From Editors

“ 最高だな!” って、いつも言ってます。

NO.952

2026年7月8日

千葉県出身で、大学から東京で暮らしている自分にとって、湘南や横浜というのは“遠からず近からず”な存在で、思い出せば中学校の校外学習は鎌倉でした。大学に入ると慶應のSFCの友達ができたり、POPEYEの編集者になってからは辻堂に『湘南 蔦屋書店』ができたり、逗子で高木完さんがリリー・フランキーさんをゲストに招いてやっていたドーナツ盤だけを流すトークイベントに行ったり。

だんだんコアな付き合い方もするようになるものの、肝心の江ノ島や氷川丸には一度も入ったことがなかったりして、湘南・横浜の経験はすべて「点」でしかなかったのでした。だから、行き方も「あれ? 何線でどうやっていくんだっけ?」「高速走って行くんだったよね?」と曖昧で、その都度、調べるハメに。

この特集を1冊作って実感できているのは、ロケハンや取材を重ねるたびにその「点」が「線」になり、「面」になり、「体」になって、編集部で見本誌を手にしたときには「東京から南」のほうが自分の日々の一部になっている、という手応えでした。湘南や横浜にはいつでも遊びに行けて、横須賀や三浦も難なく行けるメンタル的な距離感。東京で暮らしながら、この感覚をこれからずっと持っていられる嬉しさよ。なんならいつか住みたいかも?

34ページ「“湘南のビーチ”って何だ?」は、まさに「点」だった海のイメージを繋げてくれた企画です。大好きな漫画『RIOT』の塚田ゆうたさんが、また広域のマップを細やかに仕上げてくれました。塚田さんとご一緒したのは「お久しぶりです、京都」特集の総扉以来。遊びに行きたいんだけどよくわからなかった湘南の海のことを、きちんとした輪郭を持って把握・理解するのにバッチリな仕上がりです。とても細かいけど。

36ページ「僕の好きな湘南」で対談をしてくれた〈UNDER COVER〉の高橋盾さんと〈nonnative〉の藤井隆行さんの取材。実は、今回の湘南の取材はこれが一発目でした。湘南のことを、高橋さんが「最高だな!」に尽きると言っていたのがブッ刺さっています。本が出来上がった今、思うのはやっぱり「最高だな!」ということ。確かに、これに尽きる。本当に最高な対談とオススメのリストを、ぜひ読んでいただきたい。

この号から生まれたゆるキャラ・ナンポーくんもぜひ愛でていただけますと嬉しいです。読者のみなさまを東京から南へ、案内します。イルカなのか、怪獣なのか、そのへんは東京湾を挟んで向かい合うチーバくんと同じく曖昧です。

ページを開くごとに、左下の端っこで、ナンポーくんが「東京から南」のエリアについてトリビアを披露しています。可愛がって読んでください。ナンポーくんは、デッカードに憧れて、京浜工業地帯のあたりに住んでたことがあるそうですよ。産業道路を走って南へ向かうと、映画『ブレードランナー』のヴァンゲリスの音楽と、CKBの『京浜狂走曲』が聞こえてきます。

これがナンポーくん。生まれも育ちも鎌倉ですが、東京と湘南・三浦半島・東京湾岸をグルグルして生きてきました。特集の隅っこで、呟いています。生みの親はイラストレーターのワタナベケンイチさん。

「第三京浜、って元首相の吉田茂がさ、大磯の自邸から国会に行きやすくするために作ったらしいよ」なんてまことしやかな噂をフックに、大磯を目指す(実際の歴史は違うのだけど)。旧吉田茂邸には一度、行ってみるといいなと思いました。そして、吉田が好きだったという『大磯 井上かまぼこ店』のさつま揚げ・はんぺん・かまぼこを忘れずにお土産に。最高です。

「東京から南へ」の行き方は「東京から南へ向かうルートにはいったい何があるというのですか?」というページで。途中下車・寄り道がまた、奥深い。産業道路を走っていて、ふいに出合ったのがクレーンゲームの森。袋麺とか、お菓子とか、“箱買い”ならぬ“箱落とし”しよう!

今号で地味に特筆すべきこと。それは、最近のPOPEYEは毎号いくつかの連載が休載していたけれど、ひとつも落ちずに掲載されていること。リリー・フランキーさんの連載「珍道中絵日記」も7年ぶりに原稿をいただきました。キミシコ……?

(担当編集・榎本健太)