カルチャー

ピーター・バラカンは『お熱いのがお好き』のとにかく洒落た会話を楽しんだ。

今日はこんな映画を観ようかな。vol.15

2026年4月2日

illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada

毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、ブロードキャスターとして良質な音楽を数々紹介してきたピーター・バラカンさん。紹介してくれたのは、古典的ハリウッド映画の名作『お熱いのがお好き』だ。


今日の映画
『お熱いのがお好き』(ビリー・ワイルダー監督、1959年)

ベース奏者のジェリーとサックス奏者のジョーは、職場の闇酒場が警察に検挙された上、ギャングの抗争に巻き込まれ殺人現場を目撃してしまい追われる身に。なんとか女性ばかりの旅の楽団に女装してもぐり込む2人は、楽団のシュガーに2人とも惚れてしまう。


『お熱いのがお好き』は、1959年のアメリカ映画だから、もう60年以上前の作品ですが、今観ても古びないというか、魅力を感じます。

 僕が子供の頃のイギリスでは、クリスマスの時期によくテレビでやっていたんですよ。それで初めて観たんじゃないかな。

 禁酒法時代のシカゴで、ギャングの抗争を目撃してしまったジャズ・ミュージシャン演じるトーニー・カーティスとジャック・レモンが、身を隠すために、女性だけのジャズ・バンドに女装して入団するというコメディです。そのバンドのメンバーの一人がマリリン・モンロー。他にもいろんな作品に出ているけど、ぼくはこの映画の彼女が好きです。劇中で彼女が歌う「I’m Thru with Love」というバラードもすごくいい。ちなみに、日本未公開ですが、『The Girls in the Band』というドキュメンタリーによると、当時から実際にこういう女性だけのジャズ・バンドは存在していたみたいですね。

 そして、監督はビリー・ワイルダー。僕は昔から、この人の作るものがとにかく大好きなんです。『失われた週末』『アパートの鍵貸します』……。いろんなタイプの作品がありますが、彼は監督の他に脚本も自分で書いていました。ドイツ語が母語なのに英語で書いたその脚本はめちゃくちゃ洒落ています。

『お熱いのがお好き』でいえば、トーニー・カーティスとジャック・レモンのちょっとしたやりとりなんか、英語で観てるととにかく笑っちゃうんですよ。しかも、それがただおかしいってだけじゃなくて、よく練られた脚本の面白さが感じられる。詳しくはいいませんが、ラストなんて多様性の時代を予見するようなところもあって、今の若い人が観るとまた違う発見もあるかもしれません。

 とにかく、娯楽に徹した往年のハリウッド映画として、僕がこれほど楽しい映画は他にありません。こういうクラシック映画を、若い人にもぜひ観てもらいたいですね。

語ってくれた人

ピーター・バラカンは『お熱いのがお好き』のとにかく洒落た会話を楽しんだ。

ピーター・バラカン

1951年、ロンドン生まれ。ブロードキャスターとして「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンドサンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)などのラジオ番組を担当。著書に『Taking Stock どうしても手放せない21世紀の愛聴盤』『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』『わが青春のサウンドトラック』など。

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