カルチャー

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.23

写真・文/久山宗成 a.k.a. Donald

2024年2月2日

photo & text: Muneaki Kuyama a.k.a. Donald
edit: Yukako Kazuno

今回は「隠れGEEK WATCHを探せ」企画! 最近、カレー界隈をお騒がしている『EMERADA』の氏家尚希君にお話を伺います。ノーカットのYouTubeGEEK WATCH CHANNELもぜひご覧ください。

ゲストプロフィール

氏家尚希

うじいえ・なおき | 『EMERADA』という架空の国の料理人。2017年、福岡にて氏家尚希(兄)がスナックの間借りからスタートし、途中から氏家隆見(弟)も加入。京都を経て現在は東京で活動中。2022年、雑誌『dancyu』に掲載。熱海のアートイベントで南インド料理のミールスをアートとして出展するなど様々な活動を展開中。

Instagram
https://www.instagram.com/emerada_curry/

氏家君との付き合いは5年ほど前。僕が福岡で開催したポップアップに来てくれて、GEEK WATCH談義で盛り上がったのがご縁のはじまり。彼の仕事を尋ねると、リヤカーで食材を運びスナックで間借りのカレー屋さんを始めたばかりだという。ポップアップが終了したオフの日に、彼のカレーをどうしても食べたくなって『EMERADA』にお邪魔した。

当時付き合っていた彼女が無類のカレー好きで、一緒にスリランカまでカレー食い倒れ旅行に行ったばかりだった私ドナルドは、三食カレーを食べ続けていて暫くカレーはいいかな…モードだった。だが、しかし。『EMERADA』のマトンキーマカレーを食べた時は、第三の目が開眼。複雑なスパイスがじわりじわりとゴアトランスの如し〜。たった一皿で『EMERADA』中毒に。

あれから5年…。2年ほど前から東京に拠点を移したという氏家君に、今回はカレーの話を完全封印して彼のGEEK WATCHコレクションついて話を聞いた。カレーと同じく、彼の腕時計コレクションの着目点はユニークでちょっぴりスパイシー。

「2年ほど前に東京に活動拠点を移しました。それ以来、慣れない電車を乗り継いで分単位で食材の仕入れをするので腕時計の重要性を痛感。なので、オンタイムの普段使いにはミリタリーウォッチが多いです。一刻を争う場所で使われる道具なので、見た瞬間に時刻が分かるという視認性が気に入っています。しかも違いがほとんど分からないデザインを収集しています。初心者がバードウォッチングした時って、日本の鳥って慎ましいのであまり違いが分からなかったりするじゃないですか? でも分かる人からするとそのちょっとした違いが楽しかったりする、そういう楽しみ方をしています。実は、先ほど写真を見て頂いた8本。ミリタリー腕時計の中に〈DAISO〉の500円のが入っているんですけど分かりますか?」

「答えは上段の一番右と下段一番左です。ダイソー恐るべしです(笑)。今は実際にミリタリーウォッチとして使われることも少なくなってきたと思いますけど、やっぱりすぐに時間が把握できる道具として優れていると思います。最近は、軍用目的に絞らず作られるようになった時代のものに注目しています」

「この〈Hamilton〉なんか、ケースがマットじゃなくてピカピカなんですよ。文字盤もレコードみたいな溝が掘ってあって光るから見つかりやすい(笑)。もうミリタリーウォッチだけど、ミリタリーウォッチじゃないみたいな。こういうのは割と作られた時代性を図る尺度とかになるんじゃないかなと思ってます」

「ミリタリーウォッチ収集の反動からか、最近はもっぱら視認性が極端に低い〈Swatch〉も集めています。普段使いの腕時計はミリタリーなので、オフの日は見えなくてもいいかなという(笑)」

「沖縄に長く住んでたので、ダイバーズウォッチはやっぱり好きですね。昔の潜水服みたいなレトロなデザインの〈CASIO〉の「潜水王」は、水深計や温度計の器具感とシルバー×ゴールドの感じが気に入っています」

「ダイバーズウォッチ収集もこじらせていて、このごろはレディースサイズの小さいダイバーズもお気に入りです。こういうツールウォッチって潜水服やジャンパーの上から装着してグローブをしていても操作できるように直径4cmくらいの大きさになってる。やっぱり普段着けているとちょっと大きく感じて着けなくなっちゃったんです。でも、レディースサイズなら品も良くてありかなと」

「エルゴノミクスっていう人間工学的な考え方で、椅子とかインプラントとか長時間触れて接するものは、デザインもそうだけど、体と合ってないとものすごい負担になるので、最近は腕時計の素材に注目しています。以前、ランニングウォッチの〈Polar〉を持っていたのですが裏蓋だけチタンだったんですよ。やっぱり人間に一番近い金属って言われてるくらいなので疲れにくいんですよね、ステンレスより。それでハマっちゃってチタンの時計を探してますね」

「最後に紹介したいのがこちら。腕時計が好き過ぎて、もう時間を計るという概念から逸脱してもいいんじゃないかっていう考えになった頃に自分で作りました。時計は好きなんだけど、逆に時計が持つ社会性から解き放たれたくなったんです。別に何時だっていいやという。好きだから目を目をつむれば腕時計が見えるみたいな(笑)。『バガボンド』でもそういう話があったんです。我が剣は、天地とひとつ。ゆえに剣は無くともよいという「無刀」という境地ですね。言うなれば「無時計」。これなら自分の好きな時間を一生見てられますから」

ちょっとこじらせすぎて同じ偏愛家としてシンパシーを覚える氏家君は、年内に初の実店舗をスタートさせるべく奮闘しているという。オープンしたらみんなにも『EMERADA』を体験して欲しい。その際は、彼がどのミリタリーウォッチをしているかもチェックしてみてね。

プロフィール

ドナルド魔苦怒奈流怒

久山宗成 a.k.a. Donald

くやま・むねあき | 改造活動家、企画編集者、GEEK WATCH偏愛家。ワタリウム美術館のミュージアムショップ地下中二階にて、2014年より改造見世物小屋『+R.I.P. STORE』を営む。様々なマテリアルや手法を組み合わせてジュエリー、腕時計、プロダクト、舞台美術などを制作している。趣味的に始めてどハマりしたGEEK WATCHのコレクションは今や700本以上。現在『GEEK WATCH PEDIA』なる本を編集中。 

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