TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】アメリカのファミレス
執筆:アンダーソン夏代
2024年10月5日
数年に一度、なんとなく日本が恋しくなると行きたくなるお店があります。それがアメリカのファミリーレストラン、Bob Evans(ボブ・エヴァンス) です。
平日は比較的空いているので待つことはほとんどありませんが、土曜日の午前中や日曜の午後は大混雑で、受付で名前と人数をリストに記入してもらったあとはベンチで順番を待ちます。
順番が来ると、担当の方がブースとテーブル席(少人数の場合はカウンター席も)のどちらがいいか確認してくれるので、希望の席を伝えて案内してもらいます。
席に着くと、カラー写真たっぷりのメニューを渡されます。 床にはカーペットが敷き詰められ、作りがなんとなく90年代の日本のファミレスに似ており、非常に落ち着くのです(似ていると書きましたが実際は逆で、日本のファミレスがアメリカスタイルを取り入れています)。
メインメニューを決める前に飲み物をどうするか聞かれるので、水か興味を引かれた飲み物を注文します。飲み物はお代わり無料のホットコーヒーやアイスティー、ソーダ類があり、ストロベリーレモネードやピーチアイスティーなどの冷たい飲み物は、日本でも以前流行ったメイソンジャーに入って出てきます。ドリンクバーはありません。
メニューは、ホットケーキ(ボブ・エバンスでは、パンケーキをこう呼びます)、オムレツ、一口大のじゃがいもを揚げ焼きにしたホームフライといったブレックファスト、サブサンドイッチやスープ、ボリュームたっぷりのハンバーガー、パスタなどのランチ、アメリカの家庭的な料理をメインとするディナーが、営業時間内ならいつでも食べられます。
品揃えは基本的にアメリカ料理のみで、日本のファミレスのような和食やアジア料理は皆無です。
メインを注文すると付いてくるお代わり無料のパンは、ディナーロールかビスケット、または季節のクイックブレッドの中から選べます。クイックブレッドは、パウンドケーキより気持ち甘さが控えめのバナナナッツブレッドが定番で、期間限定でスパイス入りのパンプキンブレッドやブルーベリーブレッドなどもあり、日本人にはデザート扱いで十分な甘さがあります。これらはブレックファストメニューやサラダ、パスタなどには付いてきません。
ディナーメニューの中には、アメリカ在住でないとなかなか食べられない、感謝祭やクリスマスの代表的料理である七面鳥のローストプレート、Turkey & Dressing(ターキー&ドレッシング)が通年あり、レギュラーサイズと、小さめサイズが選べます。注文すると、セロリや玉ねぎを香りが出るまで炒めた香味野菜とクルトン、チキンストック(鶏だし)を合わせてオーブンで焼いたブレッド&セロリドレッシングと呼ぶものの上に、スライスしたローストターキーが数切れ乗っており、その上からは焼き汁で作ったグレービーがかかっています。その横にはマッシュドポテトが添えてあり、こちらにも同じグレービーがかかっています。生のクランベリーを粗く刻んで甘味を付けたクランベリーレリッシュも添えられているので、季節関係なくホリデーシーズンの気分が味わえます。副菜が二品選べるので、柔らかいサヤインゲンが苦手でなければ、一品はハムと玉ねぎのダシで煮込んだグリーンビーンズがお勧めです。前述の通り、この料理にはマッシュドポテトが最初から付いてくるので、それは選ぶのを止めましょう。うっかり頼んでしまいそうになっても、恐らく係りの方が念のためにと確認してくれると思います。
他にも、牛肉に衣をまぶして揚げ、黒コショウ多めのホワイトソースをかけたCountry Fried Steak(カントリー・フライド・ステーク)、一番人気の牛塊肉を柔らかくなるまで蒸し焼きにしたブラウングレービーたっぷりのPot Roast(ポット・ロースト)、レモンピール入りのシーズニングソルトを振りかけて焼いた骨無しカレイのフィレ、あっさり行きたい時は、野菜たっぷりのChcken-N-Noodle Soup(チキン・ヌードル・スープ)などもあります。
デザートには数種類のパイやミニサイズのサンデーなども揃い、思いのほか充実しています。
時間帯や曜日によるのかもしれませんが、アメリカのファミレスでは、日本のように学校帰りの学生さんが集まっていたり、ご婦人グループがおしゃべりを楽しむ風景は、在米20年になりますが今のところ見たことはありません。小さいお子さん連れの三世代家族、中高年のご夫婦、男性のお一人客などをよく見かけ、ごはんが終わったらさっと退席する印象が強いです。
ごく普通のアメリカ料理を食べているのに、周りの人々が英語を話していることに頭が混乱するくらい雰囲気は日本のファミレスで、店を出る頃にはプチ一時帰国をしたような気分になり、とてもリフレッシュされるのでした。
これで4週に渡って続いた私の連載は終了です。アメリカの食にまつわる話をお楽しみいただけたでしょうか。またいつか、どこかでお目にかかれることを楽しみにしています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
プロフィール
アンダーソン夏代
あんだーそん・なつよ|アメリカ南部料理研究家。1974年、福岡県福岡市生まれ。フロリダ州ジャクソンビル在住。ノースキャロライナ州出身の夫との結婚を機にアメリカ南部料理に興味を持ち、研究を始める。
著書に『アメリカ南部の家庭料理』『アメリカン・アペタイザー』(ともにアノニマ・スタジオ/ グルマン世界料理本大賞準グランプリ)、『アメリカ南部の野菜料理』(誠文堂新光社/グルマン世界料理本大賞グランプリ/Gourmand BEST OF THE BEST 25)がある。
『台所のメアリー・ポピンズ』(アノニマ・スタジオ)では、レシピ訳を担当。
新刊は初のエッセイ『アメリカ南部の台所から』(アノニマ・スタジオ)。
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