TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#2】名画を刺してみた!
執筆:中野有紗
2026年1月19日
刺繍は、私の撮影の合間の待ち時間のお供。
針を進めていると、不思議と呼吸が整い気持ちが整っていく…
それはまるで小さなスイッチのような存在。
一針一針を重ねるひとりだけの時間が、撮影への集中力とモチベーションを静かに高めてくれる。
そんな私の作品のデザインの源は、名画や美術館で出会う作品や映画のワンシーン、そしてピンタレストに並ぶイラストたち。
美術館や展示会に足を運ぶのが好きで、そこで出会う作品から、いつも多くの着想をもらっている。
「あ、これもいい!」「こっちも!」と参考になりそうな作品を集めているうちに、気づけば私のスマホのカメラロールが大変なことになっている。
名画の刺繍は、ほんの少しのバランスの違いで再現度や印象が大きく変わる。だからこそ、あえて顔の細かなパーツを省き、表情に余韻が生まれるよう刺繍しているのが私なりのこだわり。原画に近い色合いの糸を何層にも重ねていく過程は、どこか絵を描く感覚にも似ている。
ときどき線からはみ出したり糸が絡まったり……
でもそのちょっとしたズレや歪さが不思議なバランスを生み、そのまま表情の一部になっていると感じる。
刺繍は、そういう“正確さ”よりも“余白”を楽しめる表現なのかもしれない。
私の好きな昔の映画にある間や静かな余韻は、そんな刺繍の余白とどこか似ている。
プロフィール
中野有紗
なかの・ありさ|俳優、モデル。2005年、東京都生まれ。モデルとして雑誌や広告で活躍し、俳優としても映画やドラマなどに出演。’23年、巨匠ヴィム・ヴェンダースが監督した映画『PERFECT DAYS』に抜擢。’25年、出演したドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』が話題を呼び、映画『この夏の星を見る』で第17回TAMA映画祭賞・最優秀新進女優賞を、また第39回高崎映画祭・最優秀新進俳優賞をそれぞれ受賞した。
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