ファッション

ラムダンが24時間しか存在しないTシャツを作ったよ!

1日1枚限定、60日間で60枚。

2026年7月2日

photo: Momo Nagashima
text: Neo Iida

 この夏、フランスの実業家でありクリエイターのラムダン・トゥアミさんの新たなプロジェクトが始まっている。その名も「24-HOUR PROPOSITION」。7月から8月末まで1日1デザインの限定Tシャツを発表し、24時間限定で発売しているのだ。

6月に行われたレセプション・パーティにて。いくつかのデザインを初披露。

 毎日ひとりのデザイナーによるTシャツが発表され、翌日には別のデザインへと切り替わる。受注生産のため期間中であれば売り切れはないが、一度販売を終えたTシャツが再び販売されることはない。次に誰の作品が登場するかも当日まで明かされない。パリと中目黒の『WSCS』店舗、そして公式オンラインショップで販売中だ。

 参加しているのは、イタリアのベルガモ拠点の〈STUDIO TEMP〉や、池ノ上のセレクトショップ『MIN-NANO』をはじめ、世界各地で活躍するデザインスタジオやグラフィックデザイナーたち。テーマである「山と自然」をそれぞれが異なる視点からグラフィックで表現し、ラムダンさんが立ち上げたパリのシルクスクリーン工房で刷り上げる。

 ラムダンさんといえば、1803年に調香師ジャン・ヴァンサン・ビュリーがパリで創業した香水ブランド〈Buly〉を現代に蘇らせたり、突然ガソリンスタンドを作ったり、パリにある自身のショップ『WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES』(以下『WSCS』)の日本1号店を中目黒に作ったりと、これまでに手がけたプロジェクトは数え切れない。思いついたらどんどん動くし、いつも冒険を続けている。「24時間しか存在しないTシャツ」という突飛なアイデアが生まれたのはなぜ? ラムダンさんに話を聞いてみよう。

―ー今回のプロジェクトは、どういうタイミングで思いついたんですか。

実は思いついたのは3年前なんです。ほら。(と、「2023年」の文字が入ったグラフィックTシャツを見せる)

――本当だ!

その頃はコラボレーションばかりが流行っていて、どれもやり尽くしたような感じだったんです。じゃあ僕はとんでもないヘンテコなことをやろうって。ヒントになったのは20年前に手がけた「Tiempo del Postino」というオペラのアートディレクションです。世界でも有名な現代美術家たちとのプロジェクトで、映像配信もアーカイヴもない。その場所で見なければもう二度と見れない作品でした。「その瞬間にしかないもの」というアイデアが強く印象に残っていて、改めてファッションというジャンルで「その時にその場所にいないと買えない」というプロジェクトを立ち上げてみようと思ったんです。実現までちょっと時間がかかってしまいましたけどね。

――面白い! でも、なぜTシャツだったんですか?

世界でいちばん売れているマーチャンダイズはTシャツだと思うんです。だから、Tシャツしかありませんでした。

――キャンパスみたいですもんね。実際、参加するデザイナーたちの反応はいかがでしたか?

みんな「何それ?」という反応でした(笑)。もちろんデザイン料はきちんと支払っていますよ。でも販売できるのは24時間だけ。もし僕が翌日もそのTシャツを販売したら、そのデザイナーは僕を訴えていい。そういう契約です。

――(笑)。1日だけのためのデザインなんて、多くのデザイナーが作ったことがないでしょうね。

はい。誰もやったことがありません。でも、ラグジュアリーを買うよりも、24時間しか咲かない花を手に入れることのほうがレアな体験だと僕は思います。
若い頃、街でマイケル・ジャクソンのコンサートTシャツを着ている人を見て「うわ、すごいな」と思ったことがあるんです。運が良ければ10年後に古着屋で偶然見つけることもあったけれど、それは本当に珍しいことでした。
僕が再現したかったのは、その「見つけられない」という感覚なんです。今は、誰かが着ている服が気になったら、写真を撮ってGoogleで画像検索すれば2秒で見つかるでしょう。でも調べて、探して、ようやく見つけるという感覚はなくなってしまった。すごく残念なことだと思う。だから、24時間しか存在しないTシャツを作ることで「買えなかった」「もう手に入らない」という気持ちを、もう一度みんなに味わってほしかったんです。

――「買う」だけじゃなくて「買えなかった」ときの体験まで組み込まれているんですね。

そうです。あと「買う」「売る」という行為はヒステリックになりやすい。「今買わないと、もう買えなくなる」。そういう熱狂をすこし茶化したかった。つまりこれは、資本主義における小さな革命なんです。

――カウンターの発想というか。

その通りです。このプロジェクトに皆さんがどう反応するのか、それを見るのが楽しみでもあります。

――毎日どんなデザインのTシャツが生まれるか楽しみです。それにしてもラムダンさん、こんな突飛なアイデア、どんなときに思いつくんですか?

いつもです(笑)。いつもこんなバカげたアイデアばかり考えています。だって人生は一度きりですから。僕は新しい体験をするのが好きなんです。自分には何ができるのか、その限界はどこなのか。常に挑戦し続けたいと思っています。

インフォメーション

RAMDANE TOUHAMI PRESENTS 「24-HOUR PROPOSITION PROJECT」

■取り扱い店舗
・『WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES』(東京・パリ)
・公式特設オンラインストア(wscs.jp/pages/24h-proposition

■期間
2026年7月1日〜8月31日

■販売方法
すべて受注販売。
発表から24時間のみ注文可能で、受付終了後の追加販売はなし。
注文から約2週間〜1カ月後に発送予定(生産状況により前後する場合も)。

■参加スタジオ、デザイナー
BUREAU BORSCHE(ビューロー・ボルシェ)、MIN-NANO(ミン・ナノ)、STUDIO TEMP(スタジオ・テンプ)、ZAK GROUP(ザック・グループ)、MAXIMAGE(マックスイメージ)、AREA OF WORK(エリア・オブ・ワーク)、HUBERTUS DESIGN(ヒュベルトゥス・デザイン)、SEBASTIAN STRAPPAZON(セバスティアン・ストラッパゾン)、NORM(ノルム)、EUROSTANDARD(ユーロスタンダード)、GILIAN CACIHN(ジリアン・カシャン)、DUAL ROOM(デュアル・ルーム)、FAYE&GINA(フェイ・アンド・ジーナ)、HARRIS BLONDMAN(ハリス・ブロンドマン)、PERMANENT FILES(パーマネント・ファイルズ)、ART RECHERCHE & INDUSTRIE(アート・ルシェルシュ・アンド・アンデュストリー)など


WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES

住所:東京都目黒区青葉台2-16-7
営業時間:12:00〜19:00
電話:03-6455-1847
定休日:月曜

プロフィール

ラムダン・トゥアミ

1974年、フランス・モントーバン生まれ。実業家、クリエイティブディレクター。15歳で事業を始め、パリのコンセプトストア『L’Épicerie』や総合美容薬局ブランド〈OFFICINE UNIVERSELLE BULY〉の再興など、既存の枠組みにとらわれないプロジェクトを数多く手掛ける。現在は自身のスタジオ〈Art Recherche & Industrie〉を拠点に、出版、印刷、デザイン、ホテル運営など多岐にわたって活動。2024年に『WORDS, SOUNDS, COLORS & SHAPES』をパリで創業し、翌年には中目黒に日本一号店をオープンした。

Instagram
https://www.instagram.com/ramdanetouhami/