カルチャー
シティボーイの額装術。Vol.3
額装オーダー/完成編
2022年8月29日
photo: Koh Akazawa
text: Toromatsu
edit: Kosuke Ide
cooperation: Yu Kokubu
シルクスクリーン版画・Tシャツ・写真・カセットテープ2本を老舗額装店〈ニュートン〉に持ち寄り、額装をオーダーした〈POPEYE Web〉チーム3名。待つこと約3週間。遂に完成の連絡を受け、一同は実際に作品たちが額装されたものを受け取った。
事前に額装を決めていくにあたって店主の鷹箸廉(たかのはし・れん)さんが、持ち込んだものにL字の額縁サンプルやマットを当ててくれたし、既存の額装例を見せてくれたりもしたから、ある程度、完成品のイメージは付いていた。でも、その想像はいい意味で裏切られた。オーダーしているときに鷹箸さんが「出来上がったときに、既製品フレームとは明らかに異なるのがわかりますよ」と言っていたけど、まさしくその言葉通りで、実物を目にすると僕たちのイメージを遥かに超えるほど素晴らしい出来栄えだったからだ。
まずは、井出さんがオーダーしたシルクスクリーン版画から。フロート(作品が浮いて見えるよう額縁にセットするワザ)がもたらしてくれる雰囲気がどのようなものなのかが特に気になっていたのだが、やはりこれにより作品が立体的に見え、一種のオブジェ的な存在感が強調されているのが見て取れる。ウォールナット材の色味や10mmの細い縁幅なども相まって、キューバの蚤の市で見つけた知られざるアーティストの版画作品が、品が良く上質なオーラを纏っている。これぞ額装術と言わんばかりの面持ちである。
続いて筆者(トロ松)がオーダーしたTシャツの額装。’70年代に日本に流通したソウル番組のTシャツだが、しっかりと厚みのある額縁が加わることで、貫禄ある姿に変貌。ソウルバーなどに飾られていたら、間違いなく看板や店のアイコンになりうるであろう。Tシャツと同色の額縁が目を引くし、ドッコ式(作品側と壁側にそれぞれ凹凸となる突起材を取り付け、隙間なくフラットに設置する方法)を採用したことで、すっきりと壁に飾ることができる。Tシャツをあえて折り畳んだことで、大きくなりすぎず、飾るスペースも選ばないのも良かった。当然ながら既製品のフレームではこんなTシャツの額装はできるはずもない。
そしてコクブさんのカセットテープの額装。これは〈ニュートン〉にお任せ状態となっていたから、どのように仕上がるのかあまりイメージができていなかったのもあるが、実物を見た一同が思わず“おーっ!”と声を出してしまったほどの出来栄え。正直、製品化してほしいくらいカッコよくて嫉妬心さえ生まれてしまった(フルオーダーなのに3万6千円と思いのほか高くなかったのも好印象)。
「2本を並列に飾れるように。木枠で表面カバーはなし。あとはカセットの入れ替えをスムーズに行いたい」というコクブさんの要望を汲み取っただけでなく、木枠の各面で木目の柄が綺麗に繋がるよう継ぎ合わされていて、しかもカセットの入れ替えの際にケースに傷がついたりしないよう、出し入れ口の内側にウレタン素材を施す配慮までされていた。「壁に飾るのもいいけど、置物として楽しむのもいいよね」なんて話から、吊るしフックなどは用いないことに。後日壁掛けしたくなればいつでも金具を取り付けてくれるらしく、アフターケアもばっちり。
収集しているエフェメラ類のひとつとしてコクブさんが保持していた小さな写真も、額装することで驚くほど品良く見えるように。“雑に扱われがちなモノでも見せ方次第で受け取る価値が変わってくる”という点においては、ある意味、額装の重要性が最も感じられるものとなっていたように思う。
作品にぴたりと合った最高の額を手に入れて、自分だけの特別な存在にしてみたい! という〈POPEYE Web〉チーム3名の想いは見事、形になった。老舗額装店に足を運んだことでオーダーメイドのスーツを作っていくような感覚にもなれたし、さまざまな額装術があることも知れたし、身の回りにあるものも額装するだけで全然違ったように見えるということにも気付くことができた。次回(最終回)は、そんな額装の奥深さや素晴らしさを教えてくれた老舗額装店〈ニュートン〉の物語を探ることで、僕たちの額装を知る長い旅を締めくくりたい。
つづく
インフォメーション
額縁・額装店 newton
Official Website
http://newton-frames.com
Instagram
@newton_frames
@noie.cc
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