ファッション
愛すべき奇妙な人々の聖地『VIVA Strange Boutique』。
東京五十音散策 奥沢①
2024年2月10日
photo: Hiroshi Nakamura
text: Ryoma Uchida
edit: Toromatsu
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「お」は奥沢へ。

周りを知る余地もない。好きな世界をひたすらに追及し、果てには店を構えた。なんてかっこいいんだ。そして自分は、いったい誰の目を気にして何に縛られているのだろうか……。強烈なポストパンクの香りと共に、ふやけたマインドに喝を入れられるここは、いろんな意味での聖地だと思った。
2019年4月にオープンした『VIVA Strange Boutique』は、1970年代後半から80年代前半のポストパンク、ニューウェイヴカルチャーを軸としたショップ兼アートギャラリー。店主の山口美波さんが敬愛するバンドとコラボしたオフィシャルなアイテムや、英国から買い付けたレコード、古本、ヴィンテージの缶バッジなどが並ぶ空間は宝の山。




セックス・ピストルズの解散と入れ替わるように、ジョイ・ディヴィジョンら気鋭のバンドが台頭し始めたのが1978年頃。パンクのDIYスピリットとエネルギーは継承しつつ、音楽的実験を重ねながら独自のスタイルをつくり、その”新しい波”がニューウェイヴやポスト・パンクと呼ばれている。ジョン・ライドンによるパブリック・イメージ・リミテッド、ポリス、ポップグループ、キュアー、ディーヴォ、トーキング・ヘッズ……といった数々のバンドが、多様で幅広い音楽ジャンルに接近しながら傑作を生み出していった。
サウス・ロンドンの輸入レコード店『ラフ・トレード』を営むジェフ・トラヴィスが、同名のレーベルを興したのも78年。レインコーツやモノクローム・セット、ザ・スミスといった新進気鋭のバンドを輩出した、今も第一線でシーンを牽引する伝説のレーベルだ。
店主の山口さんが学生時代に大きな影響を受けたと語るのが、この『ラフ・トレード』のコンピレーション・レコード。だからこそ、モノクローム・セットのデビューアルバム『Strange Boutique』から店名がとられているのか、と納得。お店は山口さんのポストパンク/ニューウェイヴ愛で貫かれている。

「好きなバンドのTシャツを着たいという思いからお店が始まりました。ブートではなく、オフィシャルなものを売ることで好きなバンドに少しでも還元したいし、恩返しをしたいですね」。自身もソロプロジェクト『She Talks Silence』で音楽活動をする山口さん。音楽への愛とリスナーを信じるその姿はポストパンク・キッズの鏡だ。長い長い音楽の歴史でいえば、ポストパンクやニューウェイヴはかなり奇妙な音楽かもしれない。でも、どうしてもそれを愛してしまう、自分のスタイルを持つ愛すべき奇妙な人々のために、このお店はあり続けてくれるのだ。
インフォメーション

VIVA Strange Boutique
ウェア、レコード、雑誌や缶バッチまでそのほとんどがLate’70s~Early’80s。PLASTICS、Phewといった日本を代表するバンドから、SPARKS、PRIMAL SCREAM、THEPASSAGE、THE DURUTTI COLUMN、THE MONOCHROME SETなどなど。ポストパンク好き垂涎のオフィシャルグッズを販売。このためだけに奥沢に訪れてもいいほどの充実ぶり。
◯東京都世田谷区奥沢5−1−4 14:00〜19:00 月、火、水休
Official Website
https://www.vivastrangeboutique.com
イベント・インフォメーション

VIVA Strange Boutique 5th Anniversary”Strange Music For Strange People” Presented By VIVA Strange Boutique & Creativeman
『VIVA Strange Boutique』が今年4月に開店から5周年を迎えることを記念したアニバーサリー・イベント。一番最初のコラボレーション・パートナーであり、そのアルバムタイトルが店名の由来となったイギリスのリビングレジェンド、The Monochrome Setを招聘。日本からはPhew、立花ハジメ(hm)が参加する。4月20日、渋谷WWWXにて開催。チケットは以下より、2月10日から一般発売開始。
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