カルチャー

肌寒い秋の夜長にミントティーでも飲みながら読みたい3冊。

10月はこんな本を読もうかな。

2024年10月1日

text: Keisuke Kagiwada

『サニー』
コリン・オサリバン (著)  堤朝子(訳)

日本を舞台に、在日外国人スージーと、行方不明となった夫が遺した夫が最先端の家事ロボットをめぐるダークスリラー。ラシダ・ジョーンズや西島秀俊なんかが出演したAppleTV+ドラマの記憶も新しいが、それに原作があったとは。物語もさることながら、青森で英語教師をしながら英語で創作をするアイルランド人、という著者のプロフィールも興味深い。¥1,280/ハーパーコリンズ・ジャパン

『老いぼれを燃やせ』
マーガレット・アトウッド (著) 鴻巣友季子(訳)

ディストピア小説の傑作『侍女の物語』で知られる、アトウッドの短編集。タイトルが強烈すぎる表題作では、老人ホームに火をつけて回る集団と対峙する老女を描いているのだが、「老人の延命治療に社会保障費を使うべからず」「高齢者は集団自決すべし」といった議論が定期的に巻き起こる現代日本で読むと、リアリティしかない。¥3,080/早川書房

『クチから出まかせ 菊地成孔のディープリラックス映画批評』
菊地成孔 (著)

菊地さんが『UMO』に14年間連載している、語り下ろし映画時評が1冊になった。それにしても、「クチから出まかせ」とは言い得て妙。もちろん、確かに語り口は軽妙洒脱だが、その「出まかせ」がセンスや知識に裏打ちされているのは言うまでもない。その意味でこの「出まかせ」は、映画と菊地さんがその都度繰り広げた、ジャムセッションの別名かも。個人的には、菊地さんが1冊丸ごとイーストウッドについてだけ語った本を読んでみたくなった。¥2,200/集英社