ファッション

「理想の普段着シャツ」をオーダーで作ってみる。Vol.3

オーダーシャツ/完成編

2023年8月17日

photo: Keisuke Fukamizu
text: Toromatsu
edit: Kosuke Ide
cooperation: Yu Kokubu

 オーダーシャツの専門店「山本ワイシャツ店」で、お気に入りのシャツをベースに理想の普段着シャツをオーダーしたPOPEYE Webチーム(その1、その2はこちら)。果たしてどんなものができるのかという僕たちのドキドキをよそに製作はとんとん拍子に進行。注文から約3週間で完成の連絡が入り、さっそく引き取りに伺った。

 4名分、全4種類のシャツを作ってくれたのは、店主の伊川孝次さん。世界にひとつしかない自分だけの服が1カ月も待たずして手に入るなんて! 伊川さんに御礼を言い、ラッピングされた袋をみんなで持ち帰ると、嬉しさ余ってまるで子供のように見せ合いっこに。

完成した4枚のオーダーシャツはこちら!

 そんなわけで、完成したものを一枚ずつ紹介していきたい。僕(トロ松)が作ってもらったシャツは、70sの半袖プルオーバーシャツをベースに麻100%の生地でアレンジした一着。サーフポロとも呼ばれていたアロハシャツの一種を「無地で作ってみたい」とチャレンジしたら、想像を超えた出来栄えで、ボタンや襟のディテールも元シャツと同様の雰囲気ながらシンプルフェイスに。実はベースにしたシャツが少々粗悪なつくりだったらしく、左右の袖の長さなどが微妙に違っていたそうだが、そこは綺麗に整えてくれていた。そういう些細な気遣いも相まってか、すごく上品に見える!

 宮本さんがベースとして持ち込んだのはイギリス軍のミリタリーシャツ。こちらもその独特のディテールは再現してくれつつ、「袖丈をジャストサイズにして、肩周りをもう少しゆったりさせたい」という要望をしっかり反映してくれていた。サンプルと並べて見てみると、ウエストの軽いシェイプやテールの独特の形もそのまま。これだけでも十分に満足なのに、襟元に施されたタグと名前の刺繍がさらに特別感をもたらしてくれる。

 井出さんは60sのオープンカラーシャツを持ち込んで製作。「自身がリペアした際に生じてしまったカフスの短さも、襟先の丸さもすべてを同じように」と注文していたとおり、60年代の雰囲気を見事に醸した仕上がりだ。他にも後ろ身ごろの僅かなプリーツや、袖の二つボタン、どこをとっても申し分なし。ヴィンテージなムードでありながら日常的にガンガン着られる、「理想の普段着シャツ」のお手本とも言いたい逸品に。

 最後は国分さんの一着で、これもまたニクい。元々オーダーメイドで作られたと思しきコットンシャツを2着持ち込んでオーダーしたシャツにはギミックが満載。左胸というよりは左脇に近い部分に機械で刺繍されていた元のオーナーのイニシャル3文字に国分さんのイニシャル1文字を加えて、しかもこちらは手刺繍で仕上げてくれた。さらにもう一枚のサンプルシャツにあったダブルカフ(長めの袖を折り返して二重にしたもの)や、ツープリーツを取り入れ、自分の身体に馴染むようにサイズ感を微修正してもらった。これも間違いなく世界にひとつのシャツだと思う。

 古着で調子のいいシャツを見つけるのも、デザイナーのセンスを感じる既製のシャツを手に入れるのももちろん嬉しい。そのうえで新しい体験として試みた「理想の普段着シャツづくり」は、これまでにないフィット感、自分でデザインを考案する特別感、そして職人の高い技術と丁寧な仕事によって全員大満足の結果に。

「次はこの形で他の生地を試したい」とか、「違う時期用にこういうのも作ってみたい」とかいろんな話が飛び交う中、国分さんがいち早くまた新しいシャツをオーダーしに行ったそう。古着や既製のシャツともさほど価格差がないであろう2万円代で、世界で一枚のパーソナルなシャツができるし、しかも回数を重ねることで精度をあげていけるのが奥深くて面白い。読者の皆さんもぜひともトライしてみてほしい。僕は次はどんなシャツを作ってみようかな。

残った生地はリペア用に持ち帰る。同生地で巾着も作ってくれていた。

インフォメーション

山本ワイシャツ店

かつて目黒にあった親戚のシャツ店「山本ワイシャツ店」で修業し、独立。1974年に名を借りるかたちで、松陰神社通り商店街の現店舗にて「山本ワイシャツ店」を創業。以来、オーダーメイドシャツ一筋、お客さんのほとんどはリピーター。 ◎東京都世田谷区若林4-27-15 ☎03-3413-9304 営業時間:9:00~18:00 定休日:日