カルチャー
「まだ7月なのにこんなに暑くて大丈夫?」って不安を鎮めるために観たい3作。
7月はこんな映画を観ようかな。
2025年7月1日
text: Keisuke Kagiwada
『顔を捨てた男』
アーロン・シンバーグ(監)
病で顔が変形している役者志望のエドワードは、新しい治療によりごく平均的な容姿を手に入れる。身分を偽り別人として暮らし始めた彼だったが、かつて想いを寄せていた劇作家の女性と再会。彼女が過去の自分を主人公にした舞台劇を製作中だと知り、その役のオーディションを受ける。問題を抱えていると感じている主人公が、医療の力で一旦は解決させるものの、それがまた別の問題を生むという物語は、『サブスタンス』と近い。しかし、『サブスタンス』は「物語で描かれる夢の科学技術(医療も含む)は悲劇を招きがち」というありきたりな発想に陥ったのに対し、『顔を捨てた男』はそこをさも当然のようにスルーし、もっと複雑かつ普遍的な場所を目指している。その点が素晴らしかった。7月11日より公開。
『ユリシーズ』
宇和川輝(監)
映画では、ひとつのシーン内での人物たちの画面内での左右関係を混乱させないため、イマジナリーラインというものを設定し、それを越えないようにしましょうという暗黙の了解がある。しかし、本作はそんなラインを涼しい顔で踏み越え、ひとつの空間で別々に親密圏を築いている者たちを自由に撮り、それぞれのショットをさらりと繋げてしまう。キッチンでダンスを踊るカップルと何食わぬ顔の猫、部屋で談話する母子とベランダで洗濯物を干す祖母……。繋げてしまえば繋がってしまうし、繋がってしまえば繋がっているように見えるんだから、繋げますよ、という具合だ。こうした空間把握能力が、本作のキモと言えるかもしれない。“ひとつの空間“は“世界“へと広がり、マドリードと日本で展開されるそれぞれに無関係の3つの物語が、国境を越えて大胆不敵に繋がれる。なるほど、国境とはイマジナリーラインでしかなかったのか。7月19日よりポレポレ東中野、8月よりシネ・ヌーヴォにて公開。
『ストレンジ・ダーリン』
J・T・モルナー(監)
死に物狂いで走って逃げる女を、銃を抱えた男が追っている。シリアルキラーによる連続殺人事件が世間を賑わせている中、2人は最近知り合い、モーテルで一夜を明かしたらしい。それ以上のストーリーは知らずに観るのが吉。ただその情報だけだと面白いかどうかの判断もつかないと思うので、一点だけ本作のストロングポイントを。全6章構成なのだが、なぜか3章から幕を開けて、その次は5章に進むっていうのがそれ。タランティーノの『パルプ・フィクション』の時系列リミックスをさらにロジカルに極めたというべきか。しかも、物語は実話を元にしているというのが驚き。7月11日より公開。
関連記事
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.16/『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』(監督:レオス・カラックス)
「レオス・カラックス監督に覚悟はあるのか?」
2025年3月24日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.15/『陪審員2番』(監督:クリント・イーストウッド)
「イーストウッドはなぜ玄関にこだわるのか?」
2024年12月25日
カルチャー
MY STANDARD COMICS/ヨン・サンホ
2022年10月18日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/宇多丸
夫婦の倦怠期を描いた映画
2021年11月10日
カルチャー
おもしろい映画、知らない?/W.デーヴィッド・マークス
音楽が重要な役割を果たすコメディ映画
2021年11月20日
カルチャー
VHSでしか観られない映画ベスト10
2021年11月4日
カルチャー
サンドイッチと映画
映画を見る片手間に食べられるから相性がいいなんて思ってほしくない。 この2つにはもっと人間の深い部分に関わっているんだから。
2021年4月20日
カルチャー
エンドロールを眺めるだけの日々はこれで終わりにしよう。
2021年11月4日
カルチャー
“関西弁フィルム・ノワール”を目指して作りました。
映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原田眞人監督にインタビュー。
2023年10月2日
カルチャー
a History of Horror Films ’80s(1/2)/文・平倉圭
クローネンバーグのヌチョヌチョした肉体。
2021年8月8日
カルチャー
a History of Horror Films ’80s(2/2)/文・平倉圭
クローネンバーグのヌチョヌチョした肉体。
2021年8月8日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(1/2)/文・福田安佐子
そぞろ歩くゾンビの夜明け。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(2/2)/文・福田安佐子
そぞろ歩くゾンビの夜明け。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(1/2)/文・碓井みちこ
ヒッチコックの恐怖演出。
2021年8月18日
カルチャー
a History of Horror Films ’60s(2/2)/文・碓井みちこ
2021年8月18日
カルチャー
a History of Horror Films ’90s(1/2)/文・入江哲朗
自己模倣するホラー映画。
2021年8月17日
カルチャー
a History of Horror Films ’90s(2/2)/文・入江哲朗
自己模倣するホラー映画。
2021年8月17日
ピックアップ
PROMOTION
クリエイターたちの、福祉に関わる仕事。
介護の仕事のことをちゃんと知ってみないか?
2025年10月23日
PROMOTION
「Polo Originals」の世界へ、ようこそ。
2025年10月31日
PROMOTION
心斎橋にオープンした〈リンドバーグ〉で、 快適かつ美しいアイウェアを探しに行こう。
2025年11月5日
PROMOTION
NORMEL TIMES初のショートフィルム『遠い人』の玉田真也監督にインタビュー。
NORMEL TIMES
2025年10月30日
PROMOTION
職人技が光る大洋印刷とプロのバッグ。
Taiyo Printing
2025年11月8日
PROMOTION
〈THE NORTH FACE〉僕はこの冬は〝ミドラー〟を選ぶことにした。
THE NORTH FACE
2025年10月24日
PROMOTION
「Polo Originals」とは何か?
それは〈ポロ ラルフ ローレン〉の世界観の名前。
2025年10月21日
PROMOTION
11月、心斎橋パルコが5周年を迎えるってよ。
PARCO
2025年11月10日
PROMOTION
Polo Originals × POPEYE LOOK COLLECTION
2025年10月21日
PROMOTION
お邪魔します、「Polo Originals & Friends」。
W・デイヴィッド・マークスさんと見つけた、今の時代の「自由」なトラッド。
2025年10月21日
PROMOTION
新しい〈シトロエン〉C3に乗って、手土産の調達へ。
レトロでポップな顔をした、毎日の相棒。
2025年11月11日
PROMOTION
富士6時間耐久レースと〈ロレックス〉。
ROLEX
2025年11月11日
PROMOTION
〈バレンシアガ〉Across and Down
Balenciaga
2025年11月10日
PROMOTION
〈ACUO〉で前向きにリセットしよう。
Refresh and Go with ACUO
2025年10月29日
PROMOTION
秋の旅も冬の旅も、やっぱりAirbnb。
Airbnb
2025年11月10日
PROMOTION
心斎橋PARCOでパルコの広告を一気に振り返ろう。
「パルコを広告する」1969-2025 PARCO広告展
2025年11月13日