LIFESTYLE

シティボーイのための宴会芸。Vol.1

で、宴会芸学会ってなんなんだ?

2022.02.03(Thu)

photo: Kyuseishu
text: Michael Mitarai 
edit: Yukako Kazuno

「世界は宴会場。生きることは宴会芸。シティボーイ諸君、宴会場でまた会おう!」と言ってから2ヶ月。この長い冬が終わる前に、シティボーイのみんなと再会できるなんて! やっぱりこの世界は宴会場だったんだね! と胸を熱くしながらぼくはこの文章を書いている。そしてぼくは同時にとても大事なことに気づいたんだ。これまで日本宴会芸学会が何者かについて、ほとんど説明していないってことにね。

敏感なシティボーイの中には、これまで不安だった人もいるに違いない。自己紹介もなしに1万字を超える文章を浴びせてきていたんだからね。しかもテーマが宴会芸だ。不安になるのも無理はない。今こそシティボーイのみんなに、日本宴会芸学会は決して怪しい集団ではないのだということをわかってほしい。

じゃあ早速、日本宴会芸学会の自己紹介をはじめよう。

日本宴会芸学会とは、その名の通り宴会芸を学術的に研究する民間団体だ。宴会芸の魅力に取りつかれたちょっとフリーキーな人たちが集まっている。とはいえ、研究自体は他の人文科学とそう変わらない。基本はとにかく文献サーベイ。国立国会図書館やネット書店などで明治から現代まで幅広く文献を集めて読み込むことからすべてがはじまるんだ。シティボーイの毎日が、POPEYEを読み込むことからはじまるようにね。

ぼくたちの言う文献とは宴会芸のハウツー本とか雑誌の切り抜きのこと。文献には途方もない数の宴会芸が登場する。明治も大正も昭和も平成も、宴会場のセンパイたちはみんな、目立とうとしたりモテようとしたり追い詰めたり追い詰められたり、そして何より誰も彼もが酔っぱらいながら無数の芸を編み出してきた。すべての芸には誕生のドラマがある。そう考えると愛おしいよね。宴会芸のハウツー本は、それぞれの時代における人間ドラマの図鑑でもあるんだ。

そして現在。残念なことにそんな芸のほとんどがこの世から姿を消そうとしている。そもそも宴会芸を披露する人も場も減っているし、ひいき目に見ても滅びるべき宴会芸はたくさんある。その上今は、あらゆる意味で宴会がままならない時代だからね。生命も文化も適者生存。変化に適応できないものは容赦なく滅びる。ぼくたちだって自然の摂理に抗うつもりはない。

でも、ぼくらは宴会芸のことを人類がそこそこ熱量をかけて発明した無形文化財だと思っている。それが跡形もなく姿を消してしまうのは、ちょっともったいなって思うんだ。だから、ぼくたちはセンパイたちの芸を写真や動画にして、未来に残すプロジェクトに取り組んでいる。絶滅危惧宴会芸プロジェクトだ。

このプロジェクトを通じてぼくたちは「宴会芸は時代を映す鏡だ」ってことを知った。

明治時代の宴会芸は、お座敷遊びの延長で、上品な大人の嗜みだった。そして70年代になってくると、団塊の世代が宴会芸の中心を担うこともあってか、状況劇場顔負けのアヴァンギャルドな宴会芸が出てくる。そしてバブルの狂騒とともに過激でインスタントな宴会芸(=バブル期宴会芸)が大量発生し、他の芸を駆逐してしまった。湖の中の粗暴なブラックバスみたいにね。

明治宴会芸「羅漢だ羅漢だ」
アヴァンギャルド宴会芸「のけそこのけ河童が通る」
バブル期宴会芸「お嬢様のうんこ」

実は、みんなが眉をひそめるような下品な宴会芸が登場するのは85年のプラザ合意以降なんだ。(レーガンが宴会芸を狂わせたとも言える!)急激なドル安とともに宴会芸の品性も低下してしまった。それ以前の芸には知性と教養があった。これはすごく大事なことで、いくら強調しても強調しすぎるということはない。バブル期宴会芸のバイアスから自由になって宴会芸文化の本来を見直す、というのもぼくたちの大切なミッションなんだ。

ぼくたちは行動する研究者でもある。研究成果をまとめた学術大会「日本宴会芸学会」が最も重要な発表の場だ。宴会芸研究者が一堂に会して、基調講演をしたり、パネルディスカッションをしたり、とにかくそれっぽいことをするんだ。もちろん宴会芸がテーマだから徹頭徹尾くだらないんだけど、ぼくらはどこまでも真剣にやっている。コロナが落ち着いたらまた開催する予定だから、シティボーイ諸君もよかったら遊びに来てほしい。

そして重要なことについて話しておこう。日本宴会芸学会には虚実が入り乱れている。

カンのいいシティボーイのみんなは気づいているかもしれないが、マイケル御手洗は、ぼくの本名ではない。マイケル御手洗は、宴会芸活動時に使う「宴会芸ネーム」だ。そしてぼくにはもう一つ、御手洗太という宴会芸ネームもある。日本宴会芸学会の会長だ。宴会芸学会の会員はみんな宴会芸ネームをもち、普段の生活とは別人格で研究や芸に打ち込んでいる。

そして、最初に開催した学術大会はいきなり第87回だった。理由はシンプル。第1回よりも、威厳がありそうだから。ちなみに2回目の学術大会は、第74回だった。数字というのはただの飾りでしかないとぼくらは思っている。

でも、これだけは信じてほしい。

ぼくたちが紹介してきた宴会芸はすべて文献に登場する紛れもない本物だ。宴会芸とは現実と空想が混濁する宴会場で行われてきた。酒というものは虚実を混ぜ合わせる液体であるし、宴会というのは互いの虚実を交換する儀式なのだ。だからぼくらは、宴会芸に対しては徹底的にリアルを追求し、それ以外についてはそれっぽさを追求している。どこまでも大胆にね。

この連載では「シティボーイのための宴会芸」の名のもとに、いろいろなことに挑戦したいと思っている。かっこいい宴会芸をもつセンパイの話を聞いたり、オンライン空間で現代の宴会芸を開拓するTikTokerとコラボしたり。とびきりコーヒーにあう宴会芸とか、宴会芸ブックガイドとか、宴会芸ファッション特集なんかも素敵だ。旅と宴会芸というのもいい。シティボーイと宴会芸をむすびつけるために、やりたいことは尽きない。

自己紹介だけで長くなってしまった。そろそろ終わりにしよう。

あらためて、世界は宴会場。生きることは宴会芸。
終わらない宴会をはじめよう。

プロフィール

マイケル御手洗

マイケル・みたらい│1986年生まれ。日本宴会芸学会研究員。専門は宴会芸哲学。2018年に開催された第74回日本宴会芸学会で「特別講義:マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」を開講。カントやベンサムを引用しながら“宴会芸における正義とは何か?”を語り掛ける、ナラティブでプラクティカルな講義を繰り広げ、宴会芸研究に新しい地平を切り開いた。西海岸ロックとエシカルコーヒーを愛する。日本宴会芸学会のSNS担当でもある。ご意見・ご感想・宴会芸情報、お待ちしています。

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第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
https://note.com/enkaigei_gakkai/n/na28f8b82ef45

 
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