TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#3】シティボーイのためのカラダを使った宴会芸

2021.11.24(Wed)


text: Michael Mitarai 
photo: Kyuseishu
edit: Yukako Kazuno

シティボーイ諸君。近ごろ、カラダ張ってる?

授業や仕事はZoom、食事はウーバーイーツ、観たいものはNetflix。ぼくらの生活は今、カラダを使わなくてもなんでもできるツールでいっぱいだ。今注目のメタバース(仮想空間)が実現したら、ずっとバーチャル世界から出ないなんて人も出てくるのかも。それはそれで楽しそうだけど、やっぱり美味しいカレーを食べたり、デートしたり、宴会芸をしたり、そういうフィジカルな楽しみも忘れたくはないよね。カラダを張るっていうのは、人類の歴史とともにある最高にグローバルなエンタメだし、どれだけテクノロジーが進歩しても、息を吸って吐いて、笑って泣くのは、このカラダなんだから。

そういうわけで今回は、過去の文献からカラダを使った宴会芸を紹介しよう。コンプライアンスという概念が日本に伝わるはるか昔、バーチャル世界なんて翻訳SF小説の中にしか存在しなかった時代のセンパイたちが考えた芸だから、今から見るとちょっとハードに感じるかもしれない。でも大丈夫。カラダを張るって、そういうものだから!ぜひ、リモートワーク続きの軟弱なカラダに、宴会芸で喝!を入れてほしい。

人文字(女)

カラダを使う宴会芸のトラディショナルといえばそう、なんといっても人文字だ。20世紀末にはお笑いコンビT I Mのゴルゴ松本さんが「命」というギャグでブレイクした。人文字を武器にテレビに出まくる人なんて、後にも先にもゴルゴさんくらいかもしれない。「命」は、宴会芸の歴史にさんぜんと輝くパーマネントコレクションだ。さて、古くから宴会芸の文献にも人文字はたくさん出てくるけど、ぼくが一番好きなのはこれ。おじさんが三人折り重なって「女」になる。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざの真逆を行く無意味さに、宴会芸の矜持を感じるよね。ちなみにゴルゴ松本さんのコンビ名TIMはTime Is Money(時は金なり)の略。一瞬でその場を沸かせる人文字という芸にぴったりな名前なんだってことも、シティボーイなら知っておいて損はないはずだ。

ヘリコプター

宴会芸研究の基本は、文献に書かれている芸を実演することにある。いざやると全然面白くない芸(ぼくらはそれを机上の宴会芸、もしくは、絵に描いた宴会芸と呼んでいる!)もあるけれど、期待を超えて思わずブラボー!って叫んじゃうような芸と出会えるのが宴会芸研究の醍醐味だ。宴会芸の答えは、本の中にではなく、いつもカラダの中にあるんだからね。

「ヘリコプター」は実演してこそ魅力が伝わる芸の代表格。座布団に帯を巻いて、頭上で力いっぱい振り回す。すると何が起こると思う?そう、まるでヘリポートにいるような強い風が巻き起こるんだ!風を主役にする宴会芸があることを、ぼくたちはその日初めて知った。もちろん強く回転させるために、強い体幹が重要なのは言うまでもない。健全な宴会芸は、健全な肉体に宿るのかもね。

腹芸(おどる大統領)

人類を「腹芸する派」「腹芸しない派」の2つに分けるとしたら、シティボーイのほとんどは「腹芸しない派」に属するかもしれない。ぼくだって本来は「腹芸しない派」なんだけど、研究のためにやってみた、というのがこの写真だ。もちろん、腹に絵を描かれている時間(ぼくが嫌いな当時の大統領の顔だ)は、本当に恥ずかしかったし、何でこんなことやってるんだろう?って心から思った。でも、完成してポーズを決めた瞬間、何も怖いものはなくなった。いざ腹芸をやってみると、頭っていうのはぼくのカラダのほんの一部なんだってことに気づかされたんだ。それはとてもセンセーショナルというか、大袈裟にいうとちょっとした快感のある発見だった。「腹が据わる」っていう言葉はここから来ていたんだ!と腹落ちしたよ。運動不足で腹が出てきたシティボーイ諸君、ここらで腹を決める時かもね。

股下リンボー

断言しよう。リンボーダンスをやって盛り上がらない宴会はない。西インド諸島のトリニダード島で生まれたこのダンスには、みんなを笑顔にする不思議な力がある。そんなことは教養のあるシティボーイにとっては常識だ。でも、あんな長い棒用意できないし、宴会場でリンボーダンスをやるなんて現実的じゃない。そういう思い込みから、リンボーをやりたくてもやれずに悩むシティボーイもいるんじゃないかな?そんなみんなに朗報がある。宴会芸のセンパイたちは、アイデアと情熱で不可能を可能にしたんだ。そう、股を棒の替わりに使うことでね。股下の長さによって難易度を調整することだって出来る。股を差し出し、しっかりと前を見据える。そんな上司に、ぼくたちはついていきたい。カラダを張るって、最高だ!

プロフィール

マイケル御手洗

マイケル・みたらい│1986年生まれ。日本宴会芸学会研究員。専門は宴会芸哲学。2018年に開催された第74回日本宴会芸学会で「特別講義:マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」を開講。カントやベンサムを引用しながら“宴会芸における正義とは何か?”を語り掛ける、ナラティブでプラクティカルな講義を繰り広げ、宴会芸研究に新しい地平を切り開いた。西海岸ロックとエシカルコーヒーを愛する。日本宴会芸学会のSNS担当でもある。ご意見・ご感想・宴会芸情報、お待ちしています。

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第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
https://note.com/enkaigei_gakkai/n/na28f8b82ef45

 
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