カルチャー

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.38

写真・文/久山宗成 a.k.a. Donald

2025年5月10日

photo & text: Muneaki Kuyama a.k.a. Donald
edit: Yukako Kazuno

GEEK WATCHマンスリー連載第38回は満を持しての巨匠編です。

「デロリアンDMC-12」「いすゞ 117クーペ」や「マセラティ・ギブリ」など生涯で300とも言われるクルマをデザインした20世紀最高のカーデザイナーのマエストロ。
それがGiorgetto Giugiaro(ジョルジェット・ジウジアーロ)氏。

腕時計業界でもその名は不動の殿堂入りでまさに生きた伝説。特に〈SEIKO〉の依頼により1980年代に手掛けたスピードマスターシリーズはもはや伝説的な存在であり、近年何度も復刻版が販売されるほどの人気を誇っている。

しかし、彼が手掛けた腕時計の中でも何故か復刻されておらず、もはや”幻”として神格化されたモデルが存在する。それが1983年に発売されデザインの特殊性、個体数の少なさからも高い人気を誇るスピードマスターSSBJ018(A828-6000)通称”巻き取り”。

この神個体を探し続けること8年余り…。我々は遂にこの幻とも言える絶滅器具種の捕獲に成功‼︎ 二度と見つからないレベルの美しいお姿をとくとご覧あれ。

〈SEIKO〉『スピードマスター SSBJ018』(A828-6000)

製造年:1983年
文字盤:デジタル表示
ケース素材:ハードレックス・SSバック
ケースサイズ:縦54mm / 最大横42mm / 厚み9mm(文字盤部分)
ベルト:ナイロンベルト
ムーブメント:Cal.A828(クォーツ)

ニックネーム”巻き取り”の名前の由来はそのバンド。
バイクのハンドルに装着可能な長いベルトを巻き込む特殊な仕組みを採用。ジウジアーロが飛行機の座席シートにあるシートベルトの巻き込みから着想を得て製作された。

何故ジウジアーロはこれ程までに個性的な腕時計をデザイン出来るのだろうか? それはデザインの「美しさ」ではなく、道具としての合理性・工業製品としての一体感を重視したインダストリアルデザイン的なアプローチをしているからなのだろう。

ジウジアーロのデザインは機能ありきであり、デザインはあくまでスパイス程度。言うなれば”機能がデザインを決める”。最後に悪ノリして「2025年にもしジウジアーロが〈SEIKO〉のスピードマスターをデザインしたら?」というお題をAIに投げてみたらこんなデザインがあがって来た。結構的を得たデザイン。恐るべしAI…。

プロフィール

目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.38

久山宗成 a.k.a. Donald

くやま・むねあき | 改造活動家、企画編集者、GEEK WATCH偏愛家。ワタリウム美術館のミュージアムショップ地下中二階にて、2014年より改造見世物小屋『+R.I.P. STORE』を営む。様々なマテリアルや手法を組み合わせてジュエリー、腕時計、プロダクト、舞台美術などを制作している。趣味的に始めてどハマりしたGEEK WATCHのコレクションは今や700本以上。現在『GEEK WATCH PEDIA』なる本を編集中。

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