カルチャー
文化の秋を満喫するために観たい3作。
10月はこんな映画を観ようかな。
2025年10月1日
text: Keisuke Kagiwada
『ジュリーは沈黙したままで』
レオナルド・バン・デイル(監)
ベルギーのテニスクラブに属する15歳のジュリーは、天才プレイヤーとして練習に打ち込む日々を送っている。コーチが指導停止となったのは、そんなある日のこと。クラブメイトたちが動揺する中、沈黙を貫くジュリーを、被写界深度の浅い(要するに、iPhoneのポートレートモードのように前景にピントを合わせ、後景がボケた)カメラは、フィックスで静かに捉え続ける。だからこそ、彼女が何かを決意した瞬間、突如として手持ちになったカメラは、彼女の後ろ姿を追いかけ、そのままピン送りが間に合わないほど荒々しく顔ににじり寄るシーンは忘れがたい。それが予告するように、最後は異様なボケ世界へと突入し、彼女の孤独を際立たせるだろう。お見事! 10月3日より公開。
『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』
マイク・リー(監)
この気持ちを、何と表現したらいいのだろう。本作で観客が主として目にするのは、初老の黒人女性パンジーが、誰かれ構わずキレ散らかす姿だ。「全てを終わらせたい」と言いながら、まるで死を恐れているかのごとく病院をはしごする彼女は、家族だけに留まらずいく先々で出会う赤の他人にまで当たり散らす。コメディならまだしも、かなりシリアスな作品なのだから、観ているこちらは気まずさしかない。にもかかわらず、本作から目が離せないのはなぜだろう。彼女のことは、まるで好きになれない。「実はいい人でした」もないのだから、救いがない。唯一救いがあるとすれば、彼女の妹が囁く「理解はできないけど、愛してる」という言葉だけだ。そんな本作を観た後、心に萌しこのた気持ちを何と表現すればよいのか。今もなお、わからないままだ。10月24日より公開。
『グランドツアー』
ミゲル・ゴメス(監)
20世紀初頭を舞台に描かれるのは、ミャンマー、タイ、日本などなど東アジアをまたにかけた、大英帝国の公務員であるエドワードと彼を追いかける婚約者モリーの壮大なイタチごっこだ。しかし、フィクションとドキュメンタリーの境界を自在に行き来するゴメス監督は、モノクロで紡がれる重厚なドラマパートの合間合間に、現在の各国の風景をときにカラーでこともなげに挿入してみせる。中には日本を撮影したものもあり、例えば大阪の北新地にあるうどん屋「つるつる庵」が登場するだろう。そこだけ切り取れば、外国人観光客がいかにも好みそうな風景集だと言えるかもしれない。しかし、時空を越えたドラマパートが重なり合うことで、観る者はどこでもない場所へと誘なわれる。その奇妙な心地よさは、映画ならではの体験と言えるかもしれない。10月10日より公開。
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