ライフスタイル
【#2】もう会うこともない
2022年4月19日
text & illustration: Reiji Fukitsu
edit: Yukako Kazuno
人が握ったおにぎりに抵抗のある人は多いでしょう。
そんなことはさて置き、私はいまMくんの握ったおにぎりの味を思い出しています。
Mくんは小学6年生のときの同級生でした。彼は腰パンが様になるような、もう今にもティンバーランドブーツを履き出しそうな頼もしい男の子でした。小学生にして番長的なところもあり、ドラマ「ルーキーズ」が流行った頃には、いち早く金属バッドを片手に廊下をうろうろし始めた人でした。

さらに、グレ方も凝っていました。真っ黒い墨で「音無(おんな)」と書き殴った和紙。それが廊下に何十枚も貼り巡らされていた光景を思い出します。ルーキーズが最終回を迎えると共にMくんの金属バットも消えましたが、仕草ひとつのカリスマ性は変わらず、私にとってずっとセンセーショナルな人物でした。
そんなMくんがおにぎりを握ったのは、小学校卒業も間際の頃だったでしょうか。当時私たちのクラスにはある問題がありました。みんなの食が細かったのか、給食の白ご飯が大量に余ってしまうのです。
そんなある日Mくんが、ランドセルから突然「アジシオ」の瓶を取り出しました。彼は何も言わず教壇に立ち、配膳箱に入っている余った白ごはんを素手で握り始めました。そして、アジシオをまぶし、塩むすびにして食べたのです。それを見た皆も食べたくなり、女子も男子もMくんの握った塩むすびを配給してもらいました。クラスで起きているフードロス問題を憂慮しての行動だったかは謎ですが、ともかく突然クラスに出現した塩むすびに私は意表を突かれました。「意表を突く」ということが素晴らしいことだ、と気づいたのもあれが最初でした。
小学校を卒業し、Mくんとは接点がなくなってしまいました。しかし3年ほど前、突然夢にMくんが出てきました。夢の中で彼は「ガロ」がいっぱい置いてある四畳半の部屋にいて、原稿用紙に向かっていました。思わず「Mくん!」と呼ぶと、「俺は今マンガ描きに集中しているから後にしてくれ。」と言われました。
嗚呼!夢とはなんとバカバカしいものでしょう。Mくんがマンガ道を走るなどという愚かなことをするはずがありません。彼は今頃塩むすびのことなどすっかり忘れ、ティンバーランドブーツでアクセルを踏んでいることでしょう。
プロフィール
不吉霊二
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