ファッション

“ムッシュ”のための技巧的なアームポケット。Vol.15

オールドDCスタジャンクラブ

2023年11月6日

text: Fuya Uto
edit: Shugo Okamune

 テレビディレクター岡宗秀吾さんの一声で生まれた、’80年代DCブランドブーム期に作られたスタジャンを掘り下げていく、オールドDCスタジャンクラブ。第15回は、ブーム全盛期のキーマンと言っても過言でない〈ムッシュ ニコル〉が登場!

〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン
〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン
メルカリで6,000円で入手。リブのヨレなく、サガラ刺繍もつぶれていないグッドコンディション。

 1967年にファッションデザイナーの松田光弘さんが創業した〈ニコル〉から、一線を画すメンズラインとして誕生した〈ムッシュ ニコル〉。ムッシュの名に相応しく落ち着いた配色でまとめられたシックなスタジャンが多く、今回救出したものもそんなマインドを象徴するようなミリタリーテイストの逸品。

 制作した当時のパタンナーによると、袖・前立て部分の本革以外はすべて糸から別注したオリジナルファブリック(!)で、重厚感を出すためにレザーパーツ周りも紐を通すなど、造りにこだわった’87年のモデル。取扱店舗間でも発注のバトルが繰り広げられるほど大人気だった、なんて逸話も頷ける。

〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン
〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン

 左袖の立体ポケットに搭載されている小型のポケットはフライトジャケットやMA-1から着想を受けたと思われるが、“なにを入れるか”使い手のセンスを問うている気配がある。ペンや煙草だけでなく、絆創膏などのファーストエイドキットを常備できたら、本物の“ムッシュ”なのかもしれない! なんて想像を膨らませてくれるディテールだ。

〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン
タバコとペン

 今回も岡宗隊長を筆頭に、バイリンガルなレイコ、編集部のミヤモトとノムラ、ライターのフウヤの計5人でワイワイ考察してみました。恒例のレター翻訳や試着シーンもチェックしてみてください!

つづく。

#014

〈ムッシュ ニコル〉のスタジャン

MONSIEUR NICOLE「1987s ミリタリーモデル」

今もバリバリ現役のブランド〈ムッシュ ニコル〉の逸品。スタジャンのカジュアルさを残しながらも、革包みボタンやトーンオントーン柄の裏地など随所に品のよさが表れている。当時の価格は4万円前後。