カルチャー

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.20

写真・文/久山宗成 a.k.a. Donald

2023年10月31日

photo & text: Muneaki Kuyama a.k.a. Donald
edit: Yukako Kazuno

連載第20回目の今回はお久しぶりの企画「隠れGEEK WATCHマニアを探せ!」です。今回の隠れGEEK WATCHマニアはB-BOY彫刻家の小畑多丘さん。所沢のアトリエを訪問しました。

アーティストのアトリエにしては驚くほどミニマルでクリーン。それがTAKU君のアトリエにお邪魔した時の第一印象。整理された道具類と木材などの材料、壁にかけられた自身の作品以外はほとんど余計な物は見当たらない。

その理由を彼に尋ねると「環境や洋服、身につける物などは手に入れる前に、”所有する理由を自分自身に言えることができる”物を手に入れるようにしています。洋服や腕時計を選ぶ時も、流行りのブランドだから、という理由で手に入れたことはないですよ」

今回はそんなTAKU君のもとに”縁”でやって来たGEEK WATCHたちを紹介致します。YouTubeのGEEK WATCH CHANNELもぜひご覧ください。

先ず紹介するのは、シュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガー関連のコレクション。5年ほど前、僕のお店にふらりとTAKU君がやって来た時のこと。TAKU君は若い頃シュワちゃん主演映画が大好きで、吹き替えを担当していた玄田哲章のものまねが大好きだったらしい。そんな他愛もない話をしていた時に彼が閃いた顔をして「そうだ! 『ラスト・アクション・ヒーロー』でシュワちゃんが着けていた腕時計を探してくれませんか?」と依頼されたのが、ことの始まりだった。

TAKU君から渡された映画のキャプチャー写真。画像を見るとすぐに〈TIMEX〉のIronmanだと分かった。これはかなりの定番モデルだが、劇中で使われたていたのは〈TIMEX〉の専売特許のライト、インディグロが搭載される以前の豆電球モデル。1986年発売の初期モデルは珍しく、国内では入手できず海外で探し出してゲット。無事に到着してミッションクリアとなるはずが…。腕時計をTAKU君に渡すと、「非常に言い出しにくいのですが…実は…この腕時計は雑魚キャラがしている腕時計でした…」とTAKU君。

『ラスト・アクション・ヒーロー』でシュワちゃんではなく雑魚キャラがしていた〈TIMEX〉のIronman。右が劇中で使われていたモデル。左が復刻版。

「これが実際にシュワちゃんが劇中でしていた時計でした」と新たな写真をもらうが、なんてマニアックなモデル…。〈Casio〉のモデルAD-520、通称「smiley」。アナログとデジタルを搭載したダイバーズウォッチで、こちらも国内では入手できず、海外から入手し今度こそ晴れてミッションクリア。記念にTAKU君になりきりシュワちゃんをしてもらい記念撮影したのがこちらの写真。

ああでもない、こうでもない…。100枚以上撮影したが、アングルや表情などが納得出来ず日も暮れかけて諦めかけたその瞬間….。TAKU君にシュワちゃんが降臨した(笑)。

シュワちゃんが映画『コマンドー』『プレデター』で着用した〈SEIKO〉Prospex(Ref.H558-5009)通称「ツナ缶」。47mmの大ぶりケースが目を惹く一本。

次に紹介するのは頂き物系の腕時計。左からアーティストのエリック・ヘイズ氏から頂いたエリック・ヘイズモデルのG-SHOCK。ミュージシャンのShing02氏から贈られたオリジナル腕時計。ターンテーブルを模したデザイン。一番右は高校の先輩でもある〈FACETASM〉のデザイナー落合宏理氏から頂いたFACETASM×G-SHOCK。

最後に紹介するのはなんと! 今年の春にオーダーが開始されたTaku Obataka×G-SHOCK

自らもB-BOYとして活躍した経験を活かし、B-BOYの躍動感、 重力などを取り入れた動きのある作品をバンドや文字板に落とし込んでおり、 一見シンプルな中にもこだわりが詰まっています。ベースモデルはキアヌ・リーブスが1994年公開の映画『SPEED』で装着してG-SHOCK人気の起爆剤になったモデル「DW-5600E」(右)。デザインではなく文字をアレンジしたTAKU君らしいアイデア。

左がTAKU君モデル。右がオリジナルモデル。パッと見わからないが、良く見ると文字がアレンジされています。

WATER 20BAR RESIST→EVERYTHING KEEPS MOVING

ELECTRO LUMINESCENT BACK→THERE IS NO BECAUSE THERE IS

ALARM→CARVING

CHRONO→MODELING

8角形内のSHOCK RESIST→6角形のBUTTAIドローイング

しかも! ホワイト、マットスケルトン、ブラックの3種類から、バンド、フェイス、ベゼル、遊環を自分好みにカスタマイズできるとのこと。

来年はアメリカにてエキシビションを開催予定のTAKU君。世界に羽ばたいた暁には、世界三大複雑機構の一つで、重力と姿勢の影響を受けにくいトゥールビヨン機構腕時計を作る独立時計師とコラボレーションしてくれる日もそんなに遠くないかもしれません。

ゲストプロフィール

小畑多丘

おばた・たく | 彫刻家。1980年埼玉県生まれ。 2006年東京藝術大学美術学部彫刻学科卒業。2008年同大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。「B-BOY(ブレイクダンサー)」の木彫による人体と衣服の関係性や、B-BOYと彫刻を端緒に生まれる空間、動き、 重力を追求、彫刻以外のメディアでも精力的に表現し続けている。

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https://www.instagram.com/takuobata/

Twitter
https://twitter.com/TakuSpeFAD

プロフィール

ドナルド魔苦怒奈流怒

久山宗成 a.k.a. Donald

くやま・むねあき | 改造活動家、企画編集者、GEEK WATCH偏愛家。ワタリウム美術館のミュージアムショップ地下中二階にて、2014年より改造見世物小屋『+R.I.P. STORE』を営む。様々なマテリアルや手法を組み合わせてジュエリー、腕時計、プロダクト、舞台美術などを制作している。趣味的に始めてどハマりしたGEEK WATCHのコレクションは今や700本以上。現在『GEEK WATCH PEDIA』なる本を編集中。 

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