TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】短歌はじめました。

執筆:中村健太

2026年7月17日

先日、第一歌集『おいしそうなティッシュホルダー』を刊行した。

装丁 山本梨央、編集 柳下恭平。
めちゃくちゃお世話になりました!

かわいい手のひらサイズ。

僕のことを知っている人からは、「えっ、写真集じゃなくて歌集なの?」と驚かれる。

確かに短歌を作っていることはあまり発信していないし、始めてまだ2年足らずなので、結びつかないのも無理はない。

ただ僕自身、自分とかけ離れた新しいことを始めた感覚はあまりない。だって写真と短歌って似てるんだもの。映像より似ていると思う。

例えば、あっと感情が動くような光景に出くわしたとする。映像だと、どうしても構成まで考えなければならない。でも写真や短歌なら、1秒にも満たないあわいの出来事や感覚を、ZIPファイルに圧縮するように閉じ込めることができる。

どうやら僕は、日々のエピソードトークにもならないような「取るに足らないこと」や「くだらないこと」が、どうしようもなく好きみたいだ。

日記のように、そのときの感情を書き残したいわけではない。その瞬間に起きたことや目にしたものを、小さなログとして打ち続けたい。

そうして点のように残した記録をあとから眺めると、自分でも気づいていなかった流れや輪郭が浮かび上がってくる。

写真と短歌は、そんな記録の仕方ができるところが、すごく僕の体に合っている。

前置きがスゲー長くなってしまったが、最後に一首と、そのときの状況を紹介したい。

定食屋
着物の子ども
キーホルダー
忘れて壁に
皆で見守る

行きつけの定食屋に行くと、壁に忘れ物のキーホルダーが掛けられていた。

そこには七五三の着物を着た子どもが写っている。忘れたのは親だろうか。それとも祖父母かな。

忘れ主に目につくよう壁へ掛けられたキーホルダーを、お客さんも「あら、早く気づくといいね」と気にかける。

店にいる誰もその子を知らないのに、写真の中の子どもは、その場のみんなに見守られているように見えた。

プロフィール

中村健太

なかむら・けんた|福岡と東京を拠点に活動。「STUDIO LOBJET」所属。価値観の拡張と共生の補助をキーワードに写真表現を行う。

2016年VOGUE ITALIA誌が選ぶベストフォト100、同年・同誌「PHOTO VOGUE」のフォトグラファーベスト30に選出された。3Dメガネを使ったシリーズ「Your story」が注目を浴び、『It’s Nice That』をはじめ、さまざまなメディアで紹介された。

主な個展に「おたがい年を取ったね。」(C7C gallery, 名古屋, 2026)、「歯が抜けた」(LIBRIS KOBAKO, 福岡, 2023)、「遺影、飾ってイイですか!?」(in the past, 大牟田, 2023)、「ハロー、グッバイ。」(かもめブックス, 神楽坂, 2019)、「Your story」(ニジニタギル美術館, ロシア, 2017)。主なグループ展に 「Labs New Artists」(Red Hook Labs, ニューヨーク, 2017)、「PHOTOVOGUE/inFASHION」(BASE MILANO, ミラノ, 2016)などがある。

Instagram
https://www.instagram.com/hanahanamegane17

Official Website
https://www.kentanakamura.com