TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】はたちになるとき
執筆:光嶌なづな
2026年5月26日
はたちになる瞬間って、みんな何をするんだろう。
わたしは0時ちょうどに、一瞬浮きました。
友達の家で。
翌日には“バースデーディズニー”を控えた、まさに夢にみた憧れのシチュエーション。
なのにわたしの内心は、はたちになるのが嫌で嫌で仕方がなかった。
誕生日なんて来なければいいと思っていた。
7月生まれって、少しだけ早い。その微妙な早さが、当時はやけに重たくて。
自分の中で決めていた目標を達成できないまま20歳を迎えることが、悔しくて仕方なかったんだと思う。
年齢だけが先に進んでいくような感覚だった。
そんな気持ちを抱えたままの、夢のバースデーディズニー。
胸にシールを貼ったわたしに、キャストさんたちは満面の笑みで「おめでとうございます!」と言ってくれる。
100%素直には受け取れないまま祝ってもらう。じゃあ剥がせばいいんですけどね。
その中で、ひとりのキャストさんが年齢を聞いてくれた。「はたちになりました」と答えると、
「わー!できること、たくさん増えますね!!」と、すごく素敵な笑顔で言ってくれた。
その一言に、とてつもなく救われたんです。
失うものばかりに目がいっていた自分が、少し恥ずかしくなった。
あのキャストさんに、もう一度会えたらいいなあ。
そんなはたちの記憶を思い出したのが、監督の村田夕奈(ゆな)ちゃんはじめ、
同年代のみんなで撮った『おとなになりたくなりますように』という短編映画。
その中のひとつが、誕生日当日のお話。
わたしは祝う側の役だった。
題名の「おとなになりたくなれますように」という言葉。
カメラが回り、それを間近で聞いたとき
「ああ、わたしもあの時こう言いたかったんだな」と思った。
ような気がしていたけど、久しぶりに作品を見返したら、その言葉は文字で出てくるだけで、
現場で実際に聞いたセリフではなかった。
撮り終わったあと、当時実際に20歳だった監督のゆなちゃんが涙を流していた。
はたちという瞬間をこうして言語化して、形にまで残しているゆなちゃんがとてもかっこよかった。
ずっとは続かない、あの時のみんなでしか出せない空気感。
完璧ではなかったとしても、それがよかったんです。
20歳になるときは大人になるのが怖くて、
21歳になるときは「はたち」と言えなくなるのが寂しくて、
22歳は可愛い数字だから少し許せて、
23歳になるときには社会的にも完全に大人なのがまた怖くて。
次はどうだろう。
いくつになるとき、子どもの頃みたいに「やったー!」とロウソクを消せるのか。
もう大人だけど、おとなになりたくなれますように。
プロフィール
光嶌なづな
みつしま・なづな|2002年大阪府出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業。在学中から俳優業をスタートし、ドラマ、舞台、CMなどマイペースに出演中。
2025年に放送されたNHK夜ドラ「ひらやすみ」で横山あかり役をオーデイションで射止め話題になった。
現在、Tenki.jpのブランドムービー「空を見上げる君が好き」編に美雨(ミウ)役で出演中のほか、出演映画「おとなになりたくなれますように」(村田夕奈監督)が5月25日〜28日にテアトル新宿で公開される。また紀伊国屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』(作・演出・美術:小沢道成)に出演が決定。2026年7月3日(金)~7月19日(日) 紀伊國屋ホールにて上演される。好きなことは絵を描くこと。
official Website
https://blue-label.jp/
インフォメーション
田辺・弁慶映画祭セレクション2026
村田夕奈監督『おとなになりたくなれますように』/併映作品『自画自讃』
テアトル新宿 5/25(月)〜5/28(木)
Official Website
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/movie/1315400.html