TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】世界で一番好きな国インド①

執筆:伊武雅刀

2024年6月24日

伊武雅刀


photo: Tatsuro Sekiguchi(portrait)
photo & text: Masatoh Ibu
edit: Yukako Kazuno

 初めてインドに行ったのは、20代の終わり頃、新婚旅行に選んだのがインドだった。日本を離れて異国の地に足を踏み入れた初めての国。その時のカルチャーショックは今でも忘れられない。朝目覚めて安宿の窓を開けるとサリーを纏った女性たちの群れ、褐色の肌をした夥しい数の男たちが歩いている。ターバンを頭に巻いている者もいる。人間達に混じって牛も歩いている。生まれてから見たことのない混沌とした異国の風景がスローモーションで目の前に蠢いていて圧倒された。

 何処へ行っても見たことも無い物の連続であった。この国は面白い。それが今日まで変わる事ないインドという国の印象である。それ以来、行く度にインドに魅了され続けている。行く前からワクワクする。インドは広い。人口は世界一になった。14億4000万人。まだまだ発展する余地がある。

 インドという国は好き嫌いがあるようだ。二度と行きたくないと言う人がいる。汚い、雑然としていて鬱陶しい。路上でゴロゴロ人が寝ている。物乞いがしつっこい。食べ物に蠅が集っている。などなど。そんな瑣末な理由でインドを嫌っているとしたら今日のインドは昔とはまるで違っているぜと言いたい。人口の0.5%が富裕層である。720万人もの金持ちが住む国である。マハラジャの住む宮殿ホテルである5つ星ホテルの殆どの客は、何とインド人が占めている。マーケットも豪華な作りの場所がどんどん増えている。

 今回は旅の予算を大幅に増やして、出来るだけ不愉快な目に合わない様に全行程に日本語が出来るガイドを手配し、運転手付きの車をチャーターしてバカンス気分を何処まで味わえるかというプランを立ててみた。たまにボーっと突っ立っているとバクシーシ(金くれ)のやからが寄ってきたり、バックパッカーが多い安宿街を歩いていて路上生活者にズボンの裾を掴まれたりもしたが、そこはインドである。今回のような旅も正解だった。豪華に過ごそうと思えばそれに応えてくれる国になった。インド旅行記のブログなど見ると、未だに危険な目に遭ったとか騙されたとか、あまり良いイメージで記載されたものは少ない。バックパッカーやヒッピー達の姿も最近見かけなくなりつつある。いずれ行きたい国ランキングのトップはヨーロッパやハワイではなくインドになるかも知れない。

 映画だって着実にインド映画は世界中で喝采を浴びている。今現在では南インドで製作される映画がムンバイで作られるボリウッド映画をしのいでいる。近い将来ハリウッド映画を超えてインド映画が世界中で支持されていく予感がする。今回も驚きがあった。コロナも治まりつつあるのに中国人観光客は1人も受け入れていないと言う。電子タバコも禁止されている。潔いね。この割り切り方が羨ましい。やはり面白い国です。お釈迦さまの生まれた国がますます発展する事を期待しています。今度はいつ行けるかな。ワクワク。

プロフィール

伊武雅刀

いぶ・まさとう | 俳優。1949年東京生まれ。ラジオを舞台にユニット「スネークマンショー」にて活躍し、放送・音楽界に大きな影響を与える。アニメ『宇宙戦艦ヤマト』にてデスラー総統の声優を担当。映画『太陽の帝国』テレビドラマ『白い巨塔』など出演作多数。待機作に、2024年7月よりSF漫画を実写ドラマ化した『七夕の国』(ディズニープラス)、2025年1月スタート「雲霧仁左衛門ファイナル」(NHKBS)がある。

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