカリカリのトーストをスロットへ一枚ずつ差し込み、置いておくのみ。「焼きたてを熱いうちに」という現代の食生活と真っ向から対立するその様は、言わば朝を急がないための優雅な策だ。湿気の多い日本では使いづらいかもしれないけど、英国きっての陶磁器メーカー〈Carlton Ware〉はオブジェとしても◎。¥8,800 (rocca rocca Osaka☎072·940·6397)
6. EGG STAND
エッグスタンド
朝に半熟卵を用意し、手で剥かず、器に「立てる」。コツコツとスプーンの裏で殻を叩き割ったらハイ完成、トロッとした黄身のご馳走を口に運ぶ……とな。18世紀から続くヨーロッパのクラシックな食文化はなんてエレガント。陶芸家チュ・ポールセンが60年代に手掛けたモダンなコレも卵ひとつに丁寧に向き合い生まれた結晶の一つ。思いを馳せてじっくりと食べるのもまた一興だ。¥7,800 (SHARK ATTACK YAMATO☎046·244·5172)
7. PAPER NAPKIN HOLDER
ペーパーナプキンホルダー
「ティッシュで十分」という正論は、この小さなホルダーの前では無粋に響く。やはりなくても困らないけれど、色付きのナプキンをセットした瞬間、いつものキッチンがアメリカンダイナーのような温かみのある表情になるじゃないか。まさに一枚手に取るたびに心が浮き立つ、キッチンの傍らで出番を待つ愛すべき居候。フィンランド発の〈Aarikka〉の小鳥モチーフは、ただ飾っておくだけでもいい佇まい。¥5,200(Callum shop)
8. THERMO-HYGROMETER
温湿度計
自動で空調が動き出す現代ではなおさらマイナーな存在になりつつある末席。一方で、未だに作り続けられているのはやはり便利だからだろう。外の温湿度はスマホでわかっても、部屋のそれはわからないから。なかでもドイツの「Fischer-barometer」社の温湿度計は針が交差する箇所を見ることで“快適さ”まで知ることができる仕掛けに。きっとデジタル表示では得られない空気のつかみ方があるはず。¥18,480(DETAIL)
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