ライフスタイル

生活動線から家具まで全部、DIY。

世界の部屋。/SEOUL

2026年2月26日

部屋とシティボーイ ’26


photo: Mio Matsuzawa
illustration: YOTS
coordination: Eri Masuda
text: Neo Iida
2026年3月 947号初出

Jeon Joongseob Architect

ジョン・ジュンソプ︱檀国大学校建築学科卒業後、インテリア事務所「THE FIRST PENGUIN」、建築事務所「FHHH」を経て独立。2020年にsaasaakunkun建築事務所を立ち上げる。

「家の設計を考えるときは、動線と構造の改変から始めます」

 そう話す建築家のジョン・ジュンソプが長年思い描いた理想の住まいは「寝室が玄関からいちばん離れたところにある部屋」だった。韓国では中央のリビングから各部屋に繋がるスタイルが一般的で、縦長構造のまっすぐな造りにはなかなか出合えない。しかしこの部屋を内見したとき、前の住人が残したキッチン横の倉庫と寝室の間の小さなドアを見て、ジュンソプは閃いた。

「このドアがあることで、玄関からスムーズにベッドルームにアクセスできて、結果的に部屋のいちばん奥になると思ったんです。契約してからすべてのドアを取っ払い、寝室までのU字の動線を考えました」

 構造を考え抜いた部屋は、それ自体が作品のようだ。リビングの大きな窓からはソウルでは珍しく広く抜けた風景が見える。秋には銀杏が色づき、冬は雪が積もる景色もまた、ジュンソプのお気に入りだ。

リビングの壁掛け棚は、学校を卒業して間もない頃に制作したもの。棚自体をパタパタと開け閉めできるよう壁に丁番で取り付けている。右の棚にはアイデアノートを保管。思いついたときにすぐ書き留めたいので、すぐ取り出せるこの場所に。左の棚にはウィスキーとウィスキーグラスを収納。

-KITCHEN-

キッチンの作業台と、隣の多目的室(バルコニー)を繋ぐ開口部のステンレスの造作は手作り。パスタが好きで月に2~3回は製麺をするそう。

リビングとキッチンの間に収納を増設。基本的にU字移動が推奨だが、双方を楽に行ったり来たりできるよう跨いで通れる高さで中央をくりぬき、“究極の面倒くさがりゲート”を設けた。これは向こう側からクローゼットと食器棚の扉を開けた状態。「エアコンがリビングにしかないので、パーティション代わりにふたつの扉を開けて冷たい風が逃げないようにしています(笑)」

-STUDY ROOM-

この部屋で絵を描くこともあるので、画材一式も揃えている。絵の具がぴったりハマった棚は日本で購入したもので、元は薬剤保管用。

元々は食材やキムチを保管する倉庫だった、キッチンの横の部屋。現在は「寝るための準備をする部屋」として、1人掛けのソファとお気に入りの写真集やスピーカーを置いたリラックスルームに。本棚はリビングの壁掛け棚と同じもの。

リビングのテーブルと黒い棚を除き、家の大きな家具はすべて自作したという生粋のDIY派なジュンソプ。数少ない購入品である棚の上にはお気に入りのコレクションが並ぶ。壁に立てかけられたのはヒルマ・アフ・クリントの『The Ten Largest, No.3, Youth』のポスター。窓際にはパキラが置かれ、手前側はアメリカ発祥のジオラマブランド〈Lemax〉のクリスマスデコレーションで小さな雪国の景色が広がっている。取材は年明けだったけどね。スピーカーは〈クリプシュ〉。

-WORK ROOM-

リビングの横にある、ジュンソプが一日のうち多くの時間を過ごす作業場。前の家でも使用していた黒いオーバル型のデスクは、自作の天板に〈イケア〉の脚を付けたもの。引っ越しを機にワークスペースを広げたくなり、オーバルのラウンドに合わせてカットした天板を噛ませて拡張した。

ワークスペースから見える動線。リビングを抜けて寝室までの道がすっと繋がっていて美しい。

インフォメーション

生活動線から家具まで全部、DIY。

AREA | ソウル・舊基洞(グギドン)
SPACE | 3LDK 59㎡
REMARK | リビングと部屋が3つ、ユニットバス、キッチン、サンルームのようなバルコニー付きのマンション。