TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】祖母はなぜ僕に写真を撮らせてくれたのか

執筆:中村健太

2026年7月10日

おはようございます、こんにちは、こんばんは。
写真を撮っています、中村健太と申します。

華やかなファッション誌で連載を持つのは初めてなので、まずは簡単に自己紹介からさせてください。

僕は普段、福岡にあるフォトスタジオ・ロブジェにて、家族写真や結婚式の撮影など、いわゆる「ハレの日」の思い出を残すお手伝いをしています。

その一方で作家活動も行っており、ファッション、エディトリアル、コマーシャルなどの撮影で日本全国を飛び回っています。(作風は https://www.kentanakamura.com をご覧ください!)

工業系の大学を卒業後、システムエンジニアとして4年ほど働いたのち、カメラマンを志しました。そのきっかけをくれたのが、現在のスタジオのボスである英介さんです。いまでも頭が上がりません。元ヤンだし。

「カメラマンになる」と家族に打ち明けたとき、父と祖母の驚き方があまりにも大きかったので理由を聞いてみました。

すると、亡くなったものと思っていた祖父は、実は蒸発していたこと。そして姿を消すまで、自宅に暗室を構えて写真を撮っていたことを知りました。

祖父が撮った祖母の写真。

僕が撮った父。祖父と構図が似た写真が他にもある。遺伝子恐るべし。

父には「おまえもどっか行くんか?」と蒸発ジョークをかまされながら、報告会は終了しました。

中村家お墓の前で。父と叔父。ふたりはふたご。

ある日、朝ごはんを食べていた祖母に、「ちょっとこれ着てよ」と白雪姫の衣装を渡しました。

「あんた、どうするつもりねー」

そう言いながら、祖母はするするとシャツを脱ぎ、あっさり撮影に応じてくれました。

着替えた後、朝ごはんを食べ進めてた。

僕は祖母をよく撮っていました。

祖母はいつも自然体でした。カメラの前で緊張することもなければ、撮られることを嫌がることもありませんでした。

ご年配の方を撮るとき、過剰に緊張されたり、時には撮影そのものを断られたりすることがあります。

では、なぜ祖母はあんなにもニュートラルだったのだろう。

そう考えたとき、ふと気づいたのです。

ああ、祖父に撮られていたからだ、と。

もしかしたら祖母は、僕にカメラを向けられるとき、祖父のことを思い出していたのかもしれません。

そんなことを考えているうちに、写真を通して祖父に会えたような気がしました。

祖父が撮った父と叔父。ふたりはふたご。

プロフィール

中村健太

なかむら・けんた|福岡と東京を拠点に活動。「STUDIO LOBJET」所属。価値観の拡張と共生の補助をキーワードに写真表現を行う。

2016年VOGUE ITALIA誌が選ぶベストフォト100、同年・同誌「PHOTO VOGUE」のフォトグラファーベスト30に選出された。3Dメガネを使ったシリーズ「Your story」が注目を浴び、『It’s Nice That』をはじめ、さまざまなメディアで紹介された。

主な個展に「おたがい年を取ったね。」(C7C gallery, 名古屋, 2026)、「歯が抜けた」(LIBRIS KOBAKO, 福岡, 2023)、「遺影、飾ってイイですか!?」(in the past, 大牟田, 2023)、「ハロー、グッバイ。」(かもめブックス, 神楽坂, 2019)、「Your story」(ニジニタギル美術館, ロシア, 2017)。主なグループ展に 「Labs New Artists」(Red Hook Labs, ニューヨーク, 2017)、「PHOTOVOGUE/inFASHION」(BASE MILANO, ミラノ, 2016)などがある。

Instagram
https://www.instagram.com/hanahanamegane17

Official Website
https://www.kentanakamura.com