ライフスタイル
シティボーイのための宴会芸。Vol.4
宴会芸と出かけよう
2022年5月1日
photo: Kyuseishu
text: Michael Mitarai
edit: Yukako Kazuno
太陽がさんさんと輝き、世の中みんなが浮かれている。ああ、大型連休の空気だ。
いつも薄暗い部屋で宴会芸研究をしている僕たちも、町に繰り出したくなってきた。
寺山修司が「書を捨てよ町へ出よう」と思ったのも、ひょっとしたらゴールデンウィークだったのかもしれないな。そういうわけで今回は、東京のブルックリンとしておなじみ、シティボーイの最注目エリア・蔵前を宴会芸学会と一緒に散歩しよう。太陽の下の宴会芸。これは、新しい発見の匂いがする。
それでは、町へ出かけよう。
Tokyo Enkaigei Life
今回蔵前を案内するのは日本宴会芸学会の事務員、大塚愛子。ブルックリン感のあるアートな公衆トイレの前に、エメラルドグリーンのママチャリに乗って颯爽と現れた。
待ち合わせの相手に向かって挨拶がわりに出来る宴会芸と言えば、これだ。
「お歯黒」
味海苔を口の中に仕込んで、にっこり微笑むだけ。その手軽さの割に、ビジュアルインパクトがとても強い優れモノ。太陽の下でこぼれるのは白い歯と相場が決まっているから、黒い歯が出てきたときの驚きはひとしおだ。江戸時代には、これを全既婚女性がやっていたと思うと、事実は宴会芸より奇なり、と言わざるを得ない。
ここで、サイクリング好きなシティボーイのために自転車の紹介をしておこう。この自転車は大塚愛子が小学5年生の時おじいちゃんに買ってもらった一台。正式名称を「ガチャリンコ」という。チェーンを巻かなくてもサドルがカギの替わりになるというアイデア商品だ。発売当時はテレビCMも流れていたヒット商品だから、覚えているシティボーイもいるかもしれない。毎年メンテナンスをしながら20年も大事に使い続けている。道具も宴会芸も、良いものを長く使う。それが、大塚愛子のポリシーだ。
最初に向かったのは、ホステル兼バーラウンジとして人気が高い蔵前の新名所『Nui.』。休日のチルな午後を過ごすシティボーイ&シティガールで店内は賑わっていた。
お店の前には、いかにもブルックリンという感じの自転車置き場。思い切ってここにガチャリンコを停めようと思ったけど、うまくはまらず、大塚は照れ笑い。でも、こういう挑戦心は忘れたくない。
ちょっと小腹が空いてきた。墨田川のリバーサイドに移動して、アペロにしよう。
アペロとは、夕食前に軽食とワインを楽しむこと。蔵前の名店「セレンディップ」でテイクアウトしたスリランカカレーは、軽食という割には少々ボリューミーで、普通にランチという感じになったけど、好きなものを好きなだけ食べるのが1番良いに決まってる。
ここで、アペロのようにサクッと楽しめる宴会芸を紹介しよう。
「アントニオ猪木」
コップをアゴにくっつけて、プロレス界の伝説、アントニオ猪木氏の横顔を再現。「元気ですか!!」と一喝すれば、休日の空気にピリッとしたスパイスが加わること間違いなし。もちろん、ビールや焼酎ではなく、ナチュ―ルでやるのがアペロな気分。ちなみにこのワインは<シチリア最南の地で姉妹2人が造り上げるナチュール・ワイン ”カンティーナ・マリリーナ”>。すっきりとした味わいの中にほのかな青味を感じる、晴れた休日にぴったりなナチュールだった。
「慶應大学」
スプーンやフォークなどのカトラリーをクロスさせて、名門・慶應大学のシンボルマークを再現。元々は慶應大学の学生やOBが母校愛を競う「居酒屋の早慶戦」的なノリで発明した芸だろうが、春の青空の下で慶應大学と何の関係もない大塚がやれば、それはもう、なんというか、アペロだ。
ちなみに、カンの良いシティボーイ諸君は既に気づいているかもしれないけど、大塚が着ているのは日本宴会芸学会オリジナルのTシャツだ。シルクスクリーンなんかでオリジナルTシャツを作る遊びにハマるシティボーイの波に、日本宴会芸学会も乗ってみた。興味があったら日本宴会芸学会のInstagramをチェックしてみてほしい。シティボーイなら宴会芸を軽やかに着こなせるはずだ。
カレーの匂いに誘われたのか、宴会芸の匂いに誘われたのか、どこからともなく宴会芸仲間が集まってきた。
ここからちょっと予定を変更して、浅草まで足をのばしてみよう。蔵前と浅草は隣同士で、浅草という名前のついたマンションも蔵前にはたくさんある。考えようによっては蔵前は浅草だし、浅草は蔵前だ。久しぶりの外遊びだから、観光客みたいにはしゃぐのも悪くない。
さて、観光客気分の記念撮影の時に使い勝手の良い宴会芸を紹介しよう。
「トーテムポール」
浅草で見るスカイツリーは、とにかくデカい。634mの巨体に敬意を表して、僕たちもできる限り縦長になりたい。そんな時、トーテムポールは最適な宴会芸だ。地べたに寝そべる覚悟さえあればもっともっと縦長になれる。いつか634人のトーテムポールにチャレンジして、スカイツリーがのけぞるくらい驚かせたい。
「考える人」
シティボーイの休日の過ごし方の一つは、昼から銭湯に行くことだ。渋い銭湯を見つけたが、あいにく開店前だったので空気椅子で待つことにした。お気に入りの文庫本「アーバン・アウトドア・ライフ」を読みながら筋トレも出来るんだから一石二鳥。風呂で汗を流す前に、芸に汗を流すというのも悪くない気分だ。
「非常口」
日本最古の地下街、浅草地下商店街。よどんだ空気にディープなアジアを感じる名店が軒を連ねる。その薄暗い通路に輝く「非常口」のネオン合わせてポーズを取る。宴会芸を通じて、昭和の文化遺産と一体化する大塚の顔は真剣だ。逃げろ、大塚。
「ちょんまげ」
頭の上にバナナを乗せてちょんまげ。一瞬で始まり、一瞬で終わる芸だ。撮影時は「これでちょんまげに見えるかな?」と不安な気持ちだったけど、写真になってみると、浅草で一番はしゃいだ観光客に見えるから不思議なものだ。
そして、僕たちは歩き続けた。墨田川を北上して、広々とした川原にたどり着いた。近頃、この辺りは墨田川のサンクチュアリなんて呼ばれているらしい。青い空、白い雲、緑の芝生。控え目に言って、最高!
そんなチルな時間にぴったりな宴会芸を紹介しよう。
「人文字・女」
初夏の緑をキャンバスにして。おじさんが重なりあって「女」の字をつくる。「く」「ノ」「一」のどれが1番キツいか?なんてワイワイ言いながら。こういう平和でナンセンスな世界を、僕たちは後世に受け継いで行きたい。
「スポーツおたくの真髄」
陸上ランナーは、単距離・中距離・長距離でそれぞれゴールのポーズが違う。そんなスポーツ豆知識をフィジカルに表現する宴会芸だ。手を大きく掲げる長距離走者、フォームを崩さない中距離走者、トルソーを突き出す短距離走者。静止によって強調される躍動感、これを見て巨匠・亀倉雄策氏の東京オリンピック(1964年)のポスターを思い出すのは、ちょっとどうかしているだろうか。
「とんぼの交尾」
両手を伸ばし、片足で立ち、浮いた方の足をくっつける。サンクチュアリにふさわしい、のどかな宴会芸だ。一人で両手を広げて「とんぼ」では芸にならないけど、「とんぼの交尾」は芸になる。なぜなら、そこには生命の歓びがあるから。つまさきとつまさきがくっついた時のうれしさ。それは生きていることの実感。宴会芸はいつも、大切なことを教えてくれる。
「竹とんぼ」
最終的に僕たちは、竹とんぼになって飛んで行った。人は竹とんぼになって飛んでいけるほどに自由だということを、宴会芸は思い出させてくれる。くるくると回りながら僕らは気づいた。宴会芸は、宴会場からも自由なんだと。外遊びって、宴会芸って、最高だ!
宴会芸を持ち歩けば、町はもっと面白くなる。
そう、宴会芸は、単なる芸ではなく、この世界のおもしろがり方なんだからね。
シティボーイ諸君、宴会芸とともに素敵な休日を。恥を捨て、町へ出よう!
<世界は宴会場。生きることは宴会芸。>
プロフィール
マイケル御手洗
Instagram
https://www.instagram.com/enkai.gakkai/
YouTube
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Official Website
https://enkai-gakkai.com/
第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
https://note.com/enkaigei_gakkai/n/na28f8b82ef45
日本宴会芸学会のオリジナルTシャツ
https://enkaigei.paintory.com/
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