カルチャー
RADICAL Localism Vol.12/パッチの楽しさ
文: ロジャー・マクドナルド
2022年10月9日
photo & text: Roger McDonald
cover design: Aiko Koike
edit: Yukako Kazuno

田舎に住んでいると、どんな服を着ているのか、よく考えることがあります。農家や林業従事者にとっては、実用性が重視され、ファッションは二の次で、いかに機能的な服であるかが重要です。耐久性があり、着心地がよく、暖かい季節には涼しく、寒い季節には暖かい服でなければならない。望月にある喫茶店『Yushi Cafe』に行くと、農家の友人や大工さんが作業着でコーヒーを飲んでいるのをよく見かけます。田舎に住んでいると、都会の人たちのように服で強く自分を表現する必要がないということなのでしょう。東京の中心部を歩くということは、密集した商業空間の中で何百人もの人に見られるということでもあり、服は過度な刺激に対する一つの「防御」、あるいは自分だけのアイデンティティを伝える手段になっているのかもしれませんね。

私は、数年前から(パッチ)ワッペンをデザインし、身に付けています。長野に住んでからは、家で仕事をしたり、野菜の世話や薪割り、子供の送り迎えなど、日々の生活を反映して、服のセンスも変わりました。気がつけば、自分の行動に合った、自分なりのユニフォームが出来上がっていました。私はいつも、19世紀のヨーロッパで農民や芸術家が着ていたような濃いブルーのシャツを着ていますが、そのシャツには私のパッチがたくさん縫い付けられています。



パッチは、服に面白い色や形、アイデアを追加してくれるとても素敵なものです。『フェンバーガー・ハウス』や私の研究活動、たとえば「地球絶滅適応探知センター」「スペースミュージッククラブ」「市民回復センター望月」に関連したパッチが服に貼られています。私の好きな映画のひとつである1972年の『サイレント・ランニング』の主人公のコスチュームからインスピレーションを受けてもいます。映画の主人公も、素晴らしいパッチで覆われた宇宙用ジャンプスーツを着ています。

パッチは通常、軍服や警察の制服に見られますが、1960年代から70年代にかけて、カウンターカルチャーのファッションで、メッセージを伝える手段として再生されたものでもあります。私はパッチの実用的、制服的な側面と同時に、その静かでちょっとラディカルな可能性が好きです。
プロフィール

ロジャー・マクドナルド
東京都生まれ。幼少期からイギリスで教育を受ける。大学では国際政治学を専攻し、カンタベリー・ケント大学大学院にて神秘宗教学(禅やサイケデリック文化研究)を専攻、博士課程では近代美術史と神秘主義を学ぶ。帰国後、インディペンデント・キュレーターとして活動し、様々な展覧会を企画・開催。2000年から2013年まで国内外の美術大学にて非常勤講師もしている。2010年長野県佐久市に移住後、2014年に「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。著書『DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド』が発売中。2022年11月中、フェンバーガーオンラインショップがオープン予定。
Official Website
fenbergerhouse.com
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