
ファッション
「理想の普段着シャツ」をオーダーで作ってみる。Vol.2
オーダーシャツ/製作現場編
2023年8月10日
photo: Keisuke Fukamizu
text: Toromatsu
edit: Kosuke Ide
お気に入りのシャツをベースに、さらなる「理想のシャツ」を作ってみようとオーダーシャツの専門店「山本ワイシャツ店」へと向かった〈POPEYE Web〉チーム。要望はすべて受諾され、あとは完成を待つだけとなったわけだが、製作工程がやっぱり気になる……。今回は特別に、どんな風にシャツができるのかを見させてもらえることに。
前回、僕たち4人がオーダーシャツのデザインソースとして持ち込んだシャツは、イギリス軍のミリタリーシャツ、70sの半袖プルオーバーシャツ、所有者不明の古着オーダーシャツ、60sのオープンカラーシャツの4種類。注文時は「デザインをそのままにもう少し袖を長くしたい」とか、「イニシャルを入れたい」などの要望を伝え、シャツ生地を選んでお店を後にした。それから待つこと一週間ほど、「注文していたシャツ生地が届いたから、そろそろ作り始めます」と店主の伊川孝次さんから連絡をいただいた。

3つの工程から、シャツ職人の仕事を垣間見る。
シャツ作りは主に「裁断・縫製・仕上げ」のパートに分かれるという。まず裁断だが、今回は僕たちが持ち込んだシャツの各部位の長さを測り、前身ごろ、後身ごろ、袖、カフス、襟、ヨーク、ポケットなどのパターン(洋裁の型紙)を作っていく。つまるところ、シャツを作るうえで必要となる各部の生地を用意することを指す。シャツ生地に型紙を乗せ、その輪郭に沿う形でカットしていくわけだが、このシーンが想像以上に新鮮だった。

昨今では生地を切る際にローラータイプのカッター(ピザをスライスする際に使うようなもの)が利用されることが多いらしいけど、伊川さんは丸包丁(布断ち包丁などいろんな呼称がある)と呼ばれる、布生地やレザーなどの切断に用いる包丁を使う。どちらのほうが良いというものでもないそうだが、伊川さんは「こっちの方が昔から使っていて、慣れているから」と言う。素早い手付きでザクザクと音を鳴らしつつ生地が切られていくさまは鮮やかで、何とも言えず美しい。

続いては縫製。裁断でそれぞれ出来上がった部位を縫い合わせていく。とにかく気の遠くなる作業なのかと思っていたのに予想外の展開。伊川さんがミシン台の前に腰掛け、シャツ生地を置くや否や、“ダダダダダダー!”と針が動いていき、あっと言う間に前身ごろと後ろ身ごろ、袖が繋がっていく。これを職人芸と言わずして何というか。襟の両面がズレないよう糊付けしたり、シャツによっては部分的にダブルステッチ(負担のかかる部分を補強するステッチが2本並んだ縫製)にしたりと、細部にもさまざまな配慮がなされている。


裁断、縫製が終わると、すでにパッと見はほぼ出来上がっているように映る。しかし仕上げでさらなる手仕事を要する。「この作業がちょっと面倒」と伊川さんも言葉を漏らしていた、ボタン付け。ボタンホールはミシンで作ることができるが、ボダン付けは機械には頼れない。そして『山本ワイシャツ店』のタグ、オリジナルの品質表示タグ、使用した生地メーカーのタグまで縫い付ける。オーダーによっては名前やイニシャルの手刺繍なんかも必要だ。これらすべてをやり終えると、最後にアイロンがけを行ない、ラッピングまでして完成、となる。


各工程を見させてもらって、完成を待たずしてすでに愛着が湧いてきた。受け取りは後日となったが、店を後にする前に伊川さんと少し話をしたら、オーダーシャツ一筋50年の技に加え、この仕事の喜びや難しさも知ることができた。
「やっぱりお客さんが満足して、喜んでくれるのが一番嬉しいですよね。ただ、最初からお客さんがイメージしているものが完璧に作れない場合もあって。作ってみたら、『ここが思っていたのと違った』とかいうこともあり得るんです。細かいことを言えばいくらでも言える世界ですからね。でも、2度、3度と繰り返しオーダーをいただいているうちに、好みも含めてお互いに色々とわかってきて、より理想に近いものができるようになるという面がある。じっくり付き合っていただけるとありがたいですね」

ときには、理不尽なことで気が滅入ることもあるだろう。既製服を作るほうがよっぽど楽かもしれないが、理想のシャツを求める僕たちのような人のために、できる限り要望に応えてくれる伊川さんは絶対にいてほしい職人だと思った。オーダーした4着のシャツがどんな風に仕上がったのかは、次回Vol.3で!
インフォメーション

山本ワイシャツ店
かつて目黒にあった親戚のシャツ店「山本ワイシャツ店」で修業し、独立。1974年に名を借りるかたちで、松陰神社通り商店街の現店舗にて「山本ワイシャツ店」を創業。以来、オーダーメイドシャツ一筋、お客さんのほとんどはリピーター。 ◎東京都世田谷区若林4-27-15 ☎03-3413-9304 営業時間:9:00~18:00 定休日:日
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