ファッション

“ダイジェスト編”これまで集めたスタジャンを振り返ってみよう! Vol.19

オールドDCスタジャンクラブ

photo: Wataru Kitao
text: Fuya Uto
edit: Shugo Okamune

2024年4月14日

 テレビディレクター岡宗秀吾さんの一声で生まれた、’80年代DCブランドブーム期に作られたスタジャンを掘り下げていく、オールドDCスタジャンクラブ。第19回はダイジェスト編! 前回参加していただいた宇野さんへお披露も兼ね、これまで救出してきた中でも特に思い入れのあるものを振り返ってみました。メンバーは隊長の岡宗さん、編集部のミヤモトとノムラ、ライターのフウヤの計5人。まずは特別動画からチェックしてみてください!

今回ピックアップしたのは、この7着。

 フロント、バック、袖すべてにワッペンや刺繍が盛り込まれた“フルデコ”仕様で、シニールひとつ取ってみても改めて昭和のノリが凄まじい。袖にはベースボール由来のものが散りばめられているにも関わらず、バックにはアイスホッケーの名門ニューヨーク・レンジャースのロゴらしきものがあったり。規制の多い現代ではツッコまれそうだけど、スポーツものだったら入れちゃえ! 的な勢いが今見ると新鮮。ちなみに宇野さんも「〈パーソンズ〉は青春時代の一枚だった」というくらい時代を築いた王道ブランドで、これに似たカラシ色のボディの1着を愛用していたそう。

 赤と黒のカラーリングがアメカジライクではあるけれど、バックの主役はファミレスやJリーグチームにいそうなオリジナルキャラクターと、どことなく“日本らしさ”も香る珍品。ただ、ワッペンやチェーンステッチの下地にフェルトが敷かれていたり、リブのデザインが凝っていたりと、いわゆるヴィンテージものに見られるポイントを忠実に再現しているのが見てとれる。これぞDCスタジャンの醍醐味だ。隊長の岡宗さんも発掘した時に思わず「なんのキャラやねん!」とツッコミを入れてしまったらしいが、見れば見るほど味わい深いスルメのような1着だ。

 デザイナーズ&キャラクターがDCブランドの本家。しかし、企業がスタジャンブームに乗っかり自社でアパレル展開をする行為は珍しいことではなく、こちらも当時大人気のダイビングメーカーから生まれた1着。特筆したいのは連載が始まった中で唯一のフード付きだということ。その他にも取り外しが可能なボタンや、立ち襟などディティールにこだわっていることがわかる。隊長曰く、当時はフィットネス系の女性たちに人気だったそうで、スタジャンの他にもナイロンジャケットや小型のバッグなどをよく街中で見かけたそうだ。

 数ある中でもオールブラックでモード感が一際強いこちら。装飾されているDCスタジャンを“普通”とするなら、その真逆をいったストイックな精神が感じ取れる。ショルダーはアクションプリーツ仕様で、V字に切り込まれたリブもミリタリーアイテムの「WEP ジャケット」のディティールが反映されているなど、とにかくさりげなく上品。DCブランドブーム期の顔役だった老舗〈VIVAYOU〉の中で異色の存在だったと推測できる。当時の販売価格は39,800円だけど、メルカリで8,000円で入手できた。

 DCスタジャンを語る上で外せないキングの登場! 我々のクラブ活動も〈メンズビギ〉を紐解くことで面白さを知り、現在まで続いていると言っても過言ではない。現役バリバリなので、もちろん多様なモデルがあるけれど、こちらは当時「最終的にはワンシーズンで2万着が売れた」、「一駅に3人ぐらい着用している人がいた」といった逸話まである伝説的一着。なぜかバックのブランド説明がスペイン語なのも面白い。英語やタヒチ語など他の言語バージョンも存在しているので、初心忘れず引き続きレスキューしていきたい!

 発音記号で綴られたロゴが印象的な〈イクシーズ〉の1着。〈レナウン〉を中心とする異業種合同プロジェクトとして展開し、アパレルのみならず文房具やダイバーズウォッチなど幅広い商品をデパートで販売していた背景を持っている。集めてきた中でも特にマニアックで、最も目立つところにデカデカと「LIMITED EDITION」と書かれていたり、英文も微妙に間違っていたり、DCスタジャン特有の“愛おしさ”が散りばめられたグッドデザイン。

 ラストはDCスタジャンブーム期の“走り”的存在〈アバハウス〉! シーズンごとにモチーフを変えて作り続けている現役ブランドだけあってクオリティは申し分なく、ねずみ色のレザーが効いたカラーリング、ラウンドカラーの襟、劣化しにくい仕様の特殊なリブなど、総じて品のいい造りなのがわかる。勝手につけたモデル名は、錨の刺繍はもちろんだけど、左胸のメッセージにマリンスタイルを意識して作ったという内容が書かれていたから。遊び心がある老舗の定番品だ。

 過剰にスタイルが押し出されていたり、洋服自体の質がそもそも豪華だったり、“DCスタジャン要素”を改めて確認できたダイジェスト編。ワッペンやボタンなど自社オリジナルは当然、間違いなく手間がかかる部分もヴィンテージの名作を忠実にサンプリングしていたりと造りも手抜きなし。なのに安い。やっぱりオールドDCスタジャンの懐は広すぎる!

つづく。