ライフスタイル
シティボーイのための宴会芸。Vol.5
宴会芸とドライブしよう
2022年6月5日
photo: Kyuseishu & Ganjiro Hanayama
text: Michael Mitarai
edit: Yukako Kazuno
僕はこれまで、宴会芸に関するいろんな文献を読んできた。けれど、クルマと宴会を近づけて語ったものはほとんど無かった。それも当然だ。クルマと宴会、というのはとても相性が悪い。酒を飲んでクルマを運転するのは絶対にやっちゃいけないことだ。
でも、時代は変わった。ノンアルコールビールが信じられないほどおいしくなった(昔は信じられないほどマズかった)。ノンアルコール専門のバーなんかも流行っているこの時代、もしかしたら、宴会芸とドライブとの距離は、案外遠くないかもしれない。第一、自分らしさの表現、という点で、クルマと宴会芸はつながっている。
「どんなクルマを選ぶか」にはその人の生き方が現れる。クルマの形にこだわる人もいれば、ヴィンテージを愛してクラシックカーを選ぶ人もいる。歴史も地域も値段も様々なクルマの中から、自分に1番似合う1台を選ぶ。クルマを買う時、人は自分の価値観を見つめ直すことになる。
それは、宴会芸もまったく同じ。宴会芸をやろうと心に決めた時、顔芸・モノマネ・替え歌・腹踊りなどさまざまな選択肢が頭に浮かぶだろう。その中で、どの芸が1番自分らしいか。それを本気で考えることで、人は自分のアイデンティティのありかを知ることができる。
「フルーツ大福」「ゴルフ合コン」など、かつては考えられなかった組み合わせに、VUCA(=いろいろわかんなくて難しい)時代を生き抜くイノベーティブなアイデアが生まれることを僕たちは知っている。そういうわけで、今回は「クルマがらみの宴会芸」を紹介しよう。宴会芸の力でシティボーイ諸君のドライブがもっと楽しくなったら、最高だ!
宴会芸と初夏のドライブ
初夏の風が吹く葉山。海が日差しを照り返すオーシャンロードに颯爽と登場したのは、日本宴会芸学会のカメラマン「救世主」の愛車プジョー2008だ。
エンブレム宴会芸「プジョー」
マイカーを手に入れたら、最初に取り組むべきはもちろんエンブレム宴会芸だ。プジョーのエンブレムはライオン。ネコ科の動物を宴会芸でやる時は、手に白靴下をはめて前足にすると決まっている。あとは堂々とライオンのポーズを取るだけ。愛車と一体化するのはやはり嬉しいものだ。姿勢を変えればジャガーにもなるので、ジャガーオーナーのシティボーイもぜひやってみてほしい。
助手席宴会芸「ケント・デリカット」
「丸眼鏡を使って目を大きくしたり小さくする」という極めてシンプルな芸で激動の90年代を駆け抜けたケント・デリカット氏。そんな伝説の男へのオマージュ芸がこちら。渋滞にはまって車内のテンションが下がった時、閉塞感をぶっ壊してくれるビジュアルインパクトがあるよね。こっそり居眠りもできるので、助手席での使い勝手は抜群だ。
助手席宴会芸「毛虫」
眉毛を単なる毛の塊と侮ってはいけない。汗やゴミが目に入らないようにする役割だけではなく、複雑な表情を作ってくれる天然の宴会芸アイテムなのだから。人間を人間たらしめているのは眉毛だ! とも言えるかもしれないし、それはちょっと言い過ぎかもしれない。
この芸は、眉毛を動かして毛虫に見立てるもの。アジサイの葉で目元を隠せば、イキの良い2匹の毛虫にしか見えない。なんだか、ポエム界のレジェンド松尾芭蕉が一句詠みそうなワンシーンだよね。
運転手宴会芸「ジョーズ」
救世主の右ひじに注目してほしい。これは、1975年公開のメガヒット映画『ジョーズ』の巨大ホオジロザメを右肘で表現する宴会芸だ。ひじそのものの形を無駄なく利用する、とてもサステナブルなアイデアだと言える。ハンドルを切るたびに少しずつ表情をかえるジョーズを見ながら、スピルバーグの偉大さに思いを馳せよう。海の近くをドライブする時にさりげなく忍ばせておけば、助手席から悲鳴が聞こえるかもしれないね。
後部座席宴会芸「割り箸にらめっこ」
1980年代の文献を紐解くと、社員旅行のバス移動を盛り上げるゲーム型宴会芸が数多く紹介されている。「割り箸にらめっこ」はその代表選手。下唇に割り箸を挟んだ状態でにらめっこをするんだけど、これがかなり面白い。少しでも笑って表情筋が緩むと、無慈悲に箸が落下するから、とてもスリリングなんだ! これなら、どっちが先に笑った? って喧嘩する心配もない。ドライブに行く時は、ポケットにマイ割り箸を忍ばせる。これが、シティボーイの新常識だ。
トランク宴会芸「トド」
トランクにたくさん荷物が入るクルマを買ったら、絶対に自慢したいもの。そんな、大容量アピールにぴったりなのがこの宴会芸だ。割り箸をくわえてポーズをとってトドに変身。割り箸はキバだし、手はヒレだということを強く意識してほしい。ちなみに正座を崩したお姉さん座りが1番トドに見えるというのは今回の撮影での発見だった。オスのトドは体重1トンを超えるしハーレムも作る。そんな海の怪物が乗るトランクに、乗らない荷物なんてあるはずがないよね。
SUV宴会芸「シンクロナイズドスイミング」
最後にクルマをダイナミックに使う芸を紹介しよう。シンクロナイズドスイミングだ。本来であればふすまを使ってやるものだが、お座敷の宴会が激減している今、オープンエアーでSUVを使うのがイマドキだろう。太平洋を借景しながら、ひたむきに水中バレエを踊る研究員を眺めて思った。クルマがある生活って、やっぱり最高だ!
最後の最後に、これだけは言っておこう。シティボーイ諸君、飲んだら乗るな! 絶対に!
それでは、また来月会おう。
<世界は宴会場。生きることは宴会芸。>
プロフィール
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第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
https://note.com/enkaigei_gakkai/n/na28f8b82ef45
日本宴会芸学会のオリジナルTシャツ
https://enkaigei.paintory.com/
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