カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.19

フォーダイト

2023年1月3日

text & edit: Shogo Kawabata
photo: Akira Yamaguchi
2023年1月 909号初出

米国自動車産業が生み出した宝石たち

ティアドロップ型に美しく研磨されたフォーダイトたち。よく見ると、キラキラと輝くラメ入りの層などもあり、車の塗料であったことを彷彿とさせる。¥4,500〜6,500(ジェムエイコー☎090·8469·9646)

 ミステリアスなマーブル模様が印象的なこの「フォーダイト」。まるで鉱物のような名前だが、その正体は「塗料」。かつて、アメリカ・デトロイトにあった自動車工場では、車体の塗装を手作業で行っており、塗装ブースの壁や床などには、吹き付けられた塗料が何層にも重なり続けていた。その積層した塗料の塊を採取し、研磨したものだ。大きく時代を遡るものは黒や茶系統の落ち着いた色合いのものが多いが、’60年代になるとヴィヴィッドなカラーのものが増えるなど、その時代のトレンドにより、産出するフォーダイトの色合いが変わるのも面白い。名前の由来はアメリカを代表する自動車メーカーである「フォード」と、街の名前の「デトロイト」、そして、印象的なマーブル模様となる鉱物の「アゲート」を組み合わせた造語。現在、自動車塗装は静電塗装と呼ばれる、帯電させた塗料を金属に吸着させる方式がとられているため、余剰塗料が飛び散ることはほとんどなく、フォーダイトは生成されなくなっており、貴重となっている。