TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#1】漫才衣装の革靴
執筆:零士(カナメストーン)
2026年3月11日
10年くらい前だっただろうか。母と妹と三人で東京で遊ぶ日があった。何度かそうやって東京で遊ぶ日があった。その日はなにをして遊んだんだっけ。原宿のカラオケ屋さんに行ったことは覚えてる。
「なんで原宿来てカラオケ行くんだよ!(笑)」
とツッコミながら行った割にはめちゃくちゃ楽しんで帰った。サザン歌ったりした。
カラオケ屋さんを出てこれからどうするか? となったので、
「『CASSIDY』に行ってもいい?」
と発言してみたところもちろんOKが出て三人で行くことになった。
『CASSIDY』。オレがずっと通わせてもらっていた原宿の洋服のお店。
そのとき漫才衣装用の靴を探しており、ネットで見て気になる革靴があったのだ。
『CASSIDY』に入るなり、すぐその靴が目に入った。カッコ良すぎて試し履きをする前からもう買うことを決めていた気がする。もちろんリボ払いで買った。6万円くらいだったかな。
「この靴で『M-1』勝つわ」
「M-1」というワードを言って気持ちを昂らせ、高い買い物をした罪悪感をごまかしたりした。
そしてその日からM-1グランプリ決勝に行くまで漫才のときは必ずその革靴を履いた。
年々愛着が湧いていった。履くたびにあの日の楽しかったカラオケを思い出すし、大好きな『CASSIDY』も思い出す。
罪悪感を消すために適当に言った「この靴で『M-1』勝つわ」という言葉もなぜだかずっと忘れなかったし、時間が経つにつれて本当に自分を昂らせる言葉になっていった。そういう靴になっていった。
こないだ漫才衣装のまま海に飛び込むというお仕事をした。もちろんあの革靴を履いたまま。
元々ボロボロになってたし、びしょ濡れになったし、靴を新しいものにすることにした。
オレは泳げないから海に飛び込むのはかなりビビったけど、あの靴が飛び込ませてくれた気もする♩
最後までカッコ良すぎる靴だった。
プロフィール
零士
れいじ|1986年、茨城県生まれ。2009年に中学校時代からの親友・山口誠とNSC東京校に入学し、2010年カナメストーンを結成。2017年よりマセキ芸能社所属。2025年、結成15年のラストイヤーにM-1グランプリ2025の敗者復活戦を勝ち上がり、初の決勝進出を果たす。オレンジの漫才衣装は『原宿CASSIDY』で購入した〈サウスウィック〉の紺のブレザーをベースに、『洋服の並木』で仕立てたもの(『原宿CASSIDY』は2026年1月に惜しまれつつ閉店)。また今回のエピソードの革靴は『CASSIDY HOME GROWN』で購入したものだそう。Podcast「カナメストーンのカナメちゃん村」(毎週土曜配信)、YouTubeチャンネル「しゃれこめカナメストーン」配信中。
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