TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】わかりあえない2人
執筆:エーブルソン友理
2025年11月26日
フィッシュマンとマンフィッシュが今日も同じ海辺で向かい合って話しています。彼らが何を話しているのか、誰にも分かりませんが、しばらく見ていると分かるんです。言葉の届かないところで、お互いの心が動いていると。わかりあっているようで、わかりあえていない。その逆もまた然りです。
二人の間には、微妙な潮のような間合いがあります。押せば引き、引けば寄る。まるで、「理解」という波をお互いのリズムで受け止めているかのよう。どちらかが潜れば、もう一方は水面に浮かび上がる。その絶妙なバランスの中で、会話は続けられます。おたがいの「ずれ」を感じ続けながら。
劇作家の平田オリザさんは、「わかりあえないことから」の中で、「わかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない。」と言っていました。
最初からわかりあえない者同士として受け入れることは諦めではなく、相手を「自分と同じにしよう」とすることから距離をとるための前提条件のようなものです。
日々、誰かと話しながら、「わかりあえた」と思っても、翌日にはまた波がさらっていく。それでも、また会話を続ける。なぜなら、たとえ一瞬でも「わかりあえた」と感じた時、それは特別な瞬間だから。その一瞬のために、私たちは今日も、言葉という海に潜りつづけます。
プロフィール
エーブルソン友理
エーブルソン・ユリ|1971年、東京都生まれ。学生の頃にヨーロッパやアメリカを転々とし、カリフォルニアのパサデナでマイク・エーブルソンと出会い、2000年にNYブルックリンにて〈ポスタルコ〉を創業。以来、自社のブランドコミュニケーションを中心に、グラフィックデザインの仕事をしている。2児の母でもある。好きな映画は『freaks』 (1932年) 、好きな漫画は『魔太郎がくる!!』、著書に『霧の中の展望台』『水たまりの中を泳ぐ』がある。現在、『Atelier Muji Ginza』にて展示「PAPER TRAIL – Everything Is a Prototype for the Future」(〜11/24まで)を開催中。
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