CULTURE

RADICAL Localism Vol.2/「平和と手仕事展」から学ぶ集団的喜び!

文: ロジャー・マクドナルド

2021.12.07(Tue)

photo & text: Roger McDonald
cover design: Aiko Koike
edit: Yukako Kazuno

 2021年11月2日〜3日に、私が理事を務める、望月にある多津衛民芸館で「第15回 平和と手仕事展」が開催されました。これは、毎年行われる地元コミュニティーのひとつで、地元のプロとアマチュア20組以上の作家による手仕事によるプロダクトの出品のほか、農産物もあり食の分野でも楽しむことができるマーケットです。

多津衛民芸館は1995年に創建されてから、この地域の重要な憩いの場所で、民芸のコレクションのほかに「生涯学習」や様々な地域運動を行い、課題を考えてアクションに移してきた場所です。コアメンバーは、この地域に住む上の世代が多いのですが、2年前から私のような移住者や、地域運動に関心がある若い世代が積極的に関わってきています。いろいろな「知恵」の伝達の場所として私にとって非常に重要なスポットです。

多津衛民藝館艦長 吉川 徹氏

 これを書いている2021年10月には、スコットランドで人類のこれからを大きく決めていくとされる気候変動に関する国際連合枠組条約「COP26」が開催されていました。

最新の科学者たちの見解によると、高い確率でパリ協定目標の地球温暖を1.5度に抑えることはほぼ不可能と指摘され、我々の日常生活の質はパンデミックに加え、確実に大きく変わっていくと思われます。国家のリーダーたちは「グリーンリカバリー」や「持続可能な経済成長」を大きく掲げていますが多くの学者や運動家が指摘するように、経済成長の夢から目覚めて、本当の意味でのフェアで持続的・支配的ではない生き方にシフトしていかないと、危機はますます大きくなると思っています。

このようなシフトの呼び方のひとつに「de-growth」という言葉があります。つまり「脱成長」を意味し、人と人の意味あるつながりが非常に重要になっていく、新自由主義では我々は孤独で競争している消費者として社会的に扱われてきましたが、これからの時代では世代を超えた「collectivity」=共同体、あるいは連帯感を大切にしていかなければと思っています。農村地域や山では、このような生き方が未だに存在し、私のような若い世代の移住者にとってとても重要な「スキル」として積極的に多津衛民芸館の先輩たちから学んでいます。これはもちろん大都会でもそれなりのやり方で実践していく必要があると思います。

民芸館のコミュニティーから学んでいることは主に3つあります。
1)できるだけリアルに集まり、話し合い、遊ぶこと。もともとオランダ17世紀の哲学者スピノザからの概念で「collective joy」「集団的喜び」という考えがあります。これはまさに人が集まって、意見を交わしたり、一緒に踊ったりすることによって世界で一緒にアクションを起こせる力を育てること。
2)「生涯学習」。すでに世界や社会で起きていることについてみんなで学び、議論して、受身的な消費者ではなく、意見を持てる、自立した市民になっていくこと。
3)人のつながりを作っていく最大な「接着剤」は文化芸術であること、音楽、工芸やアートの展覧会、踊りなどを通じてコミュニティーが強くなっていく。

民芸館の理事会の様子

「平和と手仕事展」はまさにこのようなビジョンの中で行われて、規模は小さいけれど、この地域においては大きな「collective joy」の場所になっています。多分、大都会ではいろんな形でこのような自立的なコミュニティー作りがされてきたと思います。バーやレストランにいつも集まる人たち、音楽やクラブのカルチャーや子供が通ういろんな遊び場で有機的にできていく集まり。ただの「出会い」だけではなく、できたら、そこからさらに繋がりがあるコミュニティーを作っていけないか? 望月にある多津衛民芸館からちょっとでもヒントがあれば、嬉しいです!

執筆者プロフィール

ロジャー・マクドナルド

東京都生まれ。幼少期からイギリスで教育を受ける。大学では国際政治学を専攻し、カンタベリー・ケント大学大学院にて神秘宗教学(禅やサイケデリック文化研究)を専攻、博士課程では近代美術史と神秘主義を学ぶ。帰国後、インディペンデント・キュレーターとして活動し、様々な展覧会を企画・開催。2000年から2013年まで国内外の美術大学にて非常勤講師もしている。2010年長野県佐久市に移住後、2014年に「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。

研究や美術館についてもっと知りたい人はこちらでどうぞ
fenbergerhouse.com
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