「時間足りていましたか? 堀内さん。」【後編】
「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」レポート&有山達也さんインタビュー。
2025年2月26日
photo: Wataru Kitao
text: Ryoma Uchida
デザイナー、アートディレクター、絵本作家の堀内誠一さん。『BRUTUS』、『POPEYE』など雑誌のロゴマーク、『anan』においては創刊時のコンセプト作りやアートディレクションを手がけ、ヴィジュアル雑誌の黄金時代を築いた。雑誌のみならず、『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)をはじめとした絵本など、堀内さんの仕事は多岐に渡る。その膨大な創作活動の源泉から現在地までを紐解く展覧会が立川の『PLAY! MUSEUM』にて開催中だ。本展は、「FASHION」「FANTASY」「FUTURE」という三つの「F」を頭文字としたセクションで構成されており、それぞれの側面から「堀内誠一」に迫ることができる。
なるべく“避けていた”堀内さん。
今回は「FASHION」の展示構成を担当したアートディレクター・有山達也さんにお話を伺った。マガジンハウスでは雑誌『ku:nel』のアートディレクションを担当していた有山さんだが、あえて堀内さんの仕事を知ることを“避けていた”という。
「僕はグラフィックデザイナーの中垣信夫さんの元で仕事をスタートし、雑誌とは縁がない人生だと思っていたんです。堀内さんも“絵の人”という印象でした。『ku:nel』で仕事をするようになって、ようやく堀内さんに対する認識が変わっていったのですが、積極的に知ろうとは思いませんでした。同じアートディレクターという仕事において比べられることが怖かったんでしょうね。だからこそ、本展で構成を担当することになって、“堀内さんを避けては通れないぞ”というような感覚になったんです。
『堀内さん』(1997年/堀内事務所)という分厚い本を読み『anan』創刊号から49号全ページを読み解いていきました。だんだんと人となりが立体的に立ち上がってきて、仕事量もですが、相当な天才ぶりと、あらゆるものに精通した博識ぶりが伝わってきました。『そんなことも知らないのね、馬鹿ね』とよく言っていたそうなのですが、それが僕にも向けられるようで、また遠ざけたくなりました。当時、周りの編集者も圧倒されていたんじゃないかな。僕が堀内さんを超えられたのは年齢だけかな、なんて思ってしまいます」
そんな堀内誠一さんの人物像に迫るうち、現在の雑誌の作り方と違う面も見えてきたそうだ。
「堀内さんがどこまでどのように誌面に関わっていたか詳細までは分かりかねる部分もあるのですが、自分が雑誌を作る際の風景にも置き換えて想像を膨らませました。当時、隔週で出版していた『anan』で、アートディレクターでありながら海外取材もたくさん行って、レイアウトも考えて、どのような進行で制作していたんだろうと。
木滑良久さんは『編集長よりアートディレクターの方が偉い』と言っていたと聞きました。マガジンハウスの社風が元々はそういう雰囲気だったのも、きっと堀内さんがいたからじゃないかと思います。明日のお金をどうするかよりも大切にしていたアートディレクションがあったんじゃないかと」
堀内さん、時間足りていましたか?
そんな堀内さんの姿勢、作り上げた世界観を空間で再現した本展。「FASHION」では創刊から49号まで、堀内さんが携わった約2年間分の『anan』にフォーカスされた展示が広がる。
「『FASHION』の展示を鑑賞していただくにあたって、ぜひ一つ一つの記事をじっくり見ていただきたいなと思います。絵としても面白いですが、誌面が連なったときの驚き、50年前の空気を感じてもらえたら十分です。あのおおらかな表現が、なかなか今に受け継いでいけてない。マーケティングじゃ見えてこない独自の面白さ。紙にしかできない表現があるんですよね」
雑誌作り、ひいてはモノづくりの姿勢から、堀内さんについて「掴みどころのない人」と有山さん。
「展覧会を見ると、堀内さんは色んなことをやっていて、そのすべてが凄いとわかる。夜遅くまで仕事していただろうし、おしゃれにも余念がないし、それでいて家族もいて、どんな生活をして、どんなことを日々考えていたのか気になってしまいます。同業者としては、量もクオリティもすごい人が一体どういう時間のかけ方をしていたのか、『時間足りていましたか? 堀内さん』って。そう思わせる魅力がありますね」
「生きる喜び」。これは詩人の谷川俊太郎さんが堀内さんの残したものについて語った言葉だ。堀内さんが雑誌や絵本をはじめとする膨大な仕事を通じて表現してきた、この世の中の美しさや喜び。三つの展示を通じて、宝物のようなきらめく仕事たちと、ぜひ出会って、刺激を感じてみてほしい。
インフォメーション

「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」
会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3 棟 2F)
会期:2025年1月22日(水)〜4月6日(日)
休館日:2025年2月16日(日)
開館時間:10:00〜17:00(土日祝は18:00まで、入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般 1800円、大学生 1200円、高校生 1000円、中・小学生 600円
【立川割】一般 1200円、大学生 700円、高校生 600円、中・小学生 400円
※未就学児無料
※当日券で入場可能。土日祝および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)を販売。
Official Website
https://play2020.jp/article/seiichi_horiuchi/
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